足元の光に気付いて 宮里・モラノ・ジュンさん

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 しまくとぅばの継承、地域の若手リーダー育成、英会話教室などの教育プログラムを手掛ける沖縄ハンズオンNPO。その地域プログラムリーダーを務めているのが宮里・モラノ・ジュンさん(27)だ。沖縄の風俗や歴史といった「足元」にこだわった人材育成に取り組む理由を聞いた。


「沖縄のために自分のできることを生かしていきたい」と語る川村健一さん=北谷町障がい者地域活動支援センターたんぽぽ

―沖縄のアイデンティティー探しと文化継承のため米ハワイに行ったばかりだ。

 「3月に10日間、ハンズオンに通う生徒・学生8人を含む15人でハワイに行った。県系人ら約200人が来場した会議に参加した。現地でのハワイ語復興の取り組みを知るため、ハワイ語イマージョンスクールも訪問した。会議ではしまくとぅばの劇を披露した。4世、5世のために英語の字幕も表示し、内容には高い評価をもらった。(薩摩島津氏への忠誠を拒否して処刑された)謝名親方の人生、人類館事件、方言札など歴史を織り交ぜた内容で、ウチナーンチュのアイデンティティーを共に確認した」

―なぜハワイで。

「移民1世の人たちは沖縄の家族を助けるために海外へ渡った。現地に御拝所も造るなど沖縄の文化を守りながら家族に仕送りをし、戦争で焦土と化した沖縄を物心共に支援した。外にいるからこそ沖縄に強い思い入れを持ってきたハワイのウチナーンチュから学ぶためだ」

―自身がアイデンティティーにこだわる契機は。

 「私は父が米国人だ。ただ父は17歳から沖縄に住んでいたため、日本語しか話さなかった。生まれ育った沖縄のことを深く知っているわけでもなかった。フィリピンにいる祖母に沖縄のことを聞かれてもほとんど答えられなかった」

 「中学3年の時に英語を勉強する目的でハンズオンに通った。その時に出会ったのが安慶名達也理事長だった。そこでしまくとぅばを習い、体験学習で御嶽(うたき)なども訪ねる中で、学校でも習ったことのない沖縄を知り、沖縄戦など歴史の出来事にも興味を抱くようになった。父が沖縄に来たのは米軍人だった祖父とおじの駐留がきっかけだった。自分に外国人の血が入っているのも沖縄戦の歴史があるからだ。20歳の時には沖縄市の平和大使にもなった」

―そのうち自分がハンズオンの運営に携わる側に。

 「19歳の時にジュニアリーダー育成者として中高生のボランティア活動のファシリテーターをしたり、しまくとぅばの紙芝居などを作ったりした。紙芝居の内容は口承の民話が多い。沖縄の各地に伝わる民話を15話くらいは手掛けた。民話には隠されたメッセージが多い。それを子どもたちと話し合い、気付きの場にしている」

 「学校の席次や受験勉強ばかり考えるのでなく、ウチナーンチュとしての豊かな人格形成を目指している。面白いことに、さまざまな体験学習を経験している子どもこそ学校の席次も伸びている。足元の光に気付くことで、学習意欲も湧くのかもしれない」

―どういう人材に育ってほしいのか。

 「誰のため、何のために学ぶのかを考える人に育ってほしい。目まぐるしく変わる時代に対応できるような人材が大切だ。その中で自らがどうやって時代を動かしていくか。『じゃーはねきやー(場を盛り上げる人)』の精神を持った人材に育ってほしい」

文と写真・島袋良太



~ プロフィル ~

 みやざと・もらの・じゅん 沖縄ハンズオンNPO地域プログラムコーディネーター。沖縄市子ども会育成連絡協議会副会長。1990年1月沖縄市生まれ、幼少期を北谷で過ごす。コザ高校卒業。在学中に沖縄市子どもジュニアリーダークラブ会長を務め、高校卒業後に育成者としても活動した。20歳の頃に沖縄市平和大使として広島に派遣される。現在、ウチナーンチュとしてのアイデンティティーを大切に子ども会やハンズオンユース倶楽部の中高生としまくとぅばを勉強中。好きな言葉は、「人生なまがるサラバンジー」。



― 編集後記 ―

 宮里さんに会ったのは4年前。沖縄市で開催された「しまくとぅば紙芝居カーニバル」を取材した時だ。そこで見たのは小中高生が「渡嘉敷ぺーくー」や「屋良ムルチ」など地域の言い伝えや物語を手作りの紙芝居で発表する姿だった。

 その後、子どもたちは英語の紙芝居も読み始めた。「こんなに素晴らしい言葉、物語が地域にあることを知ってほしい。自分の地域を英語で語ることができる文化人に育ってほしい」というのが当時の宮里さんの言葉。私はその日、自分の出身地に伝わる民話を子どもたちの紙芝居で教わった。

 大国のはざまで翻弄(ほんろう)されてきた沖縄は今、重大な岐路を迎えている。地に足を付け、ウチナーの未来を切り開く本当の「国際人」を育てたいという宮里さんの思いを改めて感じた。

(島袋)

(2017年4月4日 琉球新報掲載)



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