炎上から学ぶこと モバプリの知っ得[178]


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今月3日、プロゲームチームに所属する選手が、ゲーム配信内での「障がい者差別発言」を理由に年内の活動停止処分が発表されました。このニュースを聞いた時、今年2月に「身長が170cmない男性は人権がないんで」 ※1 と発言したプロゲーマーが契約を解除された炎上事件を思い出しました。2月の炎上事件から発言内容の大事さを学んでいれば、今月の事件は起きていなかったのでは?と思ってしまいます。

事件や事故、災害などで自分も被害にあう可能性があるにも関わらず「自分は大丈夫」と軽く受け止める心理を「正常性バイアス」と呼びます。敏感になってすぐにパニック状態にならないようにするブレーキの役割がある一方、楽観視したために逃げ遅れるなどの被害にあうこともあります。

私たちは普段ニュースやSNSなどで様々な事件やトラブルを目にしますが、その際も「自分は大丈夫、関係ない」と正常性バイアスが働くことがあります。しかし、「他山の石」という言葉があるように、他人の失敗から学んで自分の学びにすることが大事です。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

牛丼チェーン「吉野屋」の常務が、早稲田大学であった社会人向けのセミナーでした発言が不適切だとSNS上で批判が殺到し、自体を受けて同社が解雇する事態になりました。女性を顧客に取り込む戦略として薬物中毒にたとえて表現したことが人権やジェンダーの観点からも許されないと同社は判断しました。

実は吉野屋については、1カ月前の3月にも「お客様相談室」の対応をめぐってネット上で問題だと指摘される事態もありました。その数日前には「名前入りオリジナル丼」についてのキャンペーンでも批判があって謝罪していました。さらに常務解雇の問題が起こった後にも、外国籍であることを理由に就職説明会への大学生の参加を拒否していたこともSNSなどを通して判明して、こちらも批判を浴びました。

担当部署も違いますし、問題の本質も異なりますが、同じ企業で短期間に3つも問題が出てきたことは、違う問題だからこそ根深い問題です。いずれも難しい話ではなく、ちょっとした気の緩みだったり、認識の甘さだったりしたものが出たケースといえます。常日頃から社会で起きていることについて、どうなんだろうかという問題意識をもっておくことも大切です。1回目に批判を受けたときから誠実な対応を社内で確認できていたら、繰り返すことはなかったのではないかと、後知恵ではありますが、そう思います。逆にいえば、とても学びになる事例ではないでしょうか。

ほかにも類似例はあります。最近ですと、映画業界のオーディションで監督がその立場を利用して性暴力をしてしまった事件が3月ごろから起きて問題になっています。そのニュースに触れていたところ、さらにその後、4月には劇団で演出家が主演の女優に性的行動を迫った事例もでてきました。過去に起きていてももちろん問題なのですが、すでに監督や演出家による性暴力の問題が明るみになっているのにこういうことを起こしているのを見ると、この人は、昔からそうだったのかもしれませんが、何も学んでいないんだなと衝撃を受けました。

ネット上での誹謗中傷や炎上のニュースなどを見た時には大きく「悪いことがあったらしい」と捉えるのではなく、「何が問題なのか」「なぜそれが発生したのか」「似た出来事はないのか」「自分がやってしまうことはないか?」など、因数分解のように細かく切り分けていく作業 ※2 をくり返し行っていくと物事の視野も広がると思います。これは会社としての問題なんだなとか、この人物の問題なんだなとか、空気感の問題なんだなとか、あるいはこれは自分にも起こりえるかもしれないぞとか、切り分けて自分事として考えるロジカルシンキングが大事なのではないでしょうか。

~ 解説 ~

※1 今年2月に … この件については過去に解説をしています
 →言葉の使い方 モバイルプリンスの知っとくto得トーク[250]

※2 細かく切り分けていく作業 … こうした考え方を「ロジカルシンキング(論理的思考)」と呼びます。ロジカルシンキングは何も炎上事件だけでなく、「テストでいい点数が取れなかった」「部活で調子が出なかった」「ゲームで勝てない」などの失敗・悩みなどにも有効なスキルです。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」でも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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