糸満の海を守る亀仙人!?【島ネタCHOSA班】


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数年前、海岸に打ち上げられたウミガメを助けたという糸満の亀仙人についてもっと知りたいです。ぜひ調査お願いします。

(糸満市 ホリデーヨーガリン)

糸満市の亀仙人こと徳村弘輝さんですね。昨年も糸満市喜屋武海岸で岩に挟まれ身動きが取れなくなっていたウミガメを救助したと、琉球新報本紙で報道されました。調べてみると、喜屋武海岸などでウミガメの保護活動をしているようですね。さっそく調査員はお話を聞きに喜屋武漁港へ向かいました。

糸満市出身の徳村さんは愛犬カカロットと共に漁港に現れました。

亀仙人のコスプレ姿

徳村さんは当時那覇空港に配備されたばかりのジャンボジェット機を見たいという一心から高校卒業後、航空会社に勤務。その後、愛知県で数年働いた後、2008年に故郷の沖縄に帰ってきました。

旧暦の5月4日にハーリーの文化が残る喜屋武ではハーリーの時期になると、地元の子どもたちが頻繁に防波堤から海に飛び込んでいたといいます。

飛び込み行為を危ないと思った徳村さん。子どもたちに注意を促すにはどうしたら良いかと考え、漫画『ドラゴンボール』のキャラクターである亀仙人のコスプレをすることを決意。甲羅は、いらなくなったカメの剥製のものを使っているため、本物だといいます。

ちょうど同じ時期に飼い始めた愛犬カカロットの名前も、『ドラゴンボール』にちなんで付けたとのことです。

そうして、地元喜屋武の海の見守り人「亀仙人」は誕生しました。

ウミガメとの出合い

「ある朝、カカロットを散歩させていたら何かくわえて持ってきて、見たらウミガメの子どもだった」と言う徳村さん。

愛犬のカカロット。徳村さんいわく、顔はドラゴンボールの登場人物の一人である「ベジータ似」だそう

地元の海にウミガメが上陸すると確信し、翌年から詳しい産卵場所を探すことに。砂浜でウミガメが掘り起こしたと思われる跡を見つけると、外敵から守るためにネットで囲うなどのこまめな活動を行い、やがてその中から13匹のウミガメがふ化。しばらくの間、漁港のいけすで飼っていたといいます。

そんな中、南部地域の「カメ博士」で知られる故小林茂夫さんから「子ガメを飼ってはいけない」と聞き、放流を決意しました。

「ただ放流するのではなく、すぐ近くの喜屋武小学校の子どもたちにも声をかけ、一緒に放流会を行いました」

その後も自主的に海のパトロール活動を行っていた徳村さん。2016年から今に至るまで、沖縄国際大学の山川ゼミや琉球大学のウミガメ研究会「ちゅらがーみー」などの協力の下、本格的にウミガメの調査を行っています。

徳村さんが撮影したタイマイ

今の活動は未来への遺言

シーズンになるとウミガメが泳ぎに来るという名城ビーチを「南部一の天然ビーチだ」と語る徳村さん。この海を守っていきたいという理由から、ゴミのポイ捨て禁止という立て看板ではなく、一人一人に声をかけるなど、海の環境保全活動にも力を入れています。

「元気なうちはこの活動を続けるよ」と意気込む徳村さんの今後の目標は、今年新設された琉球ホテル&リゾート 名城ビーチの目の前の海岸でのウミガメの産卵。

徳村弘輝さん

「簡単な地域ガイドとして、地元の子どもたちや観光客にウミガメや、慣れ親しんできた名城ビーチの歴史を語り継いでいきたい」と話します。

徳村さんのユーチューブチャンネルには、ジャンル別にウミガメに関する動画も多数投稿されています。

「ユーチューブは何年も残るでしょ。未来への遺言書だと思ってる。『こんなオジーがいたんだよ』と面白おかしく残ればいいです」

そう言って、また愛犬カカロットを連れて海のパトロールに向かった徳村さんの後ろ姿が大きく感じた調査員なのでした。
 

(2022年12月15日 週刊レキオ掲載)