飼育員体験に密着してみた。→動物のすごみを実感した。 「てみた。」7


飼育員体験に密着してみた。→動物のすごみを実感した。 「てみた。」7
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 キリンやカバに餌をやり、園舎をきれいに掃除する。子どもたちが憧れる仕事の一つが、動物園の飼育員。その仕事を体験できる「ZOO SCHOOL」が8月31日まで、沖縄こどもの国(沖縄市胡屋)で開かれている。

 参加者に記者が密着してみた。
 

カバはボルト並みに速い

大きな口をあんぐり。水美はキューブがたっぷり入るまで開けたまま

 開園直後の朝9時半、飼育体験は園舎の掃除で始まる。そこら中に散らばる動物のウンチをほうきなどで掃き集め、水を流してきれいにする。

 午前中でも気温は30度を超える。職員と参加者は大粒の汗を光らせ、ブラシに力を込める。

 10時を過ぎると、カバの朝ご飯の時間だ。園舎内で撮影しようとした記者を、カバ担当の島袋健さん(54)が止める。「一応、牙もあってどう猛なんで。興奮して時速40キロで突進されると大変です」。

 母カバのモモエ(41歳)、娘の水美(すいみ)(17歳)の2頭は、島袋さんの姿を見ると、時速40キロと言わずとも、穏やかそうな見た目に似合わない速さと迫力で寄ってきた。

 園舎の手すりにあごを乗せて大きな口をあんぐり。スタンバイOKだ。

餌は1日50キロ

草を固めたキューブがカバの餌。母カバのモモエがあごで上手にキャッチ

 餌やりはキャッチボールのよう。マメ科の草を5センチ角に固めた餌「ヘイキューブ」をカバたちの口の中に投げ、2頭があごをうまく使ってキャッチする。参加者の登川侑奈(ゆうな)さん(12)=沖縄市=がテンポ良くキューブを投げ込んでいく。記者が投げてコントロールが外れた餌も、2頭は上手に受け止めた。水美はキューブを7個あげても「まだ足りないわ」と言いたげに口を開けておねだり。1頭で1日50キロの餌が必要らしい。

 島袋さんが園舎の池に新しい水を張ったが、30分後にはすっかり濁っていた。濁りの正体はふん。「カバは日光に弱いんです。透明な水だと光を通してしまうので、ふんで濁らせているんです」(島袋さん)。カバの保身術に感心した。

イモ、ニンジン、肉などさまざまな食材を量り、切る

 調理場で、侑奈さんはライオンの餌作りに挑戦。馬肉の脂を取り除き、ぶつ切りにする。赤身にまとわり付く脂が切り取りにくく「難しい」とつぶやいた。

 侑奈さんの隣で、妹の瑞希さん(10)はパンをチョッパーで砕いていた。瑞希さんが担当するキリンは、アカギやオオバギなどの葉が主食だが、パンやニンジンなども食べるそう。

キリンの目はうるうる

 現在、園にいるアミメキリンはメスのキボウ(13歳)と夢(10歳)、オスのワビスケ(2歳)の3頭。普段は見掛けない瑞希さんや記者の顔を見て、ゆっくりと一番奥のスペースに移動していった。

カメラのレンズに興味津々のワビスケ

 「キリンは野生界では追われる身なので警戒心が強いんです。一瞬の隙も作らないよう、まばたきもしないんですよ。キリンの目がうるうるしているのは、ずっと涙が流れているからなんです」と担当の森雅洋さん(27)さん。

 いつもお世話してくれる森さんを見つめる3頭の目は一段と穏やかだ。

 きれいになったキリン舎に戻った3頭に、瑞希さんがニンジンなどをあげる。朝夕の草が主食で、お昼すぎはおやつ(間食)なのだそう。野菜を手渡すと、長い舌で器用に巻き取り、口へ運ぶ。「高い所の草を食べるため、首だけでなく舌も長く進化したんです」(森さん)

ニンジンやイモなどに長い舌を巻き付け、口に運ぶキボウ

 体験を終えて「とにかく楽しかった」と侑奈さん。瑞希さんも「掃除は腕が痛くなったけど、餌やりは初めてで楽しかった」と振り返った。この日の子どもたちはカバとキリンだけでなくカンガルー、は虫類などさまざまな動物の飼育作業を体験した。

 2人の帰っていく姿を、動物たちがきらきらした目で見詰めていた。


 沖縄こどもの国の「ZOO SCHOOL(ズー・スクール)2017」は8月31日まで。

 対象は小学5年~高校生。料金は1500円。事前の申し込みが必要。

 問い合わせは同園(電話)098(933)4190。

 

(2017年7月30日 琉球新報掲載)