紫! レジェンドバンドの軌跡が映画に! 「紫 MURASAKI~伝説のロック・スピリッツ」


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ドキュメンタリーが上映される幸運に感謝

1970年結成。県内中部のコザ市(現沖縄市)のクラブなどを中心に演奏し、活動を広げていったロックバンド「紫」。70年代後期には本土進出も果たし、日本のロック界に新風を吹き込んだ。2007年に現メンバー6人がそろい、結成から50年を超えた現在、ニューアルバムの制作に取り掛かるなど活動中だ。そんな彼らの軌跡を追ったドキュメンタリー映画が完成。県内を皮切りに全国上映を控えている=沖縄市・ライブハウス「セブンスヘブン」 ヘアメイク・小渡あかり 写真・村山望

結成から52年の間に、幾度かのメンバーチェンジや解散を経て、2007年に現在のメンバーで再結成した紫。本土復帰前の沖縄で活動を始めた背景やメンバーの個性、また演奏技術やパフォーマンス力の高さ、ブリティッシュハードロックを感じさせる楽曲の魅力で、注目を浴びてきた。日本を代表するヘビーメタルバンド、LOUDNESS(ラウドネス)や聖飢魔II(せいきまつ)らのメンバーにも大きな影響を与えてきたという。そんな証言や刻んできた歴史を記録した映画のこと、また思い出について、6人の話を聞いた。

活動を記録した映画の完成を喜ぶ6人のメンバー。

「子どものころ住んでいた沖縄市八重島、通称ニューコザの街をロケで訪ねました。戦後は繁華街で、お店のジュークボックスから流れる外国音楽を聴いて僕は育ったんです。今では思い出の場所が消え残念ですし、我々の活動も忘れ去られるかと思うと寂しい。でも映画として残ることを、うれしく思います」(チビこと宮永英一さん)

「映像を見ると懐かしくて涙が出そう。初めて人前で演奏した高校の時のエレキ大会、サラリーマン時代も思い出しました。1978年に一度解散したので、その後約30年は音楽から離れていたんです。紫に戻って、またギターが弾けるのは喜びしかありません」(下地行男さん)

(左)ジョージ紫さんと宮永英一さん

「70歳過ぎても音楽を続けているとは思ってもいませんでした。有名ミュージシャンが出演してくれたドキュメンタリー映画ができて、本当にうれしいです。今年は復帰50周年で、母校・宮森小学校の米軍機墜落事故(59年)も思い出しました。一瞬のタイミングで自分は命拾いしましたが、友達は亡くなっているんです。運が良い人生だと感じます」(比嘉清正さん)

「高校時代を過ごした久場崎ハイスクールを訪ねたら、当時弾いていたピアノがまだあったんですよ。卒業前に植えたモクマオウの木も残っていましたし、50数年ぶりの再会でした。そのシーンや数々の思い出を映画に記録でき、感動と誇らしい気持ちでいっぱいです」(ジョージ紫さん)

活動や思い出を記録

2007年に新メンバーとしてJJさんとChrisさんが加入。現在の6人の形となった。「ジョージとチビとは別のバンドで活動をしたので、40年以上の付き合いです。紫の曲は激しいロックで僕の声には合わないと思っていましたが、『MOTHERNATURES PLITE』を聴き、こういう曲なら歌いたいと思い入りました。バンドの歴史を追う映画は楽しいですし、たくさんのサポーターに支えられラッキーです」(JJさん)

「僕にとって5人はお父さんのような存在(笑)。でも音楽界の大先輩であるラウドネスさんやデーモン閣下さんたちが紫に憧れたと話すので、そのバンドに在籍する自分のポジションを不思議に思います。5人の何気ない会話からもいろんな話題が出てくるので、生きた歴史と思えメディアに残す必要性を感じてきました。映画に記録でき大満足です」(Chrisさん)

(左)ChrisさんとJJさん

今回のインタビューでは、他にも興味深い話が飛び出した。

高級ホテルに宿泊した東京でのレコーディング秘話、本土では外国人アイドルのように黄色い歓声があがった事、沖縄市のライブハウスには未成年を取り締まるため機動隊が駆け付けた事…。楽器は国内で調達するより安価な香港で購入。だが電気楽器のハモンドオルガンは電圧や周波数の規格が異なり、調整に苦労した話も聞いた。沖縄を出て活躍していた、彼らだからこその貴重なエピソードだ。

全国ツアーの前に映画上映

今後についても聞いた。

「6年前、アルバム発売記念のツアーの時に北海道でオフの日をつくりました。メンバー全員で次にいつ来られるか分からない、特別なオフになったと思います。現在ニューアルバム制作中ですので、完成後にツアーを計画したいと思います」(Chrisさん)

「デビュー当時、沖縄に次いでレコードが売れたのが北海道でした。気候が良い時期に行って快適に過ごしたので、また行きたいですね」(ジョージさん)

(左)下地行男さんと比嘉清正さん

「昔ライブに来てくれた方にもあいさつできる、全国ツアーを開催するのが夢です」(下地さん)

「まずは映画をご覧になってください。音楽界やバンド活動の角度から戦後の沖縄を映し出す作品です」(宮永さん)

本作を鑑賞することで紫世代のファンは青春を重ね、若い世代はコザロックの魂を感じる、そんな機会になりそうだ。

(饒波貴子)


『紫 MURASAKI~伝説のロック・スピリッツ~』

2022年/日本/(C)株式会社エコーズ
監督:野田孝則/出演:紫/特別出演:高崎晃・二井原実・山下昌良(LOUDNESS)、PATA(XJAPAN)、影山ヒロノブ(アニソンシンガー)、デーモン閣下、BEGIN他

http://murasaki-movie.jp

16日(金)からシネマQ、ミハマ7プレックス、シネマプラザハウスで上映
※17日・18日・19日・25日は舞台あいさつを予定。詳細は公式サイトを参照。

(2022年9月15日付 週刊レキオ掲載)