近藤真彦さん、十代のころ訪ねた日から常に心に残る「ひめゆりの塔」


この記事を書いた人 Avatar photo 饒波 貴子

1980年代からトップスターとして活躍を続ける近藤真彦さんが、1月に来沖。盟友・野村義男さんと一緒に沖縄市でライブを開催しました。沖縄の観客の前で歌うのは10数年ぶり、という近藤さん。沖縄への思いとライブツアーについてたっぷり伺いました。
またカーレーサーとしての活動歴もあり、現在はレーシングチーム「KONDO RACING」の監督としての顔を持つ近藤さんをこの日、桑江朝千夫沖縄市長が表敬訪問。本格的なサーキット建設を目指す市の取り組みを伝える場面がありました。近藤さんからは未来のサーキット場に期待する言葉もありましたので、その様子もお伝えします。

※取材日:2023年1月21日

聞き手:饒波貴子(フリーライター)

デビュー当時の15歳のころから現在も、「マッチ」という愛称で親しまれている近藤真彦さん。飾らない言葉と笑顔で思いを語ってくれました。

過去になかったハイペースでライブを開催

―ようこそいらっしゃいました! 近藤さんが野村義男さんとのライブツアーを発表した時、「沖縄や北海道をはじめ全国に行こうとヨッちゃんを誘いました」と書かれた記事を見て、いつ来るのかとお待ちしていました。

沖縄に来る機会はあまりなかったので、行きたいと思っていたんです。なので、僕からリクエストしました。実現するかどうかは分からなかったけれど、スケジュールに沖縄が入っていることを確認して「やった~!」って喜びましたよ(笑)。沖縄に来てライブやってすぐに空港に戻って帰っちゃうのはもったいない、と思うアーティストは多いです。なので公演の一日前に来て、終わって一日後に帰ろうと計画しました。

―旅行気分も味わっていただけると、うれしいです。2回目の開催になる「MasahikoとYoshio Live Tour」は、お正月明けにスタートしましたね。いかがですか?

公演数が多く、ツアーの間にはソロコンサートもやっています。去年のクリスマスシーズンにはディナーショーもあって、スケジュールに追われている感覚というのが正直なところです(笑)。

―今回のツアーで、近藤さんが特に力を入れたのはどんなところですか?

見どころでいうと、セットリストがオープニングからエンディングにかけて上り調子になっています。オープニングも割とハイテンションなスタートですが、ステージに立つ側もお客さん側もお互いに様子見をしている感じがあるんですよね。そこでお客さんの気持ちをグッとつかんで、一曲ずつどんどん盛り上がっていきます。バラードで聞かせる時間もありますが、アンコールまでに「みんな、また次も来てね!」という気持ちを込めていますし、それがみなさんに伝わるライブになっていると思います。

写真提供:エムケイカンパニー

―どんどん盛り上がれるのは最高に楽しいですね! 野村さんの見どころを教えてください。ギタリストとして誘ったのでしょうか!?

野村さんはもう10年以上、大きなホールでもホテルでのディナーショーでもギタリストとして、事あるごとに手伝ってくれていました。その時はミュージシャンとしてバックにいてくれたんですけれど、それだけではもったいない。ヨッちゃんのギターをもっと前に出したいし、僕のファンの方にヨッちゃんの歌を聞いてもらいたい気持ちがあったんです。ヨッちゃんのファンの方には、僕のステージを見てもらいたかったですしね。とはいえ2人でグループを組んでいる訳ではないので、それぞれの活動もあります。なので「マサヒコとヨシオ」というダブルネームをタイトルにして、2人でツアーを計画しようと話し合ったんです。ヨッちゃんは照れくさそうにしていますが、しっかり歌っていますよ(笑)。

―沖縄での開催は「ミュージックタウン音市場」ホールで、会場の規模としては小さな方だと伺いました。観客としては距離が近いうれしさがありますが、ステージに立つ方としてはいかがですか?

このくらい規模の会場はそんなに多くない感覚で、近いなら近いで大変。でも遠いのもそれはまた大変(笑)。会場に合わせて、観客のみなさんを見ながらやっていく感じですよね。3月にはこのツアーもソロでツアーもひと段落するんですけど、約60公演という数になるんです。

―今までにないくらいの公演数の多さなのでは!?

