うちの子の学校は始めてる?【子どもの未来を拓くプログラミング教育@沖縄(7)】

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 「プログラミング教育が必修になる!」
 テレビや新聞、雑誌で〝プログラミング教育〟の話題が紹介されることが増え、2020年度から小学校で義務化されることはずいぶん周知されてきました。これまで本シリーズでは国や民間の取り組みをお伝えしてきましたが、現在の小学校では今、どのような取り組みが行われているのでしょうか。一足早く始まっている先進的な事例をご紹介します。



渋谷区のスゴイ挑戦


 プログラミング教育の必修化に向け、全国各地で子どもを対象としたプログラミング教育が始まり、そのノウハウや事例が蓄積され始めています。

 しかし、学校現場ではほとんど実施されていないことから、実践的な授業を体系的に学んでいる教員は限られています。そのため、多くの教員は国からの指導案や事例などの情報を待っている状態です。

 そのような中、渋谷区教育委員会はICT教育推進モデル校に指定している代々木山小学校で、独自のノウハウを蓄積することを目的とした研究授業を実施しています。

 授業では、プログラミング教育の普及啓蒙を行うCA Tech Kidsが、カリキュラムと講師を提供し、子どもたちに身近な「ゲーム」を通してプログラミングの基本的な考え方を学習しています。

 全12コマかけて実施される授業の前半では、子ども向けのプログラミング学習ソフト「Scratch」を用いて、キャラクターに命令を与える(=プログラムを組む)ことを経験します。

 繰り返し(loop)、条件分岐(if)、座標、乱数、変数など、通常なら小学校では教わらない内容を、ゲーム作成を通しながら学習しています。

 授業の後半では、学んだ知識や技術を駆使して完成品をイメージしながら、自分だけのオリジナルゲームを作成します。アイデアを形にするためには、どのような要素が必要なのかを考え、設計書を作成し、オリジナルゲームを仕上げていくのです。

 授業の最後には、子どもたち同士がお互いに開発した作品で遊ぶ機会や評価をし合う機会を設けています。学んだ知識は同じでも、十人十色に仕上がった友だちの作品から新たな気づきを得ることで、さらなる学習意欲の向上につなげています。



 担当教員からは

「言われたことをそのままやるのではなく、自分で考えたアイデアだと自覚を持って取り組んでいるように思えた」
「自ら主体的に頑張っている様子が見られた」

などプログラミング教育の意義を直に感じてもらっています。

 実績ある民間企業が先導したことで、教員は客観的な立場でプログラミング教育を体系的に学ぶことができます。

 教員が子どもたちに教えるときの工夫点や指導案を考える際の課題も見えてきたようです。学校で時間を確保し、より実践的に取り組むことは教員にとっても大きな気づきを得る機会となります。

沖縄で始まっている「出張授業」

 沖縄でも県がIT産業を推進しているため、自治体や民間によるプログラミング教育に関する取り組みは年々増えています。しかし、全国的に見るとまだ十分とはいえません。


2017年3月に公表された総務省の報告では、プログラミング教室・講座は、地域別で見ると関東が最も多く特に東京都に集中しています。地方で開催されている教室や講座も、大都市で開かれていることが多く、中都市・小都市では事例が少ないことから、プログラミング教育の認知度が低いことが推察されます。

出展:http://www.soumu.go.jp/main_content/000501658.pdf



 全国的に増えているプログラミング教育も、地域によりその差は顕著に開きはじめています。沖縄も例外ではなく、大都市である那覇市とその他の市町村では、プログラミング教室・講座の数に差が生じはじめています。

 「住んでいる地域に関係なくプログラミングに触れてほしい」―。
そんな思いから2016年、私が勤めるシーエー・アドバンスと琉球大学工学部情報工学科、沖縄国際大学、沖縄工業高等専門学校が連携し、出張プログラミング授業「Digital Kids Okinawa」をスタートしました。
    
 出張プログラミング授業は、Tech Kids School沖縄那覇校を運営するシーエー・アドバンスが、プログラミング教育のノウハウと講師を提供し、連携大学等の学生がサポーターとして授業を行う産学連携の取り組みです。

 これまでに、北部地域の子どもたちを対象としたプログラミングキャンプや名護市の小学校などでプログラミングの授業を行っています。



 小学校で実施する授業では、子ども向けのプログラミング学習ソフト「Scratch」を使って1回2コマの授業を行っています。授業では、プログラミングによって私たちの生活がどのように便利になっているのかを学びながら、プログラミングに必要な概念(繰り返し、条件分岐)などを、ゲーム作成を通して学習します。

 子どもたちは、学んだ知識を活用しながら、必要な要素を自分で考え、試行錯誤し、課題を解いていきます。授業の最後はゲームの改造にもチャレンジしてもらい、アイデアを形にする楽しさも学んでもらいます。


 授業を受けた子どもたちからは、
「今まで以上に興味をもてた」
「プログラミングはいろいろな場所で使われていて、必要なものだということが分かった」
など、プログラミングを学ぶだけではなく、社会との関わりや、その有用性も感じ取ってくれています。
 

 教員からは
「プログラミング学習でどのようなことが学べるか分かってよかった」
「子どもたちの将来の選択肢が広がる授業だった」
など、授業に対して高い評価をいただいています。

 また、子どもたちの学習姿勢、理解度の高さにも大変満足いただいており、次回開催を望む声を多くいただいています。

 出張授業を通して分かったことは、“プログラミング”という言葉を知っていたり、その意味を理解したりしている子どもは、ごく少数だということです。今後はますます教育格差が広がることが予想されるため、このような取り組みを通して情報を届けていく必要性を感じています。

必修化前に実施する意義は?

 小学校では教育課程が細かく決まっていることもあり、実践的なプログラミング教育を実施することは簡単ではありません。

 そのため今回ご紹介した事例は全国でもまだ珍しく、とても価値のある取り組みです。教員が直接見て感じることで、その地域や学校の課題を発見したり、新たな気づきを得ることができるからです。

 さらには学校現場が抱いている不安や課題を検証することもできるため、必修化にむけてプログラミング教育のノウハウを蓄積し、教員研修や指導案の作成に役立てることが可能となります。

 国の方針としても、小学校教育におけるプログラミング教育は、地域との連携を想定しているため、遅かれ早かれ民間との協力体制を構築する必要があります。必修化に先んじてプログラミング教育に取り組む意義はとても大きいのです。


「Tech Kids School」で本格的な学習も


 2020年からのプログラミング教育必修化は、ノウハウを持つ民間事業者との連携が不可欠です。

 では民間事業者では、どのような取り組みが行われているのでしょうか。

 次回は、私が運営する小学生のためのプログラミングスクール「Tech Kids School」の取り組みを紹介します。

(次回は10月27日に公開。毎月第2、4金曜日に公開します)



― 執筆者プロフィール ―


Tech Kids School 沖縄エリア統括責任者 中山拓也(なかやまたくや)

沖縄県糸満市出身。自身も子どもを持つ2児の父親。沖縄の子どもたちを取巻く様々な格差からくる成長の機会損失が多い現状を変えたいと思っている。未来を担う子ども達に「無限の可能性と希望」を伝えるべく奮闘中。

小学生のためのプログラミングスクール「Tech Kids School」を運営しながら、未来を生き抜くために必要とされるプログラミング教育の提唱や、家庭環境に関係なく子どもたちへ学習の機会を創出するため、沖縄県内の企業や大学と連携した取組みも行っている。

▼Tech Kids Schoolの詳細はこちら
http://techkidscamp.jp/school/





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