おせちの仕込みの匂い やんばるからの手紙(25)

  • 北部
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おせちを詰めるのもまた、楽しいものですよね

 この原稿を書きながら、おせちの黒豆と金柑(きんかん)の蜜煮をコトコト煮ている。子どもたちは冬休み中で、午前9時を回ったというのに、いまだ一向に起きる気配はない。やたらいきのいい1歳児と二人、やれおむつ交換だおっぱいだと振り回されながら、残りわずかな今年を過ごしている。

 黒豆は、友人から教えてもらった熱々の煮汁に黒豆を入れて味を煮含めるやり方を実践しているが、今年は鋳物の鍋で煮ることにした。普通は黒色を鮮やかにするためにさびたくぎなどを入れるけど、鋳物鍋はその代わりというもの。落としぶたをしてから約8時間煮る。火を落として冷まし、また火にかける。

 すると2、3日後にはふっくらツヤツヤの豆に出合える、はず。金柑は北部でも見るようになったので、県産を使った。大きさも色もまちまちで、いかにも庭先で自然に実ったという感じがいい。皮にフォークで2、3カ所穴を開け、熱湯を注ぎ一晩置く。こうすると苦味が和らぐ。

 次の日、ざるにあげて、みりんと砂糖の甘い蜜で煮ていく。台湾のお土産でもらったジャスミンに似た香りの花茶があったので、それも入れてみた。小ぶりの土鍋で静かにふつふつと煮ていく。

 おや、台所から匂いで目が覚めたのか、「おなかすいたー」と子どもたちが冬眠から覚めた熊みたいに布団からはい出してきた。

 おせちは年々マイナーチェンジしている。なんせ1年に1回の仕込みなので、30歳から作り始めて、まだ十何回しか試せていない。ブランクも長いし、メモも取らないしで出たとこ勝負、というバクチ感すらある(まぁ、おせちをバクチ呼ばわりするとはなんて乱暴な例えですこと)。

 なます、田作り、伊達巻、ごぼう巻き、ドゥルワカシー、煮しめ、酢蓮(すばす)、栗の渋皮煮、紅芋きんとん、ローストビーフ、鶏ハム、マチの昆布しめ、車海老の塩ゆで、関東風のお雑煮、イナムドゥチ。このように、本土と沖縄の折衷おせちになっている。お餅は年末にみんなで牧場でついたもの。

 おせちを囲んでの新しい年の始まり。ずっと続けていきたい暦の行事なのだ。

(元フードコーディネーター)

(2017年1月10日 琉球新報掲載)



根本きこさん

根本きこ(ねもと・きこ)

  1974年生まれ。2003年逗子市に「coya」を開業。カフェブームの先駆けに。東日本大震災を機に2011年3月閉店し、沖縄県東村に夫と子ども2人で移住。現在は名護市に暮らす。2013年4月から琉球新報でコラム「やんばるからの手紙」を好評連載中。雑誌にエッセーを連載、著書「島りょうり 島くらし」「おとな時間」など多数ある。




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