忙しい朝に「ほっ」 ンスナバーのンブシー

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 2月から3月にかけて、農業が盛んな糸満市の直売店の陳列棚にンスナバー(和名フダンソウ)が並ぶ。扇形の大きな葉っぱと筋の通った太い芯が特徴の葉野菜だ。糸満市阿波根に住む仲村シズさん(70)はこの時期、ンスナバーを使ったンブシー(煮浸し)やあえ物を好んで作る。

 栄養が豊富で、ゆでて冷凍保存すれば、あえ物や汁物にも使え、常備菜として優れているという。ンブシーの調理は、島豆腐とツナ缶、みそ、かつお節を使う。ンスナバーを葉と茎に洗って分け、沸騰したら茎から鍋に入れる。火が通ったら葉を加えさっとゆでる。ゆでる時は塩か重曹をひとつまみ入れ、あく抜きをするのがポイントだ。


調理時間は10分足らずで孫たちも大好き。栄養たっぷりで身も心も温かくなるンスナバーのンブシーを汁わんによそう仲村シズさん=23日、糸満市阿波根

 続いて、カツオのだし汁に、ゆでたンスナバーと島豆腐を加える。豆腐は切らず、手でもみほぐしながらそっと入れていく。みそで味を調えたら出来上がり。調理時間は10分足らずだ。「忙しい朝や昼食時によく作る。だし汁を多めに取ると、みそ汁代わりにもなる」と仲村さんは笑顔を浮かべる。


 温かいンブシーは、葉っぱのしゃきしゃきとした歯ごたえを島豆腐が補うような柔らかな食感が魅力だ。みその味が妙味を醸す。ンスナバーと島豆腐をピーナツバターと酢、白みそ、砂糖でなじませる。あえ物も作る。食べる前に、ゆずの皮を入れると「味に個性が出る」。

 シズさんは終戦翌年の1946年、糸満市糸満で生まれた。6人きょうだいの長女で、幼いころから母を助け台所に立った。


 「年中行事の時、ンスナバーのンブシーにムジ(田芋の茎)と三枚肉を加えた献立をご先祖さまにお供えした。おいしくてね。台所仕事をしていた人たちもンブシーを食べるのを心待ちにしていた」。楽しい記憶と共に懐かしい味を受け継いできた。

 70年に那覇市出身の真一さん(72)と結婚し、義母からクーブイリチーや中身汁など伝統的な沖縄料理の作り方を教わった。真一さんの実家は親戚が多く、正月や旧盆の時は30~50人も集まる。多くの客人をもてなすことで、献立の幅が広がった。


ンブシーを中心に、豆ご飯と紫キャベツの酢漬け、紅イモのイモクジ天ぷらなどが並んだ昼食

 シズさん宅を訪ねた3月下旬。お昼ご飯の食卓に並んだのはンブシーやあえ物のほか、紫キャベツのピクルスに、クチナシとグリーンピースで色付けしたうぐいす色のごはん。デザートには紅イモのイモクジ天ぷらが添えられ、さながら“野菜御膳”。

 陶芸が趣味のシズさんは、自前の器に料理を盛る。庭に咲き誇るレモングラス、ヨモギなどのハーブを乾燥させお茶にして味わう。

 4人の孫育てに追われている。クリスマスにはローストチキンを焼き、手作りのケーキで孫たちを喜ばせた。おばあちゃんの味に慣れ親しんだ孫からは「外食よりもおばあちゃんの家で食べたい」というリクエストが寄せられる。

 陶芸サークルの日は毎回、手製のピクルスを持って行き友人に振る舞う。「喜ぶ顔を想像しながら作るのが楽しくて。自己満足ですが」と謙遜し「もてなすことが好き」と朗らかに笑った。

文・高江洲洋子
写真・大城直也



ンスナバー

 和名は「フダンソウ」。収穫期は12月~5月ごろ。暑さに強く、繁殖しやすいため、沖縄では終戦後の野菜が少なかった時期に食されていた。ビタミンAやB2などビタミン類、カリウム、カルシウム、鉄分が豊富に含まれている。

 ファーマーズいとまんでは最近、フダンソウの一種で茎の部分が赤や黄色、紅色をした「スイスチャード」が人気で、飲食店関係者がよく買い求めるという。




(2017年3月28日 琉球新報掲載)



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