軽やかに暮らしたい しかたにさんちの自然暮らし(11)


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 引っ越しました。緑に囲まれ、広い空と海が見える南部のアパートから、大型ショッピングセンターに近い、中部の少し高台の街中のアパートへ。

 ほぼ14年ぶりに引っ越して実感したのは、「もう使わないもの」をたくさんたくさんため込んでいたこと。捨てるのはもったいない、いつか使うはず… との思いから、ものを捨てられず、いつの間にか「必要なもの」の何倍もの量になっていました。ものをため込むのって、実は満ち足りているのに「将来使うかも=将来ないと困るかも」という「不安」が理由なんですね。

 中でも多かったのは、本棚に詰め込んであった書籍。ほとんどは大学時代に買った専門書の類いで、講義や研究で使っていたものです。大学を辞めたのだからもう使うことはありませんし、必要な情報は最新の内容を含めてネットで瞬時に見つかります。でも、いざ見慣れた本を捨てるとなると、何だか不安だし、やはりもったいない! そこで、高価な書籍は学生さんに譲ろうとしましたが、今やネット検索の方が使いやすいのは学生さんだって同じこと。結局、古くて分厚い専門書は手元に残りました。意を決して、コミックと一緒に街の古本屋に持ち込むと、長年本棚にあった本は日焼けしていて5円~数十円程度。それでも値が付くのは良い方で、半分以上は0円となり、結局は紙ごみに。予想してはいたものの、これはちょっとショック。買うことは、いつかは捨てることなのですね。その後、専門書や洋書を着払いで買い取る古書店をネットで見つけ、少しはましな処分ができました。

 せっかくものを減らしたのですから、これからはシンプルな暮らしを心がけようと思います。ものを買わなければ、結果的にごみも減るはずです。とは言え、暮らしが変わったり、今あるものが壊れたりすれば、次を買わないわけにはいかないでしょう。そこで、ものやごみを増やさない工夫として、気に入ったものを大切に長く使うことを心がけようと思います。そのために、使いやすく、飽きが来ず、すぐには壊れない、質が良いものを見分ける目をもちたいものです。

本棚に詰まっていた書籍。ごっそり処分したら気分爽快!
お気に入りの本。シンプルな絵で読みやすく、何度読んでもワクワクする。

 引っ越して気づいたもう一つのことは、引っ越しはエコじゃないってこと。重い荷物を積んだ車は燃費が悪い! エコ運転をしていると、信号待ちから発進するたびに、いつもより余計にアクセルを踏み込んでいるのがわかります。エネルギー消費の点では、1カ月間ほぼ毎日重い荷物を運んだことで、私の体は数キロ痩せました。周囲の人からは痩せたことをうらやましがられるのですが、50歳を過ぎて1カ月に数キロの減量はちょっと無理しすぎたかも。とは言え、私も車も、軽い方がすっきりといい気分。これからは、できるだけシンプルにさらに軽やかに暮らしたいですね。何年か先に引っ越しするときにどうなっているか、今からちょっと楽しみです。

鹿谷法一(しかたに自然案内)

 しかたに・のりかず 琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島生まれ。海に憧れて沖縄に来て、もう30年以上。専門は甲殻類。生物の形と機能の関係に興味がある。趣味は本とパソコンとバイクいじり。植物を育てるのも好き。