「まとめサイト」に気をつけて モバプリの知っ得![27]


「まとめサイト」に気をつけて モバプリの知っ得![27]
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

みなさんは、スマートフォン・パソコンを使ってインターネットにアクセスすると、さまざまなサイトを見ることができますよね。
新聞社のWebサイト(琉球新報Styleはここに分類されます)や、企業・団体のホームページ。個人で作成し、更新しているブログ…。

さまざまな種類のサイトがある中で、1つのジャンルとして確立しつつあるのが「まとめサイト」です。インターネット上の莫大な情報の中から、使えそうな情報を選び、並べて見やすくまとめたサイトのことを、まとめサイトと呼びます。

キャッチなー見出しと分かりやすい内容、シェアしたくなるような構成で、ついつい見てしまい、友達に教えたくなります。

一見すると良いサイトのように見えるまとめサイトですが、細かく見ていくと「おや?」と思うことが多いのも事実。

今回はそんなまとめサイトの危険性、気をつけるポイントを「まとめ」たいと思います。

まとめサイトは匿名掲示板「2ちゃんねる」から誕生

匿名で書き込めるネット掲示板「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」という場所があります。
みなが本名を明かさず好き勝手に酷い言葉を書き込むため「便所の落書き」「痰壷」と揶揄されています。

2ちゃんねるでは意味のある書き込みが汚い言葉に埋もれることが多く、とても読みにくくなっていました。こうした2ちゃんねるの書き込みから、有意義なものだけを抜き出し、見やすくまとめる「2ちゃんねるまとめサイト」が誕生していきました。

スマートフォン時代になり、「まとめサイトをまとめたアプリ」なども誕生し、2ちゃんねるの書き込みがどんどんと凝縮されてきます。

まとめのタイトルも「美人の上司に告白した結果wwwwwww」「【悲報】来年の祝日が少ない」など、ついつい見たくなる煽り文句をチョイス。週刊誌の中吊り広告のように、人々の野次馬根性を刺激するネタが投下されます。

アンダーグラウンドで一部の人たちが楽しんでいた2ちゃんねるが、徐々に大衆化していくのもこの頃です。

インターネットでは簡単な手続きをクリアすると、サイトに広告を載せることができます。
広告がクリックされるとサイト運営者にお金が入る仕組みです。
1クリック数円〜数十円の世界ですが、アクセスが増えてクリック数が増えると、月間数十万円の収益を得ることも可能です。

お金儲けが目的のまとめサイトでは、アクセス・クリック数を増やすため過激な書き込みをまとめたり、本文のまとめとはかけ離れたタイトルを付ける行為が横行しました。なかには、2ちゃんねるから書き込みをコピーする例も出てきました。

エスカレートしながらお金を荒稼ぎするまとめサイトに、2ちゃんねる側もしびれを切らし、2012年には大手まとめサイトを名指しし、転載禁止令を出します。ようは「うちの書き込みをお金稼ぎに使うな」ということです。

この時期になると、TwitterなどのSNSも伸びてきています。2ちゃんねる以外にTwitterの投稿をまとめるサイトなども登場し、バリエーションが広がりつつ現在へと繋がって行きます。

意識して見ておこう 「便利」の裏側にある問題点

まとめサイトは大きく2つの問題があります。

まとめサイトの問題点1 無断転載

一つ目は無断転載です。

人の書き込みをもとに、意見を展開させる「引用」は著作権法でも認められた行為です。
しかしながら引用の条件を満たさず、書かれた文章を許可なくコピーし、サイトに載せる行為は「無断転載」となり、著作権法上認められていません。

お金儲けが目的のまとめサイトは、無断転載を繰り返し、煽る見出しを付けてアクセスと金を稼ぎます。

著作権侵害は親告罪となっており、権利者が訴える必要があります。
権利者が無断転載に気がつかないケース、訴えるのが面倒臭くて泣き寝入りするケースも多く、残念ながら「パクったもん勝ち」になっているのが現状です。

大手企業のDeNAが運営していた医療情報まとめサイト「WELQ」、女性向けまとめサイト「MERY」は、いずれも画像などの無断転載で記事を作っていたということで、サイトが閉鎖する騒ぎとなりました。プロ野球球団を持つほどの大企業、DeNAも無断転載でお金儲けをしていたということになります。

DeNAはサイトを閉鎖し、健全化した上で再出発することを明らかにしました。

しかしながら、今だに多くのまとめサイトは無断転載、パクリを繰り返して記事を作っています。

きちんとした記事を継続的に作り続けるにはお金がかかります。
手間暇をかけて作った記事が手軽にパクられ、パクった側にアクセスとお金が流れる仕組みが続くと、最終的にはきちんとした記事が作れなくなります。

こうした背景があることを、まとめサイトを見る際に意識したいものです。

まとめサイトの問題点2 不確かな情報が多い

まとめサイト2つ目の問題点は、不確かな情報が多いと言うことです。
一般的にニュースは、事実関係に間違いがないかしっかり確認した上で作られます。
確認を行っても、人間がやっている以上間違えることやしっかりと意図が伝わらないことなどもあります。確実な情報を伝えることは手間暇がかかり、それ相応のスキルが求めらるのです。

しかしながらまとめサイトでは「きちんと情報を伝える」ことよりも、「アクセス・お金を稼ぐ」ということがゴールになっていることが多いため、情報の正確性を軽視する内容がとにかく目立ちます。
ましてや「ネットの書き込み、声をまとめただけですよ」という形を取っているため、情報の間違いを指摘されても、「ネットに書き込まれていたということは事実であり、それをまとめているだけです」と開き直ることも。

また「ネットでいろいろな人の声を集めました」と言いつつ、都合のいい意見だけを集めて印象を変えることも。一部の極論がまとまり、極論が当たり前のように感じることを「エコーチャンバー現象」と呼びます。
こうした現象はまとめサイトの専売特許ではないものの、アクセス・お金を稼ぐことが目的としたまとめサイトでは発生しやすい現象となっています。

記事:あなたも陥っていませんか? SNSのエコーチャンバー現象 モバプリの知っ得!
 

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

「分かりやすい」は問題を単純化していることもある

世の中には、どちらが正しいのか白黒をつけることが難しい問題が山積みです。
まとめサイトはこうした難しい問題を単純化し、敵を作って一方の目線で叩くことがあります。

新聞やテレビが報じない角度、普段はおおっ広げにできない意見も「まとめサイトが代弁してくれる!」と喜ぶ人も多いようです。
こうした手法は「ポピュリズム」と呼ばれ、新しい政治家が「風」を吹かす時によく使います。

まとめサイトは「世の中を良くしよう」などの高い志はなく、アクセスとお金のために人々を煽り、時にはデマを平気で流します。

一見すると「分かりやすい」と感じるまとめサイトですが、構造や根っこの部分で大きな問題をかかえているため、読む場合は相当に注意する必要があるでしょう。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」10月15日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

http://smartphoneokoku.net/