おいしい牧草、できますように やんばるからの手紙(44)

  • 北部
このエントリーをはてなブックマークに追加
質のいい教育を享受するには

 わが家の2人の子どもたちは公立の学校になじめないという理由から、平日の週3日は東村にある馬の牧場に、あとの2日はホームスクーリングで過ごしている。その牧場が夏から値上げをするという。理由は馬の餌代に月数十万円かかっており、実はその分が赤字になっているとか。「ならばいっそ、餌である牧草を作れば値上げをまぬがれるんじゃない?」。それはあまりにも素朴な考えだけど、親としては必死だ。仕事の都合をつけ、早速有志たちで集まって、牧草作りに取り掛かった。

 今期から収穫を望むなら、せめて梅雨前には作業を済ませないとならないことが分かり、てんやわんや急ピッチであらゆる人脈を探り、なんとかユンボ(パワーショベル)とトラクターを手配した。

 まずは、もともと牧場が借りている1000坪の農地(という名の荒れ地)の開墾作業。ユンボで地面の勾配を整え、ぬかるんだ部分に土をかぶせていく。木麻黄の木を切り倒し、のちにまきになるようにチェーンソーでカットする。

 購入した元肥の山を一輪車で運び、土地全体に点状に散りばめていく。ここに牧草の苗をかぶせ、さらに上から元肥をかぶせる。最後にトラクターで全面掘り起こし、草が生えやすいようにする。もちろん誰もこれまで牧草なんて作ったことはない。けれどこの活動の一部始終を、牧草作りの経験者であるK氏が見守ってくれたおかげで、無事に梅雨前に作業は終わった。

 さて、わが家のように公教育を受けていない子どもの中には、なにかしらの居場所に通う子も多い。しかし、設備などの問題から一切の補助もない状態で運営しているところも多く、公教育以外の「質のいい教育を受けさせたい」と思ったら、目が飛び出るほどの金額を覚悟しなければならない。

 それは私立といった場合も同じだろうが、しかし考えてみると、お金がないと「質のいい教育」が受けられないってなんだかおかしい。このまま「教育とはお金がかかるもの」という前提の世の中で、一体誰が「お金がなくとも質のいい教育を受けるにはどうしたらいいのだろう」と、思考するのだろう。まさに教育と貧困は密接につながっている。だからこそ、「お金」で簡単に解決してはならない、と感じている。

(元フードコーディネーター)
(2017年5月23日 琉球新報掲載)



根本きこさん

根本きこ(ねもと・きこ)

  1974年生まれ。2003年逗子市に「coya」を開業。カフェブームの先駆けに。東日本大震災を機に2011年3月閉店し、沖縄県東村に夫と子ども2人で移住。現在は名護市に暮らす。2013年4月から琉球新報でコラム「やんばるからの手紙」を好評連載中。雑誌にエッセーを連載、著書「島りょうり 島くらし」「おとな時間」など多数ある。




前の記事菊川怜 なぜ夫の“婚外子報道”を...
次の記事沖縄の海を楽しむ! おすすめの自...