人の姿があって街は生き返る

20年前に人気だった女子高生バンド「銀天ガールズ」が街おこしイベントのために復活、という物語でスタートする映画『コザママ♪ うたって!コザのママさん!!』。舞台になる沖縄市の銀天街は戦後にぎわった商店街。「黒人街」と呼ばれ、叫ぶように歌うR&B(リズム・アンド・ブルース)音楽が街中にあふれていたころがあったという。本作ではそんな実際の時代背景を伝えるエピソードを取り入れ、現在の街並みを映し出している。ミュージシャンを中心に沖縄の有名芸能人が多数出演するのも魅力。見どころを出演者に聞いた。
時の流れとともにシャッター通りとなった銀天街に、「人を集めよう」という目的を掲げた本作。監督を務めた中川陽介さんは、「街が寂れたと感じるのは、人がいないから。小さな路地でも寂れたように見える商店街でも、人さえいれば生き返ることが分かりました。なので、主役や子どもたちにいろんなところを歩いてもらい撮影しました」と語る。また、役柄にぴったり合う人に演じてもらうことにもこだわったそう。
「実はジョニー宜野湾さんには、最初断られたんですよ」と中川さん。だが台本を読んだジョニーさんは内容が気に入って出演を決め、商店街の理事長を演じている。

「実は映画には数本出ているんですよ」とジョニーさん。「本作はシリアスな場面もありますが、監督が陽気にジョークを飛ばす現場なので、楽しかったです」と笑顔を見せた。「この映画で銀天街が盛り上がり、本土公開も決まったらうれしいです。大きな夢は世界中で上映されること。とても楽しみです!」
お笑いコンビ「キャン×キャン」のゆっきーさんはバーの常連客を演じる。
「那覇出身の僕ですが沖縄市のことが分からず、この映画をきっかけに勉強したいと思いました。楽しい現場の雰囲気が映画を見る方に伝わればいいですし、僕がどこに出ているか探してくださいね」
劇団「笑築過激団」座長で国立劇場おきなわ運営財団の常務理事を務め、俳優活動も続ける玉城満さんも出演。中川監督との付き合いは20年を超えるという。
「監督がこだわるリズム・アンド・ブルース色が出る良い映画になると思います。それが街並みや商店街にマッチし、みんなを元気付けたら最高じゃないですか!」と上映を楽しみにしている。

夢を追う人々描く
本作の主役は、高校生のころ人気バンドメンバーで現在は仕事や家事にいそしむ4人の女性。ミュージシャンのjimama(ジママ)さんと新垣美竹(みさお)さん、女優の畠山尚子(たかこ)さんと上門みきさんが演じる。中川監督は「4人が関係性を築き、イメージ通りの銀天ガールズになった」と満足している。

「音楽は好きだけど家族も仕事も銀天街も大好きな、大切なものを知っている主婦役です。温かな現場で演じさせてもらいました」(上門さん)
「諦めた夢を大人になって再び追いかけてもいい、という事を描いた作品です。一生懸命になれた時間や姿勢は素晴らしいと、共感していただけると思います」(畠山さん)
「普段はライブハウスでドラムを叩いていて、映画は初。大勢いるスタッフさんやキャストは役割りは違いますが、家族のような連帯感がありました」(新垣さん)
「初演技ですが、音楽で関われるので引き受けました。劇中歌う曲はブルージーで、自分が歌ってきた曲とはジャンルが違う。そこを乗り越える面白さがあり、大きな肥やしになりました」(jimamaさん)
「ガールズからママさんズになった4人と取り巻く人々との物語を、見て楽しんでほしい。銀天街で遊んで帰ってくださいね」と4人は呼びかける。
ロケ地は昔ながらの店や劇場
銀天街を元気にする目的で映画づくりに取り組んだものの、最初は戸惑ったという中川監督。
「付近の方に参加をお願いしても、恥ずかしいのかなかなか集まりませんでした。突破口になったのがダンススクール。声掛けしたら多くの子どもたちが参加してくれて、それからは順調でした」
地域への直接的なアプローチよりも、人の輪ができているダンススクールのような場がコミュニティーになっていると実感し、市民を巻き込む新たな形として認識したそうだ。
また古い店や劇場など、昔ながらの施設を借りて映像に収めたという。「人さえ来れば街は生き返る」ことを実践したこの映画。今月は土曜日に銀天街に出掛けて鑑賞し、街歩きも楽しんでほしい。

(饒波貴子)
インフォメーション
『コザママ♪ うたって!コザのママさん!!』
2023年/日本 監督:中川陽介
出演:上門みき、畠山尚子、jimama、新垣美竹、ジョニー宜野湾、仲座健太、ジョーイ大鷲、ゆっきー、玉城満 他
1月7日を除く1月の毎週土曜日、15時と18時に沖縄市銀天街ゆらてぃく広場前の「青春劇場」にて上映
問い合わせ:コザ十字路通り会
TEL 098-923-1404(担当 森)
※最新情報 Twitter @koza_mama
(2023年1月5日付 週刊レキオ掲載)