15~16カ月かけて60公演開催、というペースになっていると思うんだけど、こんなに集中してコンサートやライブをやることは過去になかったです。なのでコンサートぐせみたいなのが付いたお客さんがいて、面白いんですよ。名古屋でマッチのコンサートを見たけど楽しかったから、どこかチケット取れるところはないかなと探して、また来てくれるんです。あとは「どうやらマッチがツアーをやっていて、すごく楽しいらしいよ」という話がSNSなどで広がって、20年ぶりとか30年ぶりに見てみようとか言って来てくれる方もたくさんいます。もしくは「初めて来ました」という方もいて、特に男性は多かったですね。

―子どものころテレビで見ていたとか、あのころは行きたくても行けなかったという男性ファンは多いでしょうね。

そうそう(笑)。初めて来た男性の声を聞いてみたら「女性がいっぱいで恥ずかしくて照れてしまう」という気持ちで来るんだけど、会場に入ると割と男性もいて「ライブはすごく楽しくて、また行きたくなりました」という声があったり、あとファンの方がダンナさんを連れて来たり。「うちのダンナは初めは嫌がっていたのに、来年もマッチのライブがあるならまた行きたいと言っています」と教えてもらいましたよ。

―ライブに来る男性ファンが増えているんですね。みんなが懐かしいと思う、あのころの名曲も歌っているということですね!?

はい、もちろん歌っています。

沖縄といえば、人の優しさと島ラッキョウ

―久しぶりの沖縄ライブはどうですか?

全国どこに行っても飛行場とホテルと会場の移動なので、沖縄を満喫して帰れないのは残念。でも到着してすぐに国際通りに行き、明るいうちから泡盛を飲みました(笑)。

―天気がすごく良くて、1月とは思えないくらいの暖かさですよね。

本当に。最終日のライブは開演時間が早いので、終わる時間も早い。ってことは早い時間から遊べるってこと(笑)。

―飲みに行った先で、近藤さんに偶然お会いできるかもしれませんね(笑)。歌手としてだけではなく、近藤さんはアスリートとしても沖縄にいらっしゃっていますよね。沖縄の好きなところを教えてください。

人の心、優しい気持ちがすてきですよね。同じように感じている人、多いんじゃないでしょうか。ホテルやレストランの従業員、バスやタクシーの運転手。観光客として迎えてくれているのでしょうが、いろんな所でどんな時も、みなさん優しく接してくれます。僕はトライアスロンをやりますが、宮古島と石垣島の大会に過去参加しました。本番だけじゃなく練習のためにも来ていましたが、みなさんの優しさに触れてきましたよ。

―沖縄の人は、おもてなし精神があるんでしょうか!? 誇りに思うようにします。

絶対に思ってください(笑)! 沖縄の方は優しい人が多いと、毎回感じていますから。

―好きな沖縄の食べ物を教えてください。

ソーキそばなどはもちろん好きなんですけど、それより好きなのがおつまみ系。居酒屋さんで食べるようなチャンプルーだったりね。一番好きなのは島ラッキョウで、海ブドウ、モズクも好きです。東京でも沖縄料理屋に行くことはありますよ。でも沖縄で食べる方が、もちろんおいしく感じます。

―沖縄の好きな場所、行きたいところはありますか?

生涯で2回しか行ったことがないんですけど、姿勢を正すというか澄んだ空気を感じるというか、そんな場所が「ひめゆりの塔」です。初めて行ったのは10代のころ。多分テレビの仕事で行ったんですが、その時に知った歴史が強烈ですごく重く受け止めました。本当に衝撃的でした。5年くらい前には家族で訪ねました。どんな場所か息子に説明しましたが、まだ10歳くらいでぽかーんとしていましたけどね。なぜだか分かりませんが気になる場所なんですよ。沖縄に来たら毎回行くのかと聞かれたら、行く訳ではないんですけどね。

―気持ちが引き締まる特別な場所なのでしょうか。いずれまた行く機会を作りそうですね。

もちろん行くと思います。僕の思い出の中に深く残っているのは、観光地の沖縄ではなくひめゆりの塔です。

―意外な答えでびっくりしました。沖縄戦体験者の高齢化により、戦争の語り継ぎが厳しい現状になっています。継承が課題になっている中、そういうところに意識を向けてくださるのはありがたいと思いました。

歴史には良いこともあればそうじゃないこともありますよね。重い歴史を受け止めるために訪ねることも必要ですが、時には少し楽な気持ちで立ち寄ってみてもいいのではないかと思っています。訪ねる人が増えるといいですよね。

