子どもと、ほっと一息 古民家カフェの加藤さん夫妻


子どもと、ほっと一息 古民家カフェの加藤さん夫妻
この記事を書いた人 座波 幸代
手作りの石窯で野草を練り込んだピザを焼く加藤裕二さん=沖縄市久保田

 沖縄市久保田の住宅地に、赤瓦屋根の小さな古民家カフェ「ヤソウカフェyamacha」はある。自宅兼店舗の庭には、手作りの石窯(いしがま)やウッドデッキが並ぶ。裏庭に回ると人の背丈を超えるイヌビワの木の周りに、ヨモギやクワンソウなどの野草が芽を出していた。店舗からは子どもたちの遊び声や赤ん坊の泣き声、母親らの笑い声が響く。

野草を練り込み石窯で焼いたピザと県産野菜を使ったサラダ

 オーナーの加藤裕二さん(38)と律子さん(35)夫妻がカフェを開店して5年。それ以前、裕二さんは建築関係の仕事、律子さんは主婦だった。野草や県産有機野菜を使い、石窯で焼いたピザ、パン、自家焙煎(ばいせん)コーヒーなどこだわりの一品を提供する。

 暖かい所で子育てをしようと夫妻が、沖縄に引っ越してきたのは8年前。裏庭に生えていた草が食べられることを人から教えてもらい、野草に興味を抱いた。「実は野草って、抗酸化作用とかデトックス(体内浄化)効果とか高栄養価なんですよ」と説明する律子さんの目が輝いていた。

自宅の裏庭にあるヨモギやイヌビワなどの野草を摘む加藤律子さん

 野草図鑑を買い、お年寄りに聞き、料理を作って試食するなど野草について勉強した。渋みやクセの少ない新芽を毎朝摘み、ペーストやソースに加工して活用している。自宅のスペースが余っていたことやさまざまなタイミングが重なり店を開業。「自然な流れかな」と律子さんは振り返る。

 店内は全席座敷だ。3人の子を育てる律子さんは「座敷だと、子どもも親もゆっくりできる」と語る。口コミが評判を呼び、客の9割は子ども連れだという。店内には、手作りおもちゃや、押し入れを改装して作った秘密基地など、至る所に工夫がちりばめられている。昨年、長女の千代子ちゃん(1)が生まれてからは「1人の母親としてお客さんとこれまで以上に情報交換したり、店内の内装を変えたり、気付かなかったことに気付くようになった」。

 常連客の長岡絵美さん(33)は「赤ん坊を連れて行けるカフェって、限られてる。ここは赤ちゃん連れの人も多いから、ぐずったり泣いたりしても気兼ねなくゆっくりできる」と息子と一緒に静かなひとときを過ごしていた。

絵本や手作りおもちゃの横で、子どもとゆっくり過ごす常連客の女性

 子どもと一緒に、ほっとできる場所を夢見る加藤夫妻。毎月不定期で、マタニティーピクニックや情報交換会なども企画。「お母さんに温かい料理を出したいというこだわりがある」と律子さん。「子育てって1人ではできない。子育てする人にとって息抜きができる場所になるよう、まだまだ進化していきますよ」と語っている。

文・上江洲真梨子 写真・金城実倫

(2016年6月28日付 琉球新報掲載)

 

所在地:沖縄市久保田1-21-12
TEL:098-927-0554