こだわり凝縮 香り立つ 県産紅茶

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 深く鮮やかな色合いに、湯気と共に立ち上る香り。沖縄の大地に根を張り、強い日差しを浴びて育った茶葉から作られる県産紅茶は、全国の審査会で上位に入るなどその地位を確かなものにしつつある。緑茶の原料として古くから栽培されてきた「茶」は、発酵という過程を経て紅茶に生まれ変わり、新たな魅力を発信している。


3種類の茶葉から抽出した紅茶を味見し、風味や好みで採点する人たち=名護市名護の名護城公園ビジターセンター

 新芽が伸びるこの時期、茶畑は柔らかな緑色に包まれ、一番茶の収穫が始まる。だが緑茶価格は全国的に低迷し、県内でも茶畑は減り続けている。そこで注目されたのが、同じ茶葉の加工方法を変えた紅茶だ。

 県農業研究センター名護支所は栽培や品種の選定、加工方法から風味や味の分析まで、幅広い方面から県産紅茶の開発を支える。

 日差しに温かさを感じるようになった2月中旬、名護城公園で研究内容を一般に伝える講座があった。一連の工程を説明した後はお楽しみの試飲会。

「香りは複雑だが青草、薫製、はちみつ、ミントの要素に分けると分かりやすい」。講師は同センター名護支所の後藤健志さん。アドバイスを受けて参加者は県産の3種類を飲み比べ「草の匂いがする」「いろいろな味があるね」と楽しんだ。


無農薬にこだわった県産紅茶。果物のような甘い香りが漂う=今帰仁村今泊の「やんばる紅茶Tearoom HUALI」

 大切に育まれた県産紅茶の現場を訪ねた。今帰仁村今泊の波打ち際にほど近い「やんばる紅茶Tearoom HUALI」。大城浩樹さん(43)と妻・純子さん(47)は茶葉の栽培から手掛け、紅茶の入れ方にこだわる。県外産を混ぜない100%の県産紅茶を提供している。

 大城さん夫婦は8年前「沖縄流の紅茶を作りたい」と国頭村で茶の栽培を始めた。「口に入るものは安全に」と無農薬で育て、機械を使えば10分で終わる茶摘みも手作業で1日がかりだ。

 純子さんは「手摘みだと冷めた時に甘みが増し、渋みが口に残らない」と手間を惜しまない。

 ポットで茶葉を蒸らす時間、カップに注ぐ時のポットの高さ。浩樹さんは工夫を重ねて、味や香りを最大限に引き出す独自の入れ方を編み出した。

「丹精込めて作った紅茶を存分に味わってほしい」。白い砂浜を望むカウンターでポットを傾けると、マンゴーのような甘い香りがただよった。


しっかり管理された茶畑に立つ比嘉猛さん。紅茶の品質に自信を持っている=名護市伊差川

 その大城さん夫妻が師と仰ぐのが金川製茶(名護市)の比嘉猛さん(63)だ。長く茶を栽培し、緑茶を生産していたが、約20年前に紅茶の加工を始め、紅茶用に品種を増やして味を追求してきた。

 比嘉さんは無農薬・有機栽培の先駆者でもある。名護市伊差川の畑は枯れた茶葉やススキで覆われ地面が見えないほど。「ミミズが枯れ草を分解して土を豊かにする。自然に近い状態で栽培することで病気に負けない強さが育つ」。マット状に固まった敷き草をめくって自慢の土を見せた。

 比嘉さんの紅茶は「HUALI」や県内の専門店、インターネットなどで販売されている。県内外からの注文が多く品薄状態だが「大量生産で品質を落としたくない」と生産量はあえて増やさない。

 比嘉さんは「おいしかったと手紙をもらったときが一番うれしい」と誇らしげに語った。

文・塚崎昇平、黒田華
写真・又吉康秀、具志堅千恵子



沖縄のブランドに 後藤健志さん 県農業研究センター名護支所・紅茶担当


 緑茶は3~4月に収穫する一番茶が最高品質とされ、その時期以外は価格が下がる。茶葉は発酵度合いによって緑茶、ウーロン茶、紅茶に加工できる。農家の安定経営を目指して県農業研究センターでは年間を通して価値がつく紅茶の研究開発を続けている。

 沖縄は紫外線が強いため紅茶の品質を上げるカテキンの含有量が多く、茶葉の収穫回数も多い。紅茶は風味や味の嗜好(しこう)が幅広く、トロピカルフルーツと組み合わせたフレーバーティーの可能性も広がる。沖縄は緑茶より紅茶の栽培・生産に向いている。

 当初、従来の茶品種は沖縄の気候に合わず、収量が少ないなどの課題もあったが、県内に適応した品種の選出が進んだ。生産者はモチベーションも高く、この数年で品質は全国レベルに達した。

 紅茶の加工機械は緑茶用のものを転用できるため初期投資も少なくて済み、経営モデルを作れば新規就農もやりやすい。紅茶を沖縄のブランド品目として安定させたい。



(2017年3月21日 琉球新報掲載)



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