―リゾート旅行も楽しんでいただき、沖縄の歴史を知り平和を願う機会も持っていただきたいです。

そうですよね。沖縄だけではなく広島、長崎ほか日本には戦争の傷跡を感じる土地があります。訪ねる時には僕なりに意識を向けています。

―最後に、沖縄のファンの方にメッセージをお願いします。

ライブをやる前から、沖縄は相当いいノリのステージになると分かっているんですよ。これまでコンサートツアーは、5年に1回など周年でしかできていませんでした。2年前にジャニーズ事務所を退所させていただき、現在はコンサートを始め芸能活動を増やし、カーレース「KONDO RACING(コンドー レーシング )」の監督業と並行してやっていく方針で動いています。沖縄に来る機会も以前よりは多くなると思ってはいますが、どうなることやら。なんせもう年ですからね(笑)。でも沖縄に来た時には、ぜひ会いに来てください!

―年齢を感じさせることなく全然変わりません。また野村さんと来てほしいですし、ソロコンサートもお願いします。

いつかできるといいなと思います。また来た時は、みなさまよろしくお願いします。

~ 桑江沖縄市長、近藤さん・野村さんとご対面 ~

 近藤真彦さんと野村義男さんがライブを開催した会場「ミュージックタウン音市場」がある沖縄市は、市長の桑江朝千夫(くわえ・さちお)さんが掲げた「本格サーキット建設の実現」という選挙公約のもと、モータースポーツを新たな観光コンテンツとして創出すべく、さまざまな事業に取り組んでいます。1月21日桑江沖縄市長は、監督としてレーシングチーム「KONDO RACING」を率いる近藤さんを訪ねました。

「モータースポーツに力を入れている沖縄市には、モータースポーツマルチフィールド沖縄という施設があります」という桑江市長のあいさつに、「数日前にウチのドライバーが施設を利用したそうで、沖縄にいるなら顔を出したみたらと声を掛けられました。でもスケジュールの都合で行けなかったんですよ」と答えた近藤さん。桑江市長は「モータースポーツで盛り上がる市にしたいので、10年先になっても本格的なサーキット場を建設できればと思っています」と構想を語りました。

「半分サーキットで半分公道、という設計のサーキット場ができたら良いのではないですか」と近藤さんは、オーストラリアやモナコの例を挙げ公道に沿ったり、市民プールの横を走ったりなどのコース展開を説明。「沖縄にそのようなスタイルのサーキット場ができれば、すごく盛り上がりそうです」と未来のサーキット場にエールを送りました。

近藤さん、そして野村さんとの対面を喜んでいた桑江市長。「オープニングセレモニーには近藤さん、ぜひお越しください。野村さんはギターを弾いてください」とお願いしていました。

チーム監督の近藤さんですが、4月には「全日本スーパーフォーミュラ選手権」を開催する日本レース プロモーションの取締役会長に就任予定。日本のモータースポーツ界を代表する存在として、今後ますます注目が集まります。沖縄市とのつながりが深まる可能性もありそうですね。

「ハイサイ気分」
ようこそ沖縄へ! 本土から来沖する有名人を歓迎する、連載インタビュー。近況や楽しいエピソード、沖縄への思いなどを語っていただきます。

【プロフィール】

☆近藤真彦(こんどう・まさひこ)

生年月日:1964年7月19日
出身地:神奈川県
身長/体重:173cm/58kg
血液型:RH+O型
1979年、TBSのテレビドラマ『3年B組金八先生』の生徒「星野清」役でデビュー。
1981年 ゴールデンアイドル賞受賞
1987年 第29回日本レコード大賞 大賞
2010年 第52回日本レコード大賞 最優秀歌唱賞


◆インフォメーション◆

公式サイト https://tck.kondo-racing.jp
Twitter @kondoracingteam
Facebook https://www.facebook.com/KONDORacing/
Instagram @kondoracingteam/

◆バースデーライブ決定!

Masahiko Kondo Birthday Live 2023「RAIN or SHINE どんなことがあっても…」

7月19日(水)・20日(木)・21日(金):会場:東京・かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール
詳細 → https://www.curtaincall.tokyo/mk_program-rain_or_shine/

饒波貴子(のは・たかこ)
那覇市出身・在住のフリーライター。学校卒業後OL生活を続けていたが2005年、子どものころから親しんでいた中華芸能関連の記事執筆の依頼を機に、ライターに転身。週刊レキオ編集室勤務などを経て、現在はエンタメ専門ライターを目指し修行中。ライブで見るお笑い・演劇・音楽の楽しさを、多くの人に紹介したい。