那覇市松山の飲食店に5月29日夜、おいしそうな手料理やフルーツ、ビール、ワインなどを携えた約20人の男女が集まった。入り口で支払う会費千円は飲食代ではない。アジアに学校を造るための積立金に充てられる。“チャリティー模合”とも呼べる、新しいスタイルの支援活動を続ける集いの名は「かふぇ で ゆいまーる」。主宰するのは、沖縄少年院で法務教官を務める武藤杜夫さん(38)=那覇市=だ。
「ボランティアを『頑張る』ではなく、気軽に参加できればいい。続けられるものにしか力はない。人とつながり、自分たちが楽しみながら続けることで、きっと誰かの役に立てると思うんです」 ネパールやミャンマーなどアジアの貧困地域で支援活動を続ける、認定NPO法人アジアチャイルドサポートの池間哲郎さんの取り組みに感銘を受けた武藤さんが企画し、2014年2月から原則月1回、開催を続けてきた。
参加者の職業や年齢は実にさまざま。各自のつながりの中でネットワークを広げてきた。この日は県外から訪れた教育関係者を含め、県内の公務員、ウェブデザイナー、若手カメラマンなどが結集。話題は尽きることなく、楽しげな笑い声が店内を包んだ。
毎回、活動に賛同する飲食店が場所を提供し、運営をサポートしている。この日の会場「DOCGやよい」は、立ち上げ当初からの協力店。参加者を喜ばせようとマグロを解体し、たたきやすしを振る舞ったオーナーの久手堅大悟さん(37)は「僕自身ができることで、地球の誰かや子どもたちの力になれば」と願う。「皆さん楽しみながら『誰かのために』と続けています」と語った。
15年8月には積み立てた10万円で、アジアチャイルドサポートを通じてミャンマーに井戸を寄贈した。次なる目標は学校建設。目標額は500万円で、目下110万円を積み立て中だ。 法務教官として日々、生きづらさを抱える子どもたちに向き合い続ける武藤さん。「世の中の問題の多くは、独りぼっちになることから始まる。それは沖縄も世界も同じ」と指摘する。「沖縄の“ゆいまーる”は素晴らしいと思う。それを次の世代につなぐのが大人の責任。沖縄とアジア、日本とアジアは深いつながりがあり、その恩返しの意味もある。人とつながりながら、楽しく続けていきたい」と笑顔を見せた。
(佐藤ひろこ)
(2016年6月7日琉球新報掲載)