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幸せの国、デンマーク 100cmの視界から―あまはいくまはい―(8)


幸せの国、デンマーク 100cmの視界から―あまはいくまはい―(8)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 家族旅行でデンマークに行ってきました。デンマークといえば、沖縄の皆さんにおなじみのポーク缶「チューリップ」の生産国です。世界一幸せな国ともいわれ、国連の世界幸福度調査でトップ3に入り続けています(日本は今年51位)。

自転車王国デンマーク。家族みんなで1台の自転車です

 4歳と2歳の子どもを連れ、どんな旅になるのか!?と不安もありましたが、ゆったりと満喫した2週間でした。人口約500万人、小さな島々が多くあり、面積も九州程のデンマークは、食料自給率300%。新鮮な野菜がすぐに手に入ります。オーガニックにも力を入れていて、スーパーの特売コーナーでも、屋台に行っても、オーガニック商品があります。機内食のバターやジャムまでもがオーガニックでした。環境にいいこと、体にいいことを大切にする国です。

 医療費も無料で、特に18歳までの歯のお手入れを大事にしています。小学校には歯医者も併設されており、授業の合間に歯の治療ができます。12歳までは大人が仕上げ磨きをするのも普通だそうです。私の息子は今4歳で、私が歯磨きに付き合うのもあと数年かな、と思っていましたが、デンマーク流に考えるとあと8年は磨いてあげることになりそうです。

 そして大学院までの教育費はすべて無料です。大学に通うために一人暮らしをする場合、月約10万円の生活費が支給されます。転職を目指す社会人が、資格取得のために学校に通う時も、約10万円支給されます。最低限の生活が保障されるので、学びたいだけ学べて、いつでも自分のやりたいことにチャレンジできる制度があります。

 消費税は25%、所得税に至っては約50%ですが、それが国民のために還元されているのです。小さな国だからこそ、人が一番の資源だと考え、国民を大事にしているのです。生活が保障されているからこそ、自分にも、相手にも優しくなり、ゆったりと豊かに生きるデンマーク人。家族の形もいろいろあり、独身でも無料で不妊治療を受けたり、養子を引き取ったりすることができます。那覇市も昨年、同性のパートナーシップ登録が認められましたが、デンマークは世界で初めてそれを施行しました。

 豚肉好きで、多様性を認め、ゆったりと生きるところが、沖縄とデンマークの共通点のように感じます。沖縄も一番の資源を「人」と考えると、他県にはない、独自の社会保障が作れるかもしれません。保守的だったデンマークが変わってきたのも、わずか40年前のことです。沖縄も日本一幸せな県に向けて、一歩を踏み出しませんか?
(次回は10月2日に掲載します)

伊是名夏子

 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。

 

(2017年9月18日 琉球新報掲載)