減らそう海ごみ・その1 しかたにさんちの自然暮らし(10)


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 今年の沖縄は、10月になっても連日30℃超え! 11月に入り、やっと過ごしやすさを感じるようになりました。海遊びはオフシーズンですが、実は秋から冬の楽しみがあります。それは、砂浜を歩いて漂着物を拾うビーチコーミング。沖縄の西側には黒潮が流れ、北風が吹くと、黒潮を流れるものが島の西海岸に寄せてくるのです。ヤシの実やモダマなど植物の種子、コブシメの甲やウミガメの骨…。ただ、こうした自然物以上に、残念ながら人間の出したごみもたくさん寄せて来るのが現状です。

海ごみサミット2016三重会議が行われました。

 今、海を流れるごみの問題に、世界の人々が動き出しています。私もこの問題をもっと知りたくて、10月28日から3日間、三重県の伊勢で行われた「海ごみサミット2016三重会議」に参加してきました。海ごみサミットは、一般社団法人JEAN(ジーン、http://www.jean.jp)という、海ごみ問題に取り組むNGOが主催する市民会議で、今年で14回目。私が参加するのは昨年に続いて2度目です。

 今年は日本の海ごみ研究者の発表に加え、東シナ海を囲む韓国、台湾、中国の各地域、またハワイ、アメリカ、カナダ、アラスカという太平洋を囲む地域からも、ビーチクリーン活動を行う方々の発表がありました。さらにはヨーロッパ事情や、世界中の海を航海して漂流ごみを調べている団体からも発表があり、文字通り海ごみをテーマにした世界市民サミットとなりました。

この日は三重県内外からビーチクリーンに多くの参加者がありました。奈佐の浜のビーチクリーン前。

 今回の一番ホットな話題は「マイクロプラスチック」。沖縄でも、発泡スチロールやペットボトル、ビニール袋、漁業の浮きや網など、さまざまなプラスチックが漂着します。これらは海岸に打ち上げられると、波や砂にもまれ、暑い日差しと紫外線にさらされて、どんどん劣化して細かくなります。これが、今とても問題になっているんです。国際的には、5ミリ以下のプラスチックごみをマイクロプラスチックと呼んでいます。

ビーチクリーン後。それでもマイクロプラスチックはたくさん残ったまま…。

 マイクロプラスチックの第1の問題は、細かくなったごみの回収がとても難しいこと。これらは砂に混ざり、海が荒れれば再び流出していきます。

 第2の問題は、ごみを海の生物が食べてしまうこと。海鳥やウミガメの誤食はすでに知られていますが、今や小魚やプランクトンの体からもプラスチックの破片が見つかるようになったのです。

 第3の問題は、プラスチックが海水中の有害な化学物質を吸着しやすいこと。プラスチックの破片にまとわりついた有害物質は、生物が吸収し、体の中にため込む可能性があります。現に、PCBや鉛といった重金属などが海の生物から検出されています。これは海の生態系に対してだけでなく、海を食料庫にしている私たちに返ってくる問題です。

 では、どうしたら良いか…途方に暮れそうになりますが、ごみは私たちが出したものである以上、私たちにできることがある! そんなことをこれからも考え、紹介していこうと思います。まずは皆さんも考えてみてくださいね!

サミット参加の海外組と記念にパチリ。右下が筆者。

鹿谷麻夕(しかたに自然案内)

 しかたに・まゆ 東洋大、琉球大卒。東大大学院中退。東京で生まれ育ち、20代半ばで文系から理系に転向、沖縄に来てサンゴ礁を学ぶ。その後、しかたに自然案内を主宰し、県内で海の環境教育を行う。本と音楽と野良猫を好む。