「沖縄、シマで音楽映画『島々清しゃ』ができるまで」 著者・磯田健一郎さんに聞く

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◆映画制作の臨場感描く


「沖縄、シマで音楽映画 『島々清しゃ』ができるまで」を執筆した磯田健一郎さん

 那覇市の桜坂劇場で上映中の映画「島々清(かい)しゃ」で脚本と音楽監督を務めた磯田健一郎さんが、映画の制作過程をつづった「沖縄、シマで音楽映画 『島々清しゃ』ができるまで」(編集室屋上・1728円)を刊行した。映画は慶留間島を中心にオール沖縄ロケ。故新藤兼人監督の孫・新藤風監督が11年ぶりにメガホンをとり、女優の安藤サクラと注目の子役・伊東蒼が主演した話題作だ。

 初めて映画脚本を手掛けた磯田さんが書き下ろした一冊からは、映画づくりの臨場感と疾走感が伝わってくる。

 磯田さんは90年代初めに久米島を訪れて以来、沖縄とのゆかりが深い。嘉手苅林昌、山里勇吉、国吉源次らのアルバム制作に携わり、中江裕司監督作品「ナビィの恋」「ホテル・ハイビスカス」では音楽監督を務めた。今回の題材になった「島々清しゃ」の作曲者・普久原恒勇とも長く親交があり、編者として「芭蕉布 普久原恒勇が語る沖縄・島の音と光」(ボーダーインク)も出した。

 「沖縄、シマで-」で描かれるのは、映画会社に企画を持ち込んでから脚本を書くことになる経緯、監督の決定、ロケ地選びの紆余(うよ)曲折、オーディションでの伊東蒼との衝撃の出会い、吹奏楽部を演じる子どもたちとの作品作りなど。一定の熱を保ちつつ、まるで「日々スケ」(日ごとの撮影スケジュール)をたどる日誌のような筆致も特徴的だ。

 「もともと舞台裏をさらすのは大嫌い。映画館に行く前に本を読めば分かっちゃう、というネタバレは書きたくなかった。沖縄の人が興味を持って読む部分もあるし、音楽好きで映画音楽がどうやって作られるか読みたい人もいる。いろんな読み方ができると思うし、どう読んでもらってもいいと思っています」

 版元の「編集室 屋上」を一人で運営する林さやかさんの「うちで出す本だと思います」との一言が、出版のきっかけだ。「こんな映画を撮るよ、って言ったときの彼女の反応の面白さが動機になった。そして、『勢いで書き飛ばす』ということは2人とも一致した。熟考するとリズムがなくなり臨場感が出ないから」

 体調が急激に悪化していた頃「遺書」として企画メモを書き始め、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるバセドー病を抱えながら映画制作に打ち込んだ。「沖縄で先行試写会をやったとき、上映後に(観客の一人が)僕の所へ来て泣きながら『ありがとう』と握手をした。それだけで僕は満足。演出や技術的に足りない部分はあるかもしれないけれど、あの握手のぬくもりが全て。批評が気にならない仕事というのは初めてかもしれない」

 長く沖縄と関わり、この地から受け取ったものは大きいという。「“青臭く”仕事をしていたいと思っている。これは普久原(恒勇)さんや登川(誠仁)さんたちから学んだことでもある。自分が信じているこだわりを続ける“青臭さ”を、例え周囲に笑われても受け継ぎたいと思っています」

(大城周子)

(2017年2月19日 琉球新報掲載)



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