「口福」お裾分け ムジ汁

  • 中部
このエントリーをはてなブックマークに追加

 県内有数のターンム(田芋)産地の宜野湾市大山で暮らす儀間ヨシ子さん(71)宅の食卓には、頻繁にターンム料理が登場する。中でも、ムジ(ターンムの茎)がたっぷり入ったムジ汁は冬の定番料理だ。


完成したムジ汁をよそう儀間ヨシ子さん。「寒い時にはショウガをたっぷり入れて風邪予防」と話した=宜野湾市大山の儀間さん宅

 あらかじめ、とろけるほど柔らかくムジをゆでることがおいしさの秘けつ。あごだしと手作りみそで仕上げるのが、ヨシ子さんのオリジナルだ。


 ドゥルワカシー(田芋の煮物)にもムジを加える。濃厚な味のターンムに、とろけたムジ、キクラゲのこりこりとした食感が絶妙なおいしさを生む。

 「大山のターンムは甘くておいしい。水がいいからでしょうね」。おっとりとした口調とは裏腹に、料理の手際はスピーディーだ。ムジを大鍋でゆで、豚肉を無水鍋で蒸す間、2口のコンロでは足りないからと、カセットコンロを取り出して田芋の空揚げに絡めるたれを作った。

 ハンダマで色づけした赤飯を含め、1時間ほどで5品を完成させた。さながら「田芋御膳(ごぜん)」。さまざまに調理された縁起物のターンムをじっくりと味わう。おいしいものを食べると、どうして人はこんなにも幸せな気持ちになるのだろう。


 ヨシ子さんは7人きょうだいの末っ子。終戦から3カ月後の1945年9月、大山に生まれた。沖縄戦は多くの乳幼児の命を奪ったが、ヨシ子さんは母親のおなかの中で守り抜かれた。「母は具志川の壕に隠れていたらしい。きょうだいも全員無事だった。当時のことは詳しくは聞かされていないけど、母に感謝だねぇ」と振り返る。

 幼少の頃から畑仕事や畜産で忙しい両親を手伝うため、台所に立ってきた。当時から、地元の特産のターンムは最も身近な食材だった。「大人の人たちは、ターンムを日干しして炒めて食べていたんだって。私はその味は知らないけど、母の見よう見まねで、ターンムジューシーやムジ汁はよく作りました」

 24歳で真昌さん(78)と結婚し、2男2女を育て上げた。28歳で専業主婦になってからは、みそ以外にも漬物やつくだ煮など自家製にこだわってきた。「手作りが健康な体を作ると思ってね。石垣の孫が、私の造ったみそじゃないとみそ汁がおいしくないって言ってくれているみたい。急いで送りました」と目尻を下げる。


宜野湾市特産の田芋や田芋の茎を使ったムジ汁(手前)とドゥルワカシー(右奥)、ご飯は儀間さん考案のハンダマ赤飯

 来客がある時は、事前にターンムもちやパイを作る。孫には洗い物をさせ、ムーチー作りを手伝わせることもある。積極的に台所に立たせることで「作り、食べる」楽しみを培いたいと考えているからだ。ヨシ子さんが1日の大半を過ごす台所には、20年来使うオーブンや、毎食の料理に活躍する無水鍋など大事に使い込んだ調理器具がそろう。

 数日前、ヨシ子さんのめいっ子に赤ちゃんが生まれた。「縁起物のターンム料理を作って差し入れしなくちゃ」と笑う。ヨシ子さんから、めいっ子に「口福」のお裾分けだ。

文・新垣梨沙
写真・大城直也



2月6日「ターウムの日」

 ムジは那覇市の第一牧志公設市場内の城間田芋店、南城市の軽便駅かりゆし市、宜野湾ファーマーズマーケットはごろも市場などで手に入る。

 正月や旧盆の時期に店先に並ぶことが多いが、城間田芋店では4、5月に取り扱う量が増えるという。

 はごろも市場では、2月6日の「ターウムの日」にちなみ、同月4、5日にターンムを安売りし、無料でムジ汁を振る舞う。




(2017年1月24日 琉球新報掲載)



前の記事【動画】トランプ先輩~!木曜のま...
次の記事堤真一 スタッフ爆笑させた小泉今...