SNSアンケート モバプリの知っ得[193]


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SNSの「アンケート」機能を使ったことはありますか?たとえばインスタグラムなどで、「ワクチンを打ち終わった人は?」とか「夏休みの宿題終わった人?」と問いかけると、見た人が「はい」「いいえ」などの選択肢に回答できるというものです。

自由なアイデアでアンケートを作成できます。時間がたってアンケート終了となると、結果を見て楽しむことができます。

友だちと交流のきっかけとして使ったり、タレントがファンからの要望に答えたり、アーティストがライブの要望を聞いたりするのに活用するなど、プラスの使い方もできておもしろいものです。使う人が増えてくる一方で、社会問題などを取り扱うアンケートには注意が必要です。

今月17日、月刊誌「Hanada」のツイッター公式アカウントが「あなたは安倍元総理の国葬についてどう思いますか?」というアンケートを投稿したところ、60万票を超える多くの得票がありました

「Hanada」のツイッターアンケートでは、当初「賛成」と答えた人がダントツに多くなっていました。「Hanada」を積極的に読む人が多く投票したのだろうと思われますが、その事態を見たインフルエンサーたちが反対を投票し始めたことで賛否が逆転してしまいました。それでまた「Hanada」支援のインフルエンサーが訪れて、賛否の投票を競い合って、結果的に60万票を超える得票となりました。

安倍元首相の国葬に関しては、賛成・反対さまざまな意見が出ており、多くのメディアが賛成・反対の割合を調査しています。一般的なメディアの世論調査では「無作為抽出」などの方法を使い、回答する人が偏らないよう工夫していますが、SNSでのアンケートでは「そのアカウントをフォローしている人、仲がいい人」ばかりが回答しますので、世の中一般的な回答結果とは大きくずれることがあるんですね。

全ての人から回答を集めるのは難しいので、特定の人をピックアップしないといけないのですが、その際に偏りが発生しないように、特定に意思が入らないように決めることが大切です。県民全体の意見を調べたいのに、特定に地域や特定の年齢の人だけをピックアップしても結果は偏ってしまいます。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

みそ汁の味見をするのに、作ったみそ汁を全部飲まないと味がわからない、なんてことはないですよね。一部分だけでも味がわかります。ただそれには、きれいにみそ汁が混ざっていないと場所によって味の違いが出てくるので、きれいに混ぜて偏りが出ないようにして味見します。これが「無作為抽出」ということです。

ツイッターでのアンケート回答数が10万票あって、無作為抽出での回答数が1000人だった場合、回答数に100倍のひらきがあるため、前者のツイッターの方が多いのでより正確で正しいように感じてしまうかもしれません。しかし、偏りのある10万よりも、偏りのない1000の方が世の中全体の意見を見ていく上では重要です。先ほどのみそ汁の例えで言うと、味の薄い部分だけ飲んでいても、そのみそ汁の本当の味はわかっていないのと同じことですね。どのようにして回答者を集めたかが大事になってきます。

また誰かが論争しているときに、「この件に関して誰が正しいと思いますか?」とアンケートを挟んでくる人がいます。交流している人たち同士では、ある種偏りがあって、そこで実施したアンケートの結果も偏りが出てきやすくなります。その結果をもって、この論争では、この人が正しくて、あの人が悪いんだと思ってしまいがちですが、そうではない場合も少なくありません。その延長線でねじ曲がった嫌がらせのような形で表に出てくることもあります。

皆さんもこれから先さまざまなアンケート・調査結果と接することになると思いますが、「回答数」よりも「集計方法」が大事になってきますので、必ず「どう集計・調査したのか」を確認し、その上で判断するようにしましょう。

~ 解説 ~

※ 多くの得票がありました … これだけ多くの得票があった背景には、多くの著名人・政治家の呼びかけがあったからでしょう。「賛成」「反対」を表明した人たちが、自分たちの望んだ結果になるよう、SNSで積極的に発信を行いました。しかし、結果がどうであれSNSでのアンケートは社会全体の意見を反映せず、偏りが生じます。一応、結果をお伝えしておくと最終的には月刊「Hanada」Twitterアンケートは、「賛成 51.1%」、「反対 43%」、「どちらともいえない 5.9%」となりました。

 無作為抽出 … 世論調査などでは全員から回答をもらうことは難しいので、特定の人たちをピックアップして回答をしてもらう必要があります。その際、偏りが発生しないように特定の意思を入れずに集めることを無作為抽出と呼びます。沖縄県民全体の意見を調べたいのに、特定の地域の人だけ・特定の年齢の人だけをピックアップすると回答が偏ってしまいますよね。そうならないよう、無作為抽出では実際の沖縄の地域人口・年齢などの割合にそって回答する人を決めてもらうようにするのです。

 

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」でも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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