復帰前、東京からレコードを輸入!?【島ネタCHOSA班】


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音楽活動をしている友人から、「沖縄にはレコードやCDの総合卸商社がある」と聞きました。当時としては、レコードやCDの卸販売は全国的にも珍しかったようです。詳細を調べてもらえませんか。

(糸満市 ビニール盤コレクター)

県内のCDやレコードの総合卸業者について検索すると、「沖縄レコード商事株式会社」のHPを発見。「音楽総合卸商社」とあります。連絡を入れ訪問しました。

レコード店が商社を設立

調査員を歓迎してくれたのは、代表取締役社長の高良雅弘さんと音楽営業部部長の比嘉力さん。会社設立は昭和45(1970)年で、沖縄が本土復帰前だったことに関係しているそうです。

LP・EP・SPなどの盤の種類があるレコード

「弊社は当時のレコード店5社、高良レコード店・普久原楽器・照屋楽器店・照屋時計店・丸福レコードが合同で設立した商社です。復帰前、県内のレコード店は東京のレコード会社から独自で商品を仕入れていました。日本ではなかったので『輸入』していた訳です」

レコード店が直接、レコード会社から商品を仕入れるとなると、手続きはさぞ大変なのでは…。

「はい。輸入業務の利便性を図る目的で弊社を設立したと聞いています」と二人。沖縄レコード商事が輸入したレコードを5社に卸すことで、業務が簡素化されたそうです。

輸入レコードはこの木箱に入れられ沖縄へ

他のエピソードはないかと聞いたところ、勤続30年の比嘉力さんの入社当時はCDとビデオのレンタル店が大流行し、CDセールスも全盛期。

「THE BOOMの『島唄』のヒットと共に、三線の音色などが入った沖縄を感じる曲の人気が上がりました」と比嘉さん。2000年代初め、沖縄音楽の全国的ヒットを体感したそうです。時代はレコードからCDへと移り変わり、沖縄レコード商事は県内のショップにCDを卸し、売り上げ好調。しかし時間の経過と共に衰退し、現在の音楽は配信が中心に。そんな中でもレコードやCDの良さを発信し、リスナーに選んでもらえる取り組みを行っており、歌手の中沢初絵さん、伊禮俊一さんはじめ、オリジナルCDの制作を手掛けています。「今後も復刻盤など、沖縄に関連した作品を売り出していきたいです」と高良さん。

営業も売り込みも

「創業当時のOBに会いに行きましょう」と高良さんから誘いがあり、読谷村在住の比嘉康隆さんを訪ねました。

高良雅弘社長(左)とOBの比嘉康隆さん

70歳を超えたばかりの比嘉康隆さんは、35年間沖縄レコード商事で勤務。

「輸入レコードの販売先を増やすための営業活動をしましたが、県内のレコード店の信用を得るまでかなりの時間がかかりました」と語る比嘉さん。大量のレコードを営業車に積んでレコード店を一軒ずつ回り、店主に現金で買い取ってもらう方法で販売していたそうです。

「1枚でも多くのレコードを県民に届けたい気持ちでしたし、歌手やレコード会社の代わりにラジオ局に新曲を売り込むプロモーション活動もしていました」と、懐かしそうに語ります。

比嘉さんをはじめとしたスタッフの努力で信頼を築いていった沖縄レコード商事。創業から現在も、メーカーとショップを取り次ぐ卸業務を継続しています。

CDやカセット、社内は在庫がずらり

貴重なエピソードの数々に感銘を受けた調査員は、配信が主流の現状について、比嘉さんの思いを聞いてみました。

「配信が中心になる一方でレコード人気の復活もあると聞き、うれしく思っています。生の音に近いのがレコードなので、多くの方が手に取り聴いてくれますように」と笑顔で話していました。

沖縄の音楽シーンの奥深さを学び、帰路についた調査員でした!


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〈沖縄レコード商事 公式サイト〉

https://oki-reco.co.jp

(2022年12月22日 週刊レキオ掲載)