Apple社は今月13日、iPhoneの基本ソフト「iOS 16」をリリースしました。いわゆる「大型アップデート」と呼ばれるもので、様々な新機能が追加されています。
リリース直後に話題になったのは、意外にも「画像切り抜き」機能で、SNS上でも多くの人が切り抜いて合成した画像をアップしていました。
簡単に画像を切り抜くことができて楽しい活用が見込める一方、紛らわしい画像や悪意ある「コラ画像」も簡単に作成することができます。そのため、画像が加工されたものなのかどうか見極められるよう、私たちも意識をアップデートする必要があります。
■非常に簡単な「切り抜き」
今回追加された画像切り抜き機能は、写真アプリで人物・動物・モノなどを長押しすると、その部分だけ切り取って個別に保存をすることができます。
例えば、街中に猫がいる画像で猫の部分を長押しすると、猫だけ切り抜きその他背景を透明にすることができます。
これは自分が撮影した画像だけでなく、Web上の画像やダウンロードした画像、スクリーンショットでも有効です。
さらに、対応した別のアプリケーションと組み合わせることで、他の写真と合体させる「合成写真」も作成できます。
こうした機能は今までも専用のアプリを使えばできたため、最先端の目新しい機能というわけではありません。しかし、最初から入っている「写真」アプリで、長押しするだけで切り抜きができる手軽さは革命的で楽しく、結果的に「意外にも一番盛り上がった新機能」となったのです。
■便利と危険は「表裏一体」
便利で楽しい画像切り抜き機能ですが、同時に紛らわしさからフェイクニュースにつながる可能性を考えてしまいます。
2016年4月に発生した熊本地震の際、「動物園からライオンが逃げた」という投稿がTwitterで拡散される事件が起きました。その時に添付されていた画像は南アフリカで撮影されていたものだったわけですが、災害時の混乱でデマを信じてしまい、動物園に問い合わせが殺到することとなりました(その結果、投稿者の20歳会社員は威力業務妨害で逮捕されています)。
合成していない画像でさえもデマ・フェイクニュースとなる時代です。画像加工・合成技術が高まり、「本物っぽい画像」が簡単に作られるとなると、今まで以上に警戒しなければなりません。
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包丁や車が「便利だけど、使い方を間違えると人を傷つける(命を奪う)」可能性があるように、スマホの便利な機能もネガティブに作用すると人を傷つけたり、命を奪ったりする可能性があります。
便利と危険は「表裏一体」ということです。
今後はAI技術などを使って、人の目では真偽を見極めることが難しい「ディープフェイク」と呼ばれる画像をスマホで手軽に作られる日が来るでしょう。
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ロシアがウクライナを侵略する際、自国に都合の偽情報を拡散してプロパガンダを行ったように、戦争を始める為政者はディープフェイクや画像加工技術を絶対に悪用し、フェイクニュースを作りあげるでしょう。
「切り抜き画像」を楽しみながらも、頭のどこかでこうした問題点を意識し、SNSで流れてくるショッキングな画像などを「もしかしたら加工・合成かも」と疑う慎重な姿勢が求められます。
~ 解説 ~
※ 「合成」していない画像でさえも~ … 複数の画像を切り貼りした画像を「コラージュ画像」、略して「コラ画像」とネット上では呼びます。コラ画像を使ったデマ・フェイクニュースが拡散されることはこれまで何度も発生しています。
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