うちなーむんの笑いと元気を届けたい うちなーぐちゆんたく王子・マイケル中本さん


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うちなーぐちの妙技 楽しんで

沖縄の伝統芸能に笑いのエッセンスを織り交ぜたショーが人気で、自ら「うちなーぐちゆんたく王子」と名乗るマイケル中本さん。今年芸能デビュー10周年を迎え、その思いを語ってもらった 写真:喜瀬守昭

福祉施設やショッピングモールなどで、唄・三線、舞踊にうちなーぐちの漫談を織り交ぜた「お笑いバラエティーショー」を披露するマイケル中本さん。時にうちなーぐちで観客と掛け合いを繰り広げるショーが評判となり、一躍おじぃ、おばぁのアイドル的存在に。現在では、ショーだけにとどまらず、コミュニティーラジオのパーソナリティー、週刊レキオのコラム執筆など、活躍の場を広げている。芸能活動10周年を迎える今、その人気の秘密に迫った。

福祉施設やショッピングモールなどで、唄・三線、舞踊にうちなーぐちの漫談を織り交ぜた「お笑いバラエティーショー」を披露するマイケル中本さん。時にうちなーぐちで観客と掛け合いを繰り広げるショーが評判となり、一躍おじぃ、おばぁのアイドル的存在に。現在では、ショーだけにとどまらず、コミュニティーラジオのパーソナリティー、週刊レキオのコラム執筆など、活躍の場を広げている。芸能活動10周年を迎える今、その人気の秘密に迫った。

「身長185センチ、かつらをかぶると2メートル近くなります」と話すマイケル中本さん。イオンタウン南城大里で定期的に行われるショーでは立ち見が出るほどの人気だ。

お笑いチャンプルーショー。一般的な琉球舞踊では使わない、派手な衣装にピンクの手ぬぐいが印

南城市奥武島出身。家に三線のある環境で育った。芸能活動を始める前は、福祉施設に勤務。「マイケル」という名前は、ある利用者に「あんたはアメリカふーじーだから」という理由から付けられたニックネームだそう。

人生の転機となったのは、2011年の東日本大震災だ。当時、中本さんは勤務していた福祉施設で東日本大震災の報道を目にした。船や車、人が流れていく様子を見て、声も出なかったという。

「亡くなった人たちも、まさか自分がと思いもしなかっただろう。人生、いつどうなるかも分からない」

そう思った中本さんは、30年近く勤めていた福祉施設の退社を決意。昔からやりたいと思っていた唄や三線の演奏、うちなーぐちを使った芸能活動をスタートさせた。

遅咲きのスタート

50歳を過ぎて新たな人生をスタートした中本さんが最初に行ったのは、福祉施設への営業活動だった。手作りのチラシを持って、単身で老人ホームやデイサービスへの訪問営業を繰り返した。無名だったため無視されることも多かったが、めげずに何度も営業訪問を続けるうちに、少しずつだが依頼が入るようになった。

状況を大きく好転させたのは、イオンタウン南城大里への飛び込み営業。夫婦二人三脚で頑張っている中本さんたちの姿を見た当時のマネージャーさんの後押しがあり、週1回ショーの営業を開始した。最初のうちは観客が3~4人ほどだったが、ショーは口コミで評判となり、次第に多くの観客が集まるようになった。

唄・三線と同時に太鼓も叩く

「公民館の区長さんや老人会会長さんが見に来たりして、施設やイベント等に呼ばれるようになった」と中本さんはうれしそうに振り返る。そのうちに、活動地域も県内各地に広がっていった。

うちなーぐちを伝えたい

「とにかくお客さんが見ていて楽しく、ワクワクするように心がけています」。ショーの出演依頼があれば、観客に合わせて演目を組み立てるという。

芸を磨くことにも熱心だ。歌三線は独学で、耳で覚えたが、舞踊の基礎基本は、活動をしながら舞踊教室に3~4年通って身に付けた。足のすり方、扇子の持ち方、視線の向け方などの基礎基本は守りながら、時折、滑稽な振りやしぐさを織り交ぜて自己流にアレンジし現在の形に行き着いた。

素顔の中本さん。司会のときはタキシードスタイル

マイケルさんがステージで繰り出す達者なうちなーぐちを聞き、年配の観客の目が輝き出すことも多いという。うちなーぐちを生かし、5年前から糸満市のコミュニティーFM「FMたまん」のラジオパーソナリティーとしても活躍。FMたまんの照屋信吉会長から「こんなにうちなーぐちでのやりとりが達者だから、番組持ったらいいよ」と言われ、いきなり2時間番組を持たされたそうだ。「ラジオの放送を通して、うちなーぐちを伝えたい」と意気込む。

「沖縄の言葉を残さないといけない」との思いから、週刊レキオに自ら企画を持ち込み、21年から第2週に「うちなー黄金言葉」の執筆も開始した。「コロナ禍でなかなか活動ができなかったが、また福祉施設や地域の公民館、ショッピングセンターでショーをしたい。離島など、まだ行っていない地域にも足を延ばしたいですし、各市町村の歓迎会などでうちなーぐちや歌三線を披露したい」とマイケルさんは抱負を話してくれた。今後の活動に期待したい。

(元澤一樹)


マイケル中本お笑いバラエティーショー

【日時】8月14日(日) 13:00~13:45
【場所】イオンタウン南城大里
【問い合わせ】イオンタウン南城大里

TEL 098-943-3914

 

(2022年8月11日付 週刊レキオ掲載)