ゆったり アートの世界 世界一小さな現代美術館、大田和人さん

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キャンプタルガニーで、田園詩人と呼ばれる陶淵明の本を読みながら過ごす主の大田和人さん=糸満市米須

 サトウキビ畑や民家が連なる糸満市米須に、世界一小さな現代美術館キャンプタルガニーがある。赤瓦にシーサーが乗る木造平屋と、白コンクリートの展示室がつながり、庭に石でできた彫刻などが飾られている。

 平屋は和室や大正ロマン風の部屋に、絵画や素焼きなどが飾られ、廊下に200キロ以上あるネコの彫刻が鎮座している。美術館の主(ぬーし)で、カジトゥー・バルトロメオ・タルガニーこと大田和人さん(70)=那覇市=が笑顔で出迎え、壁一面が真っ赤な展示室の書斎に案内される。時間がゆったり流れる場所で、来場者の平均滞在時間は約2時間という。


展示室の壁は、一面真っ赤に塗られ、戦争の地を表している

木造平屋には、書やタカエズさんの素焼きが展示される。大田さんの飼い犬クロチェも人気だ

 カジトゥーは名でバルトロメオは洗礼名、タルガニーは気楽な沖縄芝居の登場人物から。美術館名は「人類は地球の歴史に比べれば一瞬だけキャンプしているようなもの」という意味を込めた。大田さんいわく「タルガニーがキャンプしている所」だ。

 那覇市職員を35年間勤め2005年に美術館を開館した。1946年に熊本県で生まれたが、本籍は糸満市米須。76年におじが所有する建物の2階部分を譲り受けていた。後にキャンプタルガニーの一部に生まれ変わった。

 美術館に関わったきっかけは90年ごろ。那覇市から出向したパレットくもじで文化事業に携わる中、県系2世で現代陶芸彫刻家のタカエズ・トシコさん(享年88)と出会った体験が大きい。タカエズさんの「アートなき人生は無味乾燥」という言葉や飾らない生き方に影響を受けた。


 国公立の美術館は全国に5校。各地の美術館長らと出会い、沖縄県内に県立芸術大学があることに思いをはせた。「県民として沖縄の新しい芸術の動きに参加したい」という思いも背中を押した。

 建築費用は退職金を担保に借金し、親の相続金や貯金から調達するなどした。「来たい人が費用負担なしに見るのが大事だ」として入場無料。若手芸術家の育成で、展示の場としても提供している。

 展示室の壁が赤いのは、沖縄戦で多くの人が亡くなった地に住んでいるという意識を持つためだ。


トイレの壁も赤で、室内はロダンの「考える人」のレプリカなどが置かれる

 「戦争ほど愚かなものはなく、消し去ってはいけない。今の時代の人が次の世代まで伝える義務がある」と強調する。

 美術館には説明板がない。「子どものように、真っさらな状態で作品を見てほしい」と願う。今後は「身構えてやるつもりはない。作品を見て心豊かになってほしい」。のんびり構えた大田さんのキャンプは続く。

 キャンプタルガニーの住所は糸満市米須304。土日は基本開き、午前11時~夕暮れ。平日は予約があれば開ける。(電話)090(5380)0055。


文と写真・金良孝矢
(2017年2月28日 琉球新報掲載)



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