沖縄の浜辺に上陸した〝流れ者〟(その1) しかたにさんちの自然暮らし(30)

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 今年の沖縄島は、台風がまともにやって来ない、暑い夏になりましたね。本来台風は、私たちの暮らしに欠かせない大切な「水」を運んできてくれます。そして、台風が過ぎ去った砂浜を歩いていると、風と波が運んできたさまざまな「海からの贈り物」を見つけることもできます。そこで今回は、浜辺で見つかる漂着物の話です!

1:黒潮に乗って旅するタネ



付着生物も付いておらず、皮もきれいな、まだ新しそうなヤシの実。

 海岸に生える植物の仲間には、タネを海流に乗せて世界中に送り出す種類があります。有名なのはヤシの実。


木に生っているゴバンノアシの実。碁盤の脚に似ている。海岸に漂着した実の色は黒い。

手のひら大で四角っぽいのはゴバンノアシ。


流れ藻と一緒に打ち上げられていたモダマの仲間。藻の中にあるから藻玉(もだま)。

黒光りするモダマの仲間を見つけたら、ちょっと自慢できます。これらのタネはみんな海水に強く、水に浮くので、どこかの砂浜に流れ着けば、そこで芽を出して大きく育つことができます。



2:〝流れ藻〟は稚魚たちのゆりかご


海岸に大量に漂着したホンダワラ類。一部は砂に埋もれ、木の実やごみなども混ざっている。

 浜辺の漂着物で一番多いのは、やはり何と言っても海藻です。中でも目に付くのが、茎に丸いつぶつぶの付いた、ヒジキやホンダワラの仲間。このつぶつぶは空気の入った浮き袋で、春がすぎると根元から茎が切れ、流れ藻となって海面を漂います。

隠れる場所のない大海原では、流れ藻は小魚のいい隠れ家となり、それを狙う大きな魚も集まってきます。そして、これらの藻が浜に打ち上げられれば、今度は海岸の植物や漂着したタネたちの肥料となるのです。乾燥した海藻は、畑に入れても上等な肥料ですよ。


3:ウミガメ、コブシメ…思いがけない大物も


コウイカ類の体の中にある甲は、浮きの役目をしている。

山原の海岸には、ウミガメが産卵にやってくる。浜の中央に漂着しているのは、死んで間も無いウミガメの死骸。


 浜に流れ着くのは、植物ばかりではありません。死んだ魚や貝殻もありますが、コブシメの白い甲や、時には大きなウミガメの骨も見つかります。ただし、ウミガメの骨は重いので、遠くからプカプカと流れてくることはありません。この骨は、浜の近くにウミガメが暮らしている証拠なのです。

普段私たちは何気なく海を眺めていますが、波の下に暮らす生き物までは見えません。でも、浜辺の漂着物に目をやると、ほんの少しですが、水中の世界を想像することができるんです。

4:死んでいても油断大敵! 青い体のカツオノエボシ


岸辺の潮溜まりに取り残されたカツオノカンムリ。三角の帆に風を受けて、滑るように海面を移動する。

 浜には時折、カツオノエボシやカツオノカンムリなど、海面の上に浮かんで暮らすクラゲが数多く流れ着くことがあります。これらの特徴は、白い砂浜でもよく目立つ青い体。これは、海の表面で見つかりにくくするための進化の結果です。
 


砂浜に打ち上げられたカツオノエボシ。風船の向こうには短い触手の青い塊、手前側には長い触手が見える。

中でも、青い風船を持つカツオノエボシの毒は強いので、見つけても絶対に触らないでくださいね!糸のような触手にある毒針は、クラゲが死んでいても新鮮なうちは発射されますよ



5:海底火山で生まれた軽石たち


海岸の端に吹き溜まった軽石。白、黄、オレンジ、黒など様々な色があり、含まれる成分も硬さも異なる。

 浜辺では、波にもまれて丸っこく削れた軽石も見つかります。色や硬さ、中に含まれる粒々も様々で、それぞれ異なる海底火山から噴き出したものです。沖縄島では、西表島近海や硫黄島の南方など、いろいろな海底火山の軽石が10種類以上も見つかります。

 漂着物は、海から届く手紙です。今度海に行ったら、浜辺に届いた漂着物にも目を向けて、波の下に広がる水中の世界を想像してみてくださいね。


鹿谷法一(しかたに自然案内)

 しかたに・のりかず 琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島生まれ。海に憧れて沖縄に来て、もう30年以上。専門は甲殻類。生物の形と機能の関係に興味がある。趣味は本とパソコンとバイクいじり。植物を育てるのも好き。

 




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