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妊娠の喜びとリスク 100cmの視界から―あまはいくまはい―(3)


妊娠の喜びとリスク 100cmの視界から―あまはいくまはい―(3)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 身長100センチ、体重20キロ、骨が折れやすい障害があり、車いすで生活している私。そんな私が、4年前の2013年、おなかの中で赤ちゃんを9カ月、2000グラムまで育て、元気な男の子、碧を出産しました。不思議でもあるし、生命の神秘、奇跡ともいえます。だからこそ「生むのは1人、あと1人は養子を引き取りたい」と考えていました。でも碧が1歳になった頃、子育てが少し落ち着き「あと1人生むのもいいな、可愛いだろうな」と思ってしまったのです。そしたらすぐにやってきた2人目。

2人目出産直前の家族写真=2015年7月(撮影・鈴木智哉さん)

 しかし、重要なことを忘れていました! 1人目を生むとき、帝王切開の子宮底部横切開をし、子宮を大きく切りました。これは2回目の出産では多量出血や、子宮破裂のリスクが伴う可能性があり、2人目を考える人には推奨されない方法でした。当時はあと1人生むとは全く考えておらず、その手術法に同意したのでした。2人目を妊娠して、それを思い出した私。そんな楽観的な自分にびっくりですが、それを忘れていたからこそ、すぐに来てくれた2人目ちゃん。前に進むしかありません。

 1人目の時と同様、何か月まで赤ちゃんがおなかにいられるか分からないし、NICU(新生児特定集中治療室)が整った病院で、信頼できる医師のもとで生む必要がありました。前回の手術法のこともあり、今回はよりリスクが高まり、さらなる経過観察、安静も大切です。神奈川県で一番大きな、周産期医療が整った病院が自宅の最寄りにあり、そこに通うことになりました。碧を生んだのは香川県だったので、その医師と神奈川県の担当医と連絡を取り合ってもらい、前回を参考にしながら経過を見ていきました。

 2回目はつわりが重く、1日10回くらいトイレにこもる日々。まだ1歳の碧もいるのでゆっくり休むこともできません。ヘルパーがいる時間を増やし、私と碧、2人きりで過ごす時間を少なくしました。毎朝5時半に碧は起きるので、その相手もつらく、タッパーにおやつを入れておき、彼が朝1人で食べられるよう工夫もしました。無理をしないと決め、自分でできるけれども体に負担がかかること、例えば落とした物を拾うことでもなるべく人にお願いするようにしました。

 おなかの中ですくすくと成長する2人目の赤ちゃん。女の子とわかり、ますます楽しみでした。順調に成長する赤ちゃんの大きさの割合は、私の小さな体からすると、けっこう大きいのです。体のバランスを崩しやすく、転ばないように気を付けました。碧は私の膝に座り甘えてくるし、毎日がギリギリ。でも何もトラブルもなく、妊娠後期を迎えることができました。続きはまた次回に…。

伊是名夏子

 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。

 

(2017年7月3日 琉球新報掲載)