廃車の窓から作った琉球ガラス!?【島ネタCHOSA班】


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スクラップになった車の窓を使った食器があると聞きました。車好きの父の誕生日プレゼントにと考えています。ぜひ調査お願いします

(南城市 初心者マークのひだり側)

調べると、糸満市福地にある琉球ガラス村の「mado(まど)」という琉球ガラスシリーズだと判明しました。琉球ガラス村といえば、観光地としても有名なガラス工房ですよね。廃車の窓から作る食器、なんだかイメージが湧きません……。さっそく調査員はお話を聞きに琉球ガラス村へ向かいました。

琉球ガラスの歴史を継承

川上英宏さん

調査員を迎え入れてくれたのは、琉球ガラス村を運営するRGC株式会社の取締役営業部長の川上英宏さん。

madoをつくるきっかけとなったのは、産業振興公社を通じた拓南商事との出会いだったといいます。

拓南商事は、県内で鉄くずや廃車・廃家電、産業廃棄物などを処理し、リサイクルを行っている企業。しかし廃車の窓ガラスはリサイクル方法がなく、年間およそ2000万~3000万の費用をかけて県外で廃棄していたそうです。コストに加えてSDGsの観点からも、何か利用できないか、という話が公社を通じてきたのがきっかけでした。

琉球ガラスには、戦後、駐留米軍が廃棄したビールやコーラの空き瓶を溶解してガラスを再生していたという歴史があります。

madoの原料となる廃車のサイドガラス

「若い頃にそのガラス作りの技術を経験していた世代が、ちょうど今の60代~70代の職人たちでした。若い職人は天然資源をもとにつくられる『バージン原料』しか触ったことがないので、再生資源によるガラスの製造工程を先輩から学ぶ良い機会でもあったし、チャレンジしてみようかということになりました」と川上さんは話します。

一概にガラス作りといっても、バージン原料と、廃瓶を再利用した再生ガラスの質とでは変わります。溶解したガラスを膨らませたり切ったりするなかで、再生ガラスのほうが比較的固まりやすい傾向にあるので、より手早く製品を作らないといけないといいます。

「過去に経験した職人さんでないとそれを体現してコツを教えたりできません。やっぱり初めて触ると戸惑ってしまうし、どう扱っていいかわからないんですね」

窯の火の温度の管理も重要です。前日の火入れから温度を細かく調整。もちろんガスではないので火の加減を上手にコントロールしながら管理をしなければなりません。

「翌朝すぐに使えるガラスにできるように溶解していくところが難しかった」と川上さんは語ります。

細部にまで込められた思い

リサイクルだけでなく、琉球ガラスの技術の継承という側面もある「mado」シリーズ。シンプルな斜線のモール柄と、格子状が特徴的なダイヤ柄の2種類があり、それぞれに意味も込められているとのこと。

「モール柄は、琉球ガラスの代表的な模様のひとつです。戦後、ものがない時代のガラス職人たちは、廃車のスプリング(バネ)を使って筋模様を付けたそうで、当時をしのんでこの柄を採用。ダイヤ柄は、拓南商事グループの拓南製鐵が使っている鉄筋の柄にダイヤ柄、それを採用しました」

色はアイスグリーンとスモーキーブラックの二種類、どちらも車のサイドガラスから作られています。色が違う理由は、使用しているサイドガラスの場所の違いによるもの。アイスグリーンは運転席・助手席側、スモーキーブラックはUVカット成分が含まれる後部座席の窓ガラスを使用しており、再資源化前のガラスと同じ色が出るのも再生ガラスの特徴だといいます。

「沖縄は資源が少ないので、消費されるもの、廃棄されるものをアップサイクルで商品化して、循環していくようなものづくりは重要不可欠。メーカーとしてその一翼を担いたいです」と川上さんはにこやかに話してくれました。

今後は車の前面のフロントガラスや、後面のリアガラスを使った製造を計画しているそうです。

車の廃ガラスから作られた琉球ガラスは、職人の技と沖縄の歴史が詰まった自然にやさしい伝統工芸品でした。

モール柄のアイスグリーン
ダイヤ柄のスモーキーブラック

琉球ガラス村

糸満市福地169

問い合わせ TEL 098-997-4784

(2023年1月26日 週刊レキオ掲載)