台所から自分を省みると やんばるからの手紙(30)

  • 北部
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食欲旺盛なちびっ子たち

 ようやく冬らしい気温に見舞われた週末。ベージュのセーターの上に同色のカーディガンをはおり、浅葱(あさぎ)色のショールを巻いて、散歩がてら近所のスーパーマーケットまで買い出しに行った。坂道を上り下りしているうちに、うっすら汗ばんできた。ショールをほどき、バッグに入れる。散歩道は赤やフクシアピンクのブーゲンビリアの花が盛りで、それを脇目でさっと見る。歩く速度を変えずにどんどん進むとやがて目当ての店に着いた。

 この時期の沖縄の野菜は実ににぎやか。お値打ちの傷がついた大根と葉がわっさわっさしたセロリ、小ぶりのキャベツ、「自然栽培」と表示してあるパクチーなどをカゴに入れた。魚コーナーではミジュンやカタカシ、タマンに胸が躍る。長崎産の白イカも安くなってるし、鹿児島産の天然ブリの切り身もある。迷いに迷って、今回は白イカにした。

 他にはわが家のデイリーフーズでもある豆腐、豆乳、納豆も買って、夕方恒例の並ぶレジを無言で待ち、いざ、わっせわっせと荷物を抱えて帰路をたどる。

 「セロリはすぐに葉っぱを取って、その葉と葱(ねぎ)の青い部分でスープストックを作る」「パクチーは根っこごと刻んで島唐辛子とにんにくと魚醤(ぎょしょう)に漬け込む」「大根はごく薄い輪切りに切って塩もみしておく」

 「白イカは今夜はトマトとセロリ、にんにくで炒めて、イカ墨は後でリゾットにでもしよう」「キャベツは4等分にしてひとつを蒸してオリーブオイルと塩で食べよう」

 そんなことを考えながら、ずんずん歩いた。われながら食べ物のことばかりであきれてしまうけど、「何を食べるか」ということは私にとって最重要項目なのだ。それには気温が関係し、家族の体調も関わり、財布の予算の限りもある。そしてみんなでそろってごはんを食べるという、ひと昔前までは当たり前だったことが今では貴重なことになりさえもする。

 台所から社会をのぞくと、「いつの間にか」ライフスタイルに影響を及ぼしている事象がある。台所を担う1人として、一体何ができるのかと問えば、やはり日々のごはんをせっせと作ることしかできなく、時にそれだけでいいのかと悩むときがある。

(元フードコーディネーター)
(2017年2月14日 琉球新報掲載)



根本きこさん

根本きこ(ねもと・きこ)

  1974年生まれ。2003年逗子市に「coya」を開業。カフェブームの先駆けに。東日本大震災を機に2011年3月閉店し、沖縄県東村に夫と子ども2人で移住。現在は名護市に暮らす。2013年4月から琉球新報でコラム「やんばるからの手紙」を好評連載中。雑誌にエッセーを連載、著書「島りょうり 島くらし」「おとな時間」など多数ある。




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