デマは差別に直結する モバプリの知っ得[226]


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4月末から5月上旬にかけ、「介護施設で働いていますが、ジェンダー平等の流れでロッカーやトイレが男女共同になりました」「県知事からはお褒めの言葉をいただいたようですが、嫌がった職員が退職しました」と言った内容のTwitter投稿が拡散され、論争となりました。現在国会でLGBTQ当事者への差別をなくす法律を作るかどうかで賛成、反対など意見が分かれており、特にトイレの男女共同化を巡っては多くの注目を集めていたからです。

しかし、名指しされた埼玉の大野元裕県知事は18日、ネットで拡散されている投稿を否定し、介護施設はロッカーやトイレが男女共同にも、職員が大量に退職した事実もなかったと述べています(現在、大元のTwitter投稿者はアカウントそのものが削除されています)。つまりはデマが大量に拡散され、そのデマを元に、多くの人がLGBTQ法案の議論を行なっていたということです。

そしてこの間違った議論の中で、LGBTQ当事者への差別も多く飛び交っていました。SNSでは、さまざまな形でデマ、フェイクニュースが拡散されますが、その多くは「こうであろう」という私たちの差別心や偏見が基になります。差別をしたい人たちにとっては、事実かどうかはあまり重要ではなく、差別できる材料があればすぐに飛びついてしまうのです。ネットでの軽い気持ちでの拡散が、社会の中の「差別をしていい」という空気感をつくりあげることになります。今一度投稿の際は、しっかりと事実関係を確認し、差別に加わらないかを見直してみましょう。

イラスト・小谷茶(コタニティー)

~ 言葉の解説 ~

トイレの男女共同化を巡っては多くの注目を集めていたからです … 最近では「多様性に配慮し、LGBTQ当事者が使いやすいように」ということで、オールジェンダートイレや男女共同トイレなどが出てきており、それらの使い勝手の賛成、反対を巡って論争になります。人の少ないトイレで犯罪が発生することもあり、共同化することで不安を覚える女性がいる一方、LGBTQ当事者もまた犯罪被害に遭いやすいため、トイレをどう分けて使っていくかは丁寧な議論が必要だと考えています(だからこそ、デマで事実がゆがめられることに憤りを覚えています)。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」でも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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