沖縄・今帰仁発 ぬるヌル相撲 「やったことない」に挑戦 恩返し胸に「心は一つ村興し♪」

  • 北部
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 全身にぬるぬるのローション(潤滑液)を塗りたくった男たちが、よちよちと闘っている。闘いの場であるブルーシートで覆われた土俵は大相撲と同じ直径15尺(4・55メートル)。足元にぶちまけられたローションで、立っているのもやっとだ。相撲をするには最悪の状況で派手に転がり合う“力士”の大一番に、約300人の観客は大きな笑いと拍手を送っていた。


「今帰仁城跡」の小旗を持ちながら満面の笑顔を見せる上間哲朗さん=10日、今帰仁村教育委員会中庭

 10月30日に今帰仁村総合まつりの一環で行われた「第4回全島ぬるヌル相撲2016今帰仁場所」の一幕だ。用意したローションは440リットル。女性も含む3人ずつ10チームが県内各地から参加し、沖永良部島からや外国人の参加もあった。

 企画したのは今帰仁村青年団協議会の上間哲朗会長(33)だ。きっかけは2012年、今帰仁城跡での文化財発掘現場に立ち会った時だった。ブルーシートに雨水がたまっているのを見た。ぴんと来た。上間さんは「どこの祭りでもやっていないことをやりたいと思った。テレビで(同様の企画を)見たのもあった」と振り返る。

 今年で4回目を迎えたこの催しも、初回開催を提案する際には、祭りの実行委員の面々に全く相手にされなかったという。鼻で笑われる瞬間もあった。

「『やったことない』というのはみんな怖いんですよ。でもこっちは(ぬるヌル相撲の盛り上がりが)イメージできている」と自信はあった。初回の成功はそのまま立派な実績となり、次回からは祭りのプログラムに自動的に組み込まれていた。「考えが守りに入ると何も生まれない。攻めて初めて、何かが生まれる」


転ばないように慎重に攻守を繰り広げる相撲出場者(主催者提供)

 上間さんがぬるヌル相撲会場に掲げた文字がある。「心は一つ村興し♪」。このフレーズは出場者募集の案内などにも書かれた上間さんのテーマだ。

 これほどまで今帰仁村を元気づけようとする原動力は、恩返しの心だ。幼少時に父親を亡くした。「母子家庭だったから、何かしらの形で村にはお世話になっているはずだ」との思いをずっと持ち続けている。

 本島南部から毎年参加がある。ぬるヌル相撲がきっかけで、きっと誰かがどこかで今帰仁を話題にしてくれている-。「ばかげたイベントかもしれないけど『今帰仁』という名前は確実に広がっているんだな」とうれしくなった。

 ぬるヌル相撲は隣県・鹿児島でも広まりつつある。昨年参加した沖永良部島のメンバーが島の祭りに導入し、これを地元テレビ局が取り上げたことがきっかけだ。上間さんは「全部(の場所が)盛り上がればいい。パイオニア(先駆者)が今帰仁ならいい」。目尻をくしゃっとさせた大きな笑顔で村中を巻き込んでいく。

(長浜良起)



[メモ]

 全島ぬるヌル相撲は毎年今帰仁村総合まつりと同日に村教育委員会中庭で開催されている。「絶対に勝たなくてもいい闘いもある」を副題に「運動不足の解消と足腰の強化」「笑いを届ける」「各青年団の親睦」などを目的としている。背中や腹部が土俵に付くと勝負が決まる。



(2016年11月14日 琉球新報掲載)



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