平和は築いていくもの 100cmの視界から―あまはいくまはい―(2)

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 戦後72年目、もうすぐ慰霊の日です。平和について考えるとき、私は新婚旅行で訪れた(ナチス占領下のポーランドで大量虐殺の舞台となった)アウシュビッツ強制収容所の公式ガイド・中谷剛さんの言葉を思います。中谷さんは「この虐殺の歴史と同じ構造は、いまの私たちのまわりにもたくさんある」と繰り返していました。


アウシュビッツでガイドの中谷剛さん(右)と

 大勢のユダヤ人が残酷に殺されたホロコースト(大量虐殺)。殺害された人々の所持品、衣類、金歯などは工場に送られ、再利用されました。髪の毛は絨毯(じゅうたん)の材料にまでなったそうです。大量のものが工場に流れていたのですが、それがどこからきたのか、人々は気に留めなかったそうです。当時、アウシュビッツで行われていたことを、ドイツ国民だけでなく、まわりの国々の人々も信じませんでした。世界トップレベルの優秀さを持つドイツ・ナチス軍がまさか堂々と人殺しをするわけがない、と思いこんでしまったのです。一人ひとりの無関心さの中で、多くのユダヤ人は殺されました。またヒトラーは、ドイツ国内の経済回復に力を入れましたが、その豊かさは軍事産業を基にしたもので、戦争へつながりました。

 この構造は、今の私たちの生活に通じることがたくさんあります。投票率が低い中で、改憲は進もうとしています。地下鉄をはじめとする公共施設でテロ対策も行われています。私たちは平和に暮らしているようで、それは無関心なだけかもしれません。今の生活がずっと続くと信じたいがために、変わっていく現実に目を向けないこともあるのでしょう。でも平和は私たちが築いていくもの、守っていくものなのです。

 戦争を体験していない私たちが戦争を二度と起こさないために、「何十年も前に起きた悲惨な戦争」として見るのではなく、今できること考え、動いていきたいです。

 私は県外の大学に進学し、内地の友だちと話す中で、沖縄の6月23日を基にした平和教育が全国で見ると稀(まれ)であり、貴重なものだったと気づかされました。沖縄では誰もが小さい頃から平和について考え、相手を思いやる優しさを持っているのだと感じます。

 中谷さんは沖縄のひめゆり平和祈念資料館の方々とも交流を続けています。アウシュビッツ博物館のガイドになるためには、ポーランドの国家試験をパスしないといけませんが、彼は外国人で初めてその資格を取得し、20年もガイドを続けています。私のように新婚旅行に訪れると特別なサービスもありますよ。ハネムーンに2人の幸せだけでなく、世界の平和を築くパートナーシップを歩むため、訪れてはいかがでしょうか?


伊是名夏子

 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。

 

(2017年6月19日 琉球新報掲載)

 



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