意思表示を続けるために やんばるからの手紙(24)

  • 北部
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ムギちゃん、この子たちの心もぎゅっとつかんでおりました

 辺野古裁判の結果やオスプレイの相次ぐ事故など、いろいろと気のめいることだらけで、正直、どよーんとした無力感にさいなまれている。

 先週、那覇の県庁前で開催された「高江音楽祭」。東村高江住民の石原岳さんが主催のこの音楽祭は、これまで高江の森で開かれていたけれど(東京開催もあった)、こうして那覇のど真ん中でやるに至るまでには、きっといろいろな気持ちが交錯したと思う。

 当日参加表明したミュージシャンの中には、七尾旅人さんや青葉市子さん、ピラルク、そして猫のムギちゃんらがいた。「猫?」とびっくりすることなかれ。白地に黒のブチがある猫の着ぐるみで、木琴を演奏しながら歌を歌う。トークも実に軽妙で「政治に音楽を持ち込むな!とかいう人がいるけどさ、政治とか宗教とかを音楽にできなかったら、クリスマスソングとかどうなっちゃうんだろうね!」と人懐こい声で突っ込み入れつつノリノリで歌って踊る。「ムギはね、政治を歌にしまっす!」となかなか芯のしっかりした猫なのだ。

 こんなムギちゃんの登場に、子どもはもちろん大人までぐいぐい引き込まれた。一方、青葉市子さんは、小柄な身体にジュニア用のギターを抱え、とろけそうな美しい旋律を奏でながら小鳥のような声で歌う。「私は3年前に高江を訪れて…。実は、思っていることを言葉にするのは苦手なんですが、(国のやり方が)気持ちとそぐわないなということは分かっていて」。とつとつと話す彼女だけれど、日帰りでこの音楽祭のために来沖した、というだけで十分に伝わる。

 七尾旅人さんは、何度も何度も高江に通い、自身のライブでも積極的に問題提議を重ねている。彼によって「高江を知った」という人も少なくない。彼の演奏中、右翼の車だろうか音楽を遮るように何度も何度も大音量で例の演説を流していた。

 フロントガラスには星条旗と日の丸。県庁前の交差点は高江の森の中とは違い、行き交う人々や車といったさまざまなレイヤーで暮らす人たちを可視化できる。これが私たちの生きている社会の一片でもあって、その中には全く意見が違う人もいる。でも、何らかの意思表明をし続けていかないと、冷たい泥にゆっくり沈んでいくような気がする。猫でさえ、自分の気持ちを表すんだから、ヨヨヨとめいっている場合じゃないな。

(元フードコーディネーター)

(2016年12月27日 琉球新報掲載)



根本きこさん

根本きこ(ねもと・きこ)

  1974年生まれ。2003年逗子市に「coya」を開業。カフェブームの先駆けに。東日本大震災を機に2011年3月閉店し、沖縄県東村に夫と子ども2人で移住。現在は名護市に暮らす。2013年4月から琉球新報でコラム「やんばるからの手紙」を好評連載中。雑誌にエッセーを連載、著書「島りょうり 島くらし」「おとな時間」など多数ある。




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