この人が国吉さん!? 沖縄CMものがたり[4]エンジョイホーム


この人が国吉さん!? 沖縄CMものがたり[4]エンジョイホーム
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 「坪39万5千円でマイホームが建つば? だぁ電話してみよう。もしもし、国吉さん?…って、国吉って誰か!?」

 漫才の「ノリツッコミ」のようなフレーズが印象的なエンジョイホーム(沖興建、島袋伸男社長)のラジオCM。コストを抑えた家造りと破格の坪単価をうたう建築会社のCMと知らなくても「国吉って誰か!?」と言えば「エンジョイホ~ム♪」と歌い返す人は多いだろう。
 

実在のレアキャラ

CMの誕生秘話を語るエンジョイホームの企画部小濱治課長

 そもそも「国吉さん」は実在するのか。誰もが気になる疑問をぶつけに、宜野湾市の本社を訪ねてみた。同社企画部の小濱治課長によると「国吉さん」という名字の社員が確かに1人いるという。しかし、職種は秘密で表にはなかなか出てこない「レアキャラ」だそう。

 仕事で名刺を渡す時はどうしているのか。当然「あの国吉さんですか」と質問される。いわく、実在の国吉さんは「国吉は他にもいて、僕ではないんですよ」とさらりとかわすらしい。しかし、小濱課長は確かに言った。「国吉という社員は1人います」。そう、1人と。

 CMは6年前に制作された。小濱課長は「建築会社のCMといえば、どうしても堅いイメージがある。多くの人が親しみを持てるようなインパクトのあるCMにしよう、と企画会議を重ねた」と振り返る。「坪39万5千円で家が建てられるって、○○さんが言っていた」。フレーズは決まっていたが、問題は○○にあてはまる名前だ。新垣、大城、比嘉、金城、島袋…。社員の中から、県民に親しみのある名字を並べてみたが、どうもしっくりこない。その時誰かがつぶやいた。「国吉さん」。全員が顔を上げ、見合わせてうなずいたという。満場一致で決定した瞬間だった。
 

で、どんな人なの?

「国吉さんに会わせて」と詰め寄る記者の前に現れた男性。この人が…!?

 さて、そろそろ国吉さんに会わせてほしい。小濱課長にお願いしてみるが「いやぁ国吉さんは出てきませんよ。ましてや写真なんて絶対無理です」の一点張りだ。記者だって引き下がれない。「後ろ姿だけでもいいので。このままだと会社に帰れません」と泣き落とし作戦にかかる。

 小濱課長はおもむろに席を外すと、謎の男性を連れてきた。前のめりで「国吉さんですか!?」と聞くが、男性はほほ笑むだけ。横では小濱課長がにやりと一言。「信じるか信じないかはあなた次第です」

 とりあえず写真を撮って2人と別れたが、ふに落ちない。こっそり戻り、素知らぬ顔で入り口にいた女性社員に聞いてみた。「国吉さんいますか?」「国吉は外出しております」。では、私が写真に収めた男性は何者だったのか。「で、国吉って誰か!?」。もやもやが解消されるどころか、深まっただけだった。
 

(2017年7月30日 琉球新報掲載)