アイデアをリアルに 3Dプリンターで新たなものづくり

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3Dプリンターの作業を食い入るように見つめるワークショップ最年少参加者の仲間琉君。「難しかったけど、いろんな物を作ってみたい」=沖縄市

 低価格化が進み、家電並みの製品となった3Dプリンター。製造業といえば大工場だったのが、3Dプリンターを使うことで個人でも気軽にアイデアを形にできるなど、ものづくりの革命として注目される。県内でも3Dプリンターを使って商品開発力の向上や新サービスにつなげようという取り組みが始まっている。

自作キャラをリアルに


家庭用では最大の高さ40センチまで出力できる3Dプリンターも導入する沖縄ミライファクトリー

 沖縄市の一番街商店街の一角にある「沖縄ミライファクトリー」は、地域の住民やベンチャー起業を目指す人たちに、デジタル工作機械を使った新しいものづくりを実践してもらおうという施設だ。卓上に設置する家庭用3Dプリンターを4台そろえる。運営スタッフの西村大さんは「50万円の機械もあれば、今だと台湾や中国製なら5万円程度で手に入るものもある」と説明する。

 8月27日に開催した3Dプリンターワークショップには、年齢も職業もさまざまな12人が参加。参加者はパソコンで3Dデータを作成するソフトの使い方を学び、3Dプリンターで立体を出力するまでを体験した。

 厚さ0.1~0.2ミリの樹脂の層を積み重ねて造形していく3Dプリンターの動きを食い入るようにのぞき込むのは、IT企業のレキサス(うるま市)に勤務する仲松佐和子さん(30)。自社製作のアプリ「コトバンバン」に登場するハムスターのキャラクター「ホミック」のフィギュア出力に挑戦した。「私の作った2次元のキャラクターとリアルな世界で会ってみたかった」と声を弾ませた。

商品開発に活用

 沖縄市で雑貨店「coco_zakka_style」を営む濱門京子さん(33)は「世界に一つしかない商品づくりのヒントがあるかもしれない」と語る。指輪の形状を3Dプリンターで出力し、「これを土台に飾り付けていけば、アクセサリーのパーツに使えそう」とデザインの再現性や質感を念入りに確かめた。

 ワークショップの講師を務めた西村さん自身も、3Dプリンターで作った製品をネット販売している。アニメゲーム「東方プロジェクト」のコスプレに使う衣装小道具で、「メーカーは100%作らない」というニッチ商品だ。

 「金型で作ると生産ロットを大きくしないと採算がとれないが、3Dプリンターなら少量を簡単に作れる。売れると分かれば量産に移ればよく、ベンチャーや中小企業の商品開発のリスクを抑えられる」と語る。

ドローンと連動も


沖成コンサルタントが3Dプリンターで作成した橋梁工事現場の模型

 3Dプリンターの導入は、製造業のほか建設の分野でも始まっている。沖成コンサルタント(那覇市)は、橋げた構造の読谷道路2号線工事の完成模型を3Dプリンターで作成。CIM推進室の大濱信彦さんは「住民説明会で使って、分かりやすいと言ってもらえた。完成予想を可視化することで現場の安全確認などもでき、いろいろメリットがある」と語る。

 同社は2013年にCIM推進室(鈴木浩一リーダー)を設置し、従来の平面地図から3次元データへと移行を進めている。大濱さんは「ドローンで空撮した写真を基に3Dの地形データを起こし、プリンターで出力するやり方になっていくかもしれない」とIT化の未来を語った。

文・与那嶺松一郎



県内製造業の増加 期待
 牧山文彦(サイ・テク・カレッジ那覇情報システム科専任講師)

4年ほど前に家庭用の3Dプリンターが出てきて、この1~2年は実際の業務にも使われてきている。かつては相当な価格だったのが、今は同じ性能が数万円で手に入るという低価格化が進んできた。試作品を外注するよりも、自前で早く、しかも安くで製造でき、開発スピードが上がるといった効果がある。

「プリンター」という名称は、パソコンの周辺機器という位置付けからきている。金型を作って大量生産するのとは違う、コンピューターの一部としての製造業という新しい形が面白いところだ。大きな工場でなくても、小さな会社や個人にも、ものづくりを可能にする。パソコンが出始めた頃の、何に使えるか分からないけど何かができそうだという状況に似ていると感じている。

沖縄は大規模工場がなかなか展開できない土地柄だが、3Dプリンターは小さな工場のようなもので、離島でも構わない。沖縄の製造業の裾野を広げることができると期待している。

(2016年9月6日 琉球新報掲載)



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