ネットとホモフォビア(同性愛嫌悪) モバプリの知っ得[184]


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

先月12日、雑貨店「東急ハンズ」の公式Twitterが同性愛者を侮辱するような文言を投稿し、批判が殺到しました。それに対して東急ハンズが謝罪したのですが、その謝罪の仕方に対しても批判が集まるというダブルパンチ状態になりました。

「ゲリラ豪雨」と似た字面の「ゴリラゲイ雨」をネットユーザーたちが多数投稿し、Twitterで話題になったトレンドワードにもランクインしました。その流れで「ゴリラゲイ雨が来たらちょっと困るけど、ゴリラゲイ雨を見てみたい気もする」などと投稿したのです。

「ゲイ」は男性の同性愛者を指す言葉です。そして、この言葉だけですぐに「差別」になるわけではありません。しかし「ゴリラ」という言葉と合わさり、面白がったりからかったりして、ネットでトレンド入りすることで差別的なニュアンスがどんどん含まれていきます。

東急ハンズは投稿をすぐに削除し「差別的な意図はなかった」と謝罪しました。「差別」を「いじめ」に置き換えると分かりやすいかもしれませんが、差別は意図がなかったからセーフではないですし、むしろ「意図せずにやってしまう」からこそ注意をしなければなりません。

同性愛者を差別したり、バカにしたりしてからかうことを「ホモフォビア(同性愛嫌悪)」と呼びます。ネット上では昔から「ホモフォビア」的なジョークやノリがあり、今回の「ゴリラゲイ雨」もその一種ですね。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

ある人気ゲームのキャラクターなどをめぐって、ユーザーがゲームのコンテンツを使って替え歌を作ったり同性愛者をネタにしたり、からかって差別的な動画作成が会員制交流サイト(SNS)上でとても盛り上がって、結果的にゲームの売り上げが伸びる現象がありました。その内容には批判も集まって、ゲームメーカー側がそれらの動画を著作権侵害と訴え出て削除される事態に発展しました。

差別意識、意図が全くなくとも、閉じた人間関係の中で仲間意識を示すためにあえて強い言葉を使ってネタにする人もいるでしょう。しかし、それらを不特定多数の人が接するネット空間に流してしまうと、本人の意図とは別に差別を助長する効果を生むこともあります。

ネットではやっている言葉・聞き慣れない言葉があった場合、その言葉が生まれた経緯、どんな人がどんな風に使っているのかをしっかり調べた上で使わないと、差別に加担する可能性があります。

~ 解説 ~

※ 東急ハンズの公式Twitterアカウント … 東急ハンズの公式Twitterは企業のSNS運用についての本を出版し、フォロワー数は19.6万人もいる、日本でも有数の人気アカウントです。こうした慣れたアカウントでさえも、少し気を抜くと差別表現を面白がってしまうため、言葉が持つ本来の意味をしっかりと考え、差別に関する知識も求められます。
 

※ 「ゴリラ」とあわさることで、差別的なニュアンスが含まれてきます … 過去にも、様々な差別で当事者を「動物」にたとえてきた歴史があります。2018年にはファッションブランドH&Mが「ジャングルで最もクールな猿」とプリントされたパーカーを黒人の少年に着けさせて批判殺到、その後謝罪。2021年にはテレビ番組でアイヌ民族を紹介した際、芸人が「あ、犬」とネタを披露し、謝罪することになっています。
 

 

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」でも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

http://smartphoneokoku.net/