映画館のない名護で上映会!?【島ネタCHOSA班】


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北部在住の映画好きです。先日友人から「やんばるシネマ」というグループがあり、定期的に名護市で上映会を開催していると聞きました。ぜひ調べてください。

(国頭村 クリキントン・イーストウッド)

2005年に北部唯一の映画館「名護シアター」が閉館して以来、北部には映画館がないと聞いていた調査員。そんな北部で上映会を行っているグループがあるとは初耳です。さっそく話を聞きに名護市に向かいました。

名護市で月1回開催

やんばるシネマのみなさん。前列左端が豊島晃司さん

インタビューに応じてくれたのは「やんばるシネマ」代表の豊島晃司さん。2017年に北海道幕別町から名護市に移住してきた豊島さんは、発足当初からのメンバーです。

活動を始めたきっかけは「名護市に住むことになり、映画サークルをつくりたいと思った」から。力になってくれそうな人たちを知人に紹介してもらい協力を仰いだといいます。

実は豊島さん、北海道時代は高校教師の傍ら、自主上映グループの代表を何十年も務めていた人でもあります。その後、縁あって古くて小さな映画館「CINEとかちプリンス劇場」を2003年に買い取り、そこを拠点に活動。月に4日間上映するスタイルだったという同館は、老朽化で12年に閉館したといいます。

17年に発足したやんばるシネマの第1回目の作品は老夫婦のスローライフを追った『人生フルーツ』。会場の名桜大学ホールには北部在住の人を中心に250人以上も集まりました。一時は中断していたものの、22年3月に再開を果たしたやんばるシネマ。現在はメンバーの入れ替わりを経て、8人の有志で運営しているといいます。

上映会の様子。30人弱が来場

上映会は主に名護市立中央図書館のAVホール(収容人数約130人)を会場に、基本毎月第3土曜日に開催。「できるだけたくさんの人に見てほしいので、入場料は大人800円、大学生500円、高校生以下は無料に設定している」そうです。

これまでに上映した作品は、インディペンデント系の映画が中心。アフガニスタンで人道支援に献身した医師・中村哲の半生に迫った「荒野に希望の灯をともす」や、政治風刺ネタで知られる芸人・松元ヒロを追った「テレビで会えない芸人」、沖縄関連の映画などを紹介してきました。機材がないため今はかなわないものの、今後は「メジャーな作品もやりたい」と豊島さんは話します。監督や出演者などを招いたトークショーを開催するなど、貴重な機会も提供しています。

他地域の巡回も予定

会場内や入り口には手作りのポスターなどを掲示

「荒野に希望の灯をともす」は、依頼を受け、他の北部地域や中南部でも上映会を開いてきました。作品を広めたいという思いもあり「県内を一巡したい」と意気込みます。

調査員も1月下旬、名護の上映会の様子を見に行ってきました。その日は、香港の民主化デモをテーマにしたドキュメンタリー映画「BLUE ISLAND 憂鬱之島」を上映。北部在住の中高年世代を中心に20代~80代の観客、30人弱が来場しました。上映後、観客たちに話を聞くと、「映画が好きでよく来る」「名護には映画館が必要」「子どもたちに映画館を体験させたい」「一番近い映画館でも中部なので助かる」「映画はスクリーンで見たい」など、さまざまな思いを話してくれました。かつて存在した名護シアターのことや過去に自主上映会に奮闘してきた人たちのことを知る人もいて、貴重な話も聞くことができました。

これからも良い映画を上映していきたいという豊島さんは「若い人たちが連れ立って来てくれるような上映会が最大の課題」と話します。動画配信などで映画を見る機会が多かった調査員でしたが久々にスクリーンで映画を体験し、その迫力を堪能しました。北部在住の人もそうでない人も、映画好きな人はHPで上映情報をチェックしてみてください。


やんばるシネマ

https://yanbaru-cinema.jimdosite.com

※上映作品、スケジュールなどの詳細はHPを参照

TEL 090-9081-1597(豊島さん)

(2023年2月9日 週刊レキオ掲載)