減らそう海ごみ・その2 しかたにさんちの自然暮らし(12)


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 新北風(ミーニシ)が吹くようになりました。気温は20度前後。1年中Tシャツにサンダル!というのも身軽で良いけれど、さすがにそれでは寒いし、ちょっとおしゃれするのに良い季節ですね。首や肩にストールを巻いたり、軽めの上着をはおったり。

 ほどよく晴れた12月、本島南部の海岸に行きました。南向きのビーチでは、北風が山に遮られ、上着がいらないほどポカポカとした暖かさ。でも、砂浜を歩いてやっぱり気になるのが、海岸に打ち上がっているごみの姿です。

 北風でごみが寄せて来ることの多い沖縄では、冬の南向きの海岸はごみが比較的少ないです。それでも、打ち上げられた海藻に混ざって、ごみはちゃんとあります。

 近年問題になっているマイクロプラスチックを確かめたくて、試しに海藻がたまっているあたりの砂をすくって、5ミリの目合いのふるいにかけてみました。ふるいに残った大きいものは手で選り分け、落ちた細かい砂はバットに受けて、そこに水を入れてかき回します。

 すると、砂やサンゴや貝殻は水に沈み、軽いものが浮き上がります。それが海藻だけなら良いのですが、残念ながらプラスチックや発泡スチロールのかけらも出てきます。

 砂に混ざって見えなくても、プラスチックのかけらはちゃんとそこにあるんですね。

カニ目線で見た漂着ごみ。
ふるいにかけて見つかった、砂の中のプラスチック片。

 プラスチックを劣化させる主な原因は、太陽の紫外線です。実は海を漂流している時よりも、打ち上がった方が劣化が速いと言われます。漂流中も紫外線を浴びますが、海水のおかげであまり温度が上がりません。しかし海岸に打ち上がると、夏の砂浜の温度は50℃にもなるでしょう。紫外線に高温が重なり、さらに波に転がされ、砂にもまれて表面が削られるので、打ち上がったごみはとても劣化が速いのです。

白鷺が魚を食べに来ました。やっぱりごみはなくさなきゃ!

 手で何回かすくっただけの砂からも、プラスチックの破片やロープの切れはし、繊維くずが出てきました。いくらビーチクリーンをしても、ここまでは拾いきれない小さなごみたち。ごみは、大きなかたまりのうちに拾っておくことがとても大事なんです。

 さて、繊維くずで思い当たるのは、私たちの衣類。寒い季節に出番の多いフリースやアクリル毛糸のセーター、洗濯するたびに繊維くずが出ますよね。洗濯機でキャッチしきれなかった細かいものは下水に流れ、下水処理をすり抜けるほど微細な繊維は海に出て行きます。そこまで考えるの?!と私も最初は思いましたが、化学繊維もプラスチック。どんなに細かくなっても、分解して消えることはないのです。そして、微細なものほど小さな生き物の体に入り込む恐れがあります。

 そう考えたら、おしゃれするときも、できるだけ自然素材が良いと思いませんか。私は普段から、服を買うときはタグを確認して、綿や麻、ウールを選びます。正直なところ、服を100%自然素材にするのはなかなか難しいですが、例えば80%以上は自然素材、といったマイルールを作ってファッションを見直してみるのはどうでしょう。ちなみにウールのセーターは縮みやすいので、私は最初から一回り大きいサイズを選びます。そうすれば、家で洗っても大丈夫。こんなことからも、海を大事にする暮らしの一歩につながれば嬉しいですね。

鹿谷麻夕(しかたに自然案内)

 しかたに・まゆ 東洋大、琉球大卒。東大大学院中退。東京で生まれ育ち、20代半ばで文系から理系に転向、沖縄に来てサンゴ礁を学ぶ。その後、しかたに自然案内を主宰し、県内で海の環境教育を行う。本と音楽と野良猫を好む。