劇団員は全員芸人。手話で笑いを届ける 劇団アラマンダ


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「食堂」舞台の新作を代表作に

2018年に旗揚げ。手話を学びながら活動を続けているコメディー集団「劇団アラマンダ」。全員がよしもと沖縄所属のお笑い芸人で、2月23日(木・祝)に予定されている新作公演に向け、現在稽古中。その意気込みや見どころを聞いた。写真前列は座長の大屋あゆみさん(左)とゆかさん。後列は左から島袋忍さん、又吉広人さん、リョウジさん、ガザオさん、島智大さん=那覇市内にて撮影 写真・村山望

「聴こえる人、聴こえない人、全ての方に笑いを届ける」ことをモットーに掲げ、手話で喜劇を演じる劇団アラマンダ。旗揚げから5年の間にさまざまな公演を行い、手話講座も主催するなど、彼らにしかできない活動に取り組んでいる。稽古では、せりふに合わせて手話を付けていくという。本番では舞台に立ち、せりふとともに手話を披露する彼らには、一般的な舞台劇を演じる時とは違う苦労がありそうだ。劇団員それぞれの思いを語ってもらった。

よしもとの養成所・NSC沖縄の1期生芸人として活躍中の大屋あゆみさん。聴覚障がいを持つ両親と手話で会話をする彼女が立ち上げたのが劇団アラマンダだ。芸人仲間の中で「手話で表現する喜劇を一緒に演じたい」と思ったメンバーに声を掛け、劇団をまとめてきた。2月には久しぶりに那覇で公演する。

「新作を発表しますが、劇団の代表作にしたいと思っています。台本を手掛けたのが劇団員の又吉広人くんで、みんなで意見交換をしながら仕上げます」と大屋さん。劇団員作の台本を演じるのは初で、これをきっかけに全員の個性を活動につなげたいというイメージを持っていると話す。

「『私たちが作り上げています』という気持ちで取り組むのが、アラマンダらしいと思っているんですよ」と目を輝かせた。「台本を頼まれうれしくて即引き受けましたが、書き始めてこんなにキツイのかと気付きました」と苦笑いする又吉さん。紆余曲折を経て「食堂を舞台にしよう」とアイデアを固めたそうだ。「座長の大屋さんが店長を演じ、息子や常連客の間で起こるドタバタぶりを描きます。公演当日最初に笑いが起こったらホッとして、自分の演技に集中し手話も頑張れるはずです」

手話の文法に苦労

仲間が手掛けた台本を劇団員全員が絶賛。中でも「今回の舞台は楽しくなりますよ」と自信たっぷりなのが、島袋忍さんだ。5年の活動で彼は「手話は文法が難しい」と話す。「手話の単語は覚えてきましたが、発する言葉との文法の違いで苦労します。笑いが起きたり『楽しかった』と感想をいただいたりすると、アメリカ人に英語が通じた時と同じうれしさです」

手話を使った公演中の様子(提供写真)

「日常で使う手話は自然に出てくるようになってきましたし、このせりふの手話での表現はこうした方がいいのかなど多少分かるようになってきました」と話すのはゆかさん。テンブスホールでの初公演は、新たな観客が来場するきっかけになるといいと期待する。「新作なので、過去に来場した方も楽しめます。家族やお友達をお誘い合わせの上、お越しください」と笑顔を見せた。

イラスト描きが得意なリョウジさんは、画力が入団のきっかけ。「実は手話のぎこちなさの方が目立って笑いが取れるので、上達しないように気を付けているんです」と笑顔。「台本を覚えて立ち稽古して、手話も入れる。普通の芝居より行程が多く不安もありますが、このメンバーなら大丈夫という自信があります」と、リョウジさんは力強く語った。

劇団の成長感じてほしい

今回の公演には新入りと助っ人劇団員もいるという。

「昨年11月の糸満公演が初舞台で、意外に楽しく演じられました。手話はアドリブがきかないので普段のお笑いとは違います。みんなの足を引っ張らないよう、真剣に頑張ります」と語る新入団員のガザオさん。手話の経験はほぼなかったが、演じることを楽しむ気持ちで続けるそうだ。

「過去公演を数回見ています。今回初めて手話を演じますが、取り立てて特別なことはありません。人前でのパフォーマンスは、お笑いの舞台と同じです」と話すのは島智大(しま・ともひろ)さん。本メンバー岩田勇人(いわた・ゆうと)さんに代わって出演するという。「みんなが表現することをしっかり伝えられるよう、お手伝いします」と宣言した。

劇団員全員集合で記念写真(提供写真)

座長の大屋さんは「私の役目は劇団員を信じて楽しむこと。他にも表情豊かな演技ができる2人、マエショーとちあきというメンバーもいます」と語る。「旗揚げから5年、初めて手話に触れたみんなが頑張ってくれて続けられています。今回の公演でも観客のみなさまに笑っていただきますし、公演の回数を重ねるごとに手話の変化や成長を感じていただける劇団だと思います。ぜひご来場ください」

芸人が手話で喜劇を演じるのは、日本の演劇界でも特徴があるといえるだろう。彼らが届ける笑いを楽しんでみたい。

(饒波貴子)


那覇市ぶんかテンブス館 木曜芸能公演
劇団アラマンダ「食堂アラマンダ~跡取り息子とおふくろの味~」

日時:2月23日(木・祝)
開場:13時30分/開演:14時
会場:テンブスホール(那覇市ぶんかテンブス館4階)
料金:一般1500円・高校生1130円・小中学生750円・身障者割750円
※障がい者手帳の提示をお願いします

問い合わせ:よしもとエンタテインメント沖縄
TEL 098-861-5141
よしもと沖縄公式HPより、メール受付可
 

(2023年2月2日付 週刊レキオ掲載)