ニュースの振り返り モバプリの知っ得[208]


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2022年最後のモバプリの知っ得!となりました。今年も世の中ではさまざまなできごとがあり、年末に向けて1年のニュースを振り返るテレビ番組なども増えてくると思います。

今年のできごとで私が一番取り上げたいのは「沖縄署騒動」です。今年1月、警察官が高校生を警棒で殴り、眼球破裂の大けがを負わせた事件です。この事件は警察側が「高校生の単独事故」と発表したことでさまざまなうわさがネットで広がり、「警察が事件をもみ消そうとしている」と怒った若者たちが沖縄署前に集結。投石をするなどの騒動となりました。

こうした流れのもと、ネット上では被害にあった高校生をバッシングする書き込みもあり、中には「無免許、盗んだバイクで暴走行為をしていた」というデマをもとに「これなら警察に殴られてもしかない」と暴力を正当化するコメントも多数書き込まれていました。

今回の騒動には、3つのできごとが重なっていると考えています。1つ目に、警察官が少年に暴力をふるったこと。2つ目に、若者たちが警察署前に集まり騒動が起きたこと。3つ目に、一連の流れを見た人がネットで誹謗中傷したこと。

1、2に関しては、警察が捜査を進めそれぞれ書類送検しました。そのため、人によっては、今回の事件は収束したのかなと感じているかもしれませんが、3つ目のバッシング行為をまだしている人が多くいるのが現状です。

なにか事件が起きて、双方の意見が食い違っているときに、不確かな情報や憶測が広がってデマになって拡散されたことは過去にもたくさんありましたが、そのときに求められるのが、早急に判断して言及しない姿勢です。現代は誰もがコメンテーターになれる時代、ぐっとこらえてあえて何も言わず静観することが大事だと思います。わからないことはわからないで置いておくことも必要です。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

今回の「沖縄署騒動」は、死者やケガ人が出ず、警察が隠ぺいしようとしたことを防ぐことができたと正当化する主張もありますが、見方を変えれば大惨事になっていた可能性もあります。また、SNSは誹謗中傷もありますが、暴徒化していくことに機能していた面もあり、使い方には気を付けないといけません。結果論として騒動で済みましたが、暴動すれすれの事件だったのではないでしょうか。

ニュースにコメントすることは、表現の自由です。しかしながら表現の自由は「何を言って許される」というものではなく、「表現の責任」もセットでついてきます。デマを信じてコメントを書き込んだ人たちは、情報源の訂正や、被害者に対する偏見が無かったか、改めて振り返ってほしいなと思います。また、ニュースや事件でショッキングなものを取り上げる際には、時系列や内容を丁寧に追って、ここはまだわかっていないという部分は切り分けて、わからないなら黙るというスタンスは来年も引き続き求められるのではないでしょうか。

■ ニュースにコメントをすることは表現の自由です … 実際に被害者のいる事件に関しては、慎重にコメントしないと誰かを深く傷つける、精神的に追い詰めることがあります。過去には「あの殺人事件の犯人は家族じゃないか」などとうわさやデマがネットで書き込まれた冤罪事件もありました。ひとりひとりは軽い気持ち、無責任で書き込んでも、それらの数字が積み重なることで「信ぴょう性」が生まれ、信じて軽い気持ちで書き込む人が出てくることになります

■ 被害者に対する偏見 … 断片的なニュースの情報で、「バイクに乗っている高校生はきっと悪いことをしているのだろう」と自らの偏見でデマを信じた人もいるでしょう。私たちは「こうした見た目(属性)の人はこうだろう」という、思い込みや先入観、偏見を持っています。偏見を無くすよう努力するとともに、「ここまでは事実で、ここから先は自分の思い込みかもしれない」と自分の考えのクセを客観的に分析できるかどうかも大事になります

 

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■ 沖縄署騒動に関する記事(時系列・警察官書類送検) https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1611040.html

■ 高校生含む少年ら7人を書類送検 https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1629387.html

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