炎のある暮らし 手作りの窯でピザ しかたにさんちの自然暮らし(13)


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 寒くなり、暖かいものが恋しい季節。囲炉裏端での忘年会のお誘いがあり、やんばるに行ってきました。地元の海に船を出し、若い人たちとダイビングを楽しみつつ、地域の自然の素晴らしさを発信し続けているSさんは、近ごろ熱帯果樹栽培にはまっています。庭の垣根にはパッションフルーツが元気に絡み、島バナナはもちろん、マンゴーやビワ、ローゼルやブルーバジル等々、庭全体にさまざまな植物が植えてあります。

 茂った枝の隙間を縫うように歩きながら、囲炉裏付きの東屋の下で宴会の準備。今日は一品持ち寄りで、うちは得意の地元野菜のキッシュを用意してきました。日暮れ時を過ぎて集まったメンバーは、ピザ生地をこねたり、沖縄そばのスープを持参して手打ちそばを始めたり。いろいろ美味しいものの準備が進むのを眺めているのは楽しいのですが、冬の夜はやっぱり寒い。こんな時は、焚き火にあたるのが一番です。

やんばるの土と木がつくりだす、暖かくて静かな贅沢時間。

 そこで、Sさんたちが近所の赤土をこねて手作りした窯に火を入れ、ゆらめく炎を眺めながら、ピザを焼く準備を手伝いました。

 窯に焚べる薪は隣に生えていた大きなアカギ。歳を重ねた立派な大木は、切り倒されても最近は使い道がなくて、粗大ゴミとして処理されることが多いそうです。大きければ運ぶだけでも手間がかかるし、処理費もたくさん払わなければなりません。それはあまりにもったいないので、手頃な長さに切り分けて、柔らかいうちに割って乾かしておいたのが今日の薪。

 小枝に火を灯し、アカギの薪を焚べて、団扇で風を送りながら窯を温めます。時折、窯の口からあふれ出る炎は、アカギの生まれ変わりのよう。

 炎を眺めている間に、隣ではピザのトッピングが進みます。

みんなそれぞれ、思い思いにトッピング。

 まず、少し発酵して柔らかくなった生地を平らに伸ばして、メリケン粉を振ったアルミホイルの上に広げます。そこに、トマトソースを塗り、ミニトマト、ベーコン、チーズ、庭のバジルで作った手作りバジルソースを、いい感じにのせたら準備は完了。

 次はいよいよ窯の出番です。

 最初は火加減がわからず、燠火(おきび)が少なくて焼けるまで時間がかかり、焼け具合もいまひとつ。

ピザ焼き師範代が慣れた手つきで焼き方を実演。窯の口には焼き芋をセット。

 するとSさんは、「火遊びが足らないな~」と言いつつ薪をどんどん追加してパワーアップ。炎は元気を取り戻し、ピザは数十秒でふんわりと膨らみ、表面はカリッといい焼き色に。チーズの焼けるいい香りが辺りに漂うようになりました。

 あっという間に焼けるので、焦げ目がついたら一度取り出して向きを変え、あと10秒ほど焼いたら、はい!できあがり。熱々を切り分けて、みんなで美味しくいただきました。

 身近にある自然のものを利用して、手間と時間をかけた食べ物は、贅沢で、やっぱり美味しい! 電気やガスも便利だけれど、時には木の力を借りるのも、いいものですね。ピザ焼き窯を作るのは大きくて大変そうだけれど、お茶が沸かせる程度の小さな囲炉裏なら、なんとか作れないかな~。でも、ピザ窯もあるといいな~。

鹿谷法一(しかたに自然案内)

 しかたに・のりかず 琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島生まれ。海に憧れて沖縄に来て、もう30年以上。専門は甲殻類。生物の形と機能の関係に興味がある。趣味は本とパソコンとバイクいじり。植物を育てるのも好き。