そのレビュー信じてもいい? モバプリの知っ得[185]


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Appleは先月1日、iPhoneのアプリストア上のレビュー9,400万件以上、不正な評価1億7,00万件以上を「中立的な基準を満たさない」として削除したと報告をしました。

アプリを取り込む際に、5つ星満点の評価・レビューの書き込みを参考にする人は多いと思います。それが、これだけ削除される投稿があったとなると、そもそもの判断基準となる指標の信憑性はどうだったのかと疑わざるを得ず、驚きを隠せません。

そのほか通販サイト、グルメサイトなども「星を使ったレビューシステム」を採用している所は多いのですが、判断する際は慎重になった方がいいでしょう。

あわせて東京地裁は先月16日、焼肉チェーン店がチェーン店であることを理由に点数(星の数)を不当に下げられたとして、有名グルメサイト「食べログ」の運営会社に3840万円の損害賠償金の支払いを命じました。

食べログは不正な採点を防ぐため、採点のアルゴリズム(計算方法)を調整していますが、このアルゴリズムの一方的な変更によって飲食店が損をし、独占禁止法違反にあたるという判決です。

星の数で評価するシステムでは、単純に付けられた星の数を平均して評価点を出そうとすると、同じ人が複数のアカウントをつくって最高点の「星5」を多数投稿して平均点を意図的に上げるとか、逆に評判を落としたいところに対して「星1」を連投するとか、評価を操作できることになります。

そうなるとその売りにしている評価の信頼性が落ちるので、それぞれのサイトでは単純平均するのではない独自のアルゴリズムを導入しています。たとえばできたてのアカウントや、写真が掲載されていないアカウントが評価しても、全体の評価には響きにくくなるよう、独自の計算をしています。

ここで難しいのは、アルゴリズムの計算方法を、こういう計算なんですよーと公表してしまうと、不正する側としてはその方法にのっとって意図的に評価することができ、解答を与えてしまう状態になることです。なので多くの企業は各社のアルゴリズムはあえてブラックボックスにしてわからないようにしているのです。

一方でそうすると逆に透明性が欠けてしまい、今回の裁判のように、ある日突然、評価が下がってしまう事態となって客足が落ちて紛争のタネになってしまいます。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

私たちの身近な「レビュー・採点システム」ですが、信ぴょう性は決して高くないでしょう。本来は調べる手間を省くためのシステムですが、皮肉なことに「このレビュー・採点は信じられるのか」を調べる手間が発生しています。

特定サイトのレビューだけで自分の評価を決めるのではなく、複数のサイトを比較したり、逆にあえてレビューが悪いが行ってみたらどうだろうと自分で訪れて購入したりして、多角的に自分自身で判断する目を鍛えることも大事でしょう。

レビュー至上主義には、心の中でブレーキをかけておいた方がいいと思います。大人だと、判断基準や好みが固まってきていることが多いと思いますが、そういう価値観がこれから形成されていく子どもたちは、そういうレビューの影響を大人以上に受けやすいものだということを認識しておくことも大切だと思います。

~ 解説 ~

※ 採点のアルゴリズム … 特定の飲食店の評価を上げたり下げたりするために、一人で複数のアカウントを作って何度も採点をする…ということができれば、不正な採点がどんどん広がります。そのため、食べログ側が独自のアルゴリズム(計算方法)を用いて点数を決定しています。恐らく「作りたてのアカウントの採点は全体の採点にあまり影響させない」などです。「恐らく」と言うのは、アルゴリズムの内容は公開されていないため、推測するしかないからです。

反対に、アルゴリズムの内容が全て公開されるとその内容を利用し、不当に点数を上げる人が出てくるでしょう。

平均的な採点をすると不正が発生し、それを防ぐために非公開のアルゴリズムで採点を行うと不透明で飲食店側も困る、アルゴリズムを公開するとまた不正する人が出てくる、ということが考えられます。今後、どのようなルールで運営するのが望ましいのか、議論が盛り上がってきそうです。

 

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」でも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

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 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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