島野菜の甘み 体に染みる トウガンのポタージュスープ


島野菜の甘み 体に染みる トウガンのポタージュスープ
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 夏の暑さで県内の野菜が品薄になる中でも、ファーマーズマーケットなどで山積みになって並んでいるのがトウガン(シブイ)だ。夏野菜だが常温で冬まで保存できるので「冬瓜」という名前が付いたとか。

「おいしくなーれ」と思いを込め、煮込んだ具材をミキサーにかける知名清子さん=糸満市糸満

 汁物や煮物が定番だが、知名清子さん(65)=糸満市=の手にかかると多彩な料理に変身する。「トウガン1玉を使い切るって結構難しいけど、実はいろんな食べ方があるのよ」とにやり。トウガンのマーボー豆腐にぜんざい、そして自信作のポタージュスープ。意外な素材を使い、「どんなふうになるかな」と想像しながら料理するのが楽しいのだという。

 レシピ作りのモットーは「家にある材料でできる簡単料理」。トウガンのポタージュスープもジャガイモやタマネギなどおなじみの食材を混ぜて作ることができる。材料を煮込み、ミキサーにかけた後に豆乳でのばすとできあがり。手際よく30分ほどで完成させた。

 スープを口に含むとトウガンの風味がほんのりと広がるが独特の青臭さは感じない。豆乳と野菜の甘さが体に染み込む。これからの寒い季節にもってこいの一品だ。

 知名さんは結婚を機に出身地の西原町から、“海人の町”糸満市へと移り住んだ。「マース煮に皮のあえ物、刺し身のみそあえ。魚料理は義母に教えてもらった」と懐かしむ。糸満の二大年中行事である大綱引とハーレーには欠かさず参加する。今では地元を愛する立派な「糸満人」だ。

「スープのお供にどうぞ」と、サバ缶や野菜をのせたピザトーストも作ってくれた。朝ご飯にぴったりの2品

 現在、食育や島野菜の普及に取り組む「糸満市食生活改善推進員協議会」の一員として活動している。活動歴22年のベテランで、2014年から16年まで会長を務めた。市の民生委員も担い、忙しい日々を送る。「地域の人たちが子育てを助けてくれた。今度は私が恩返しする番」と話す。

 島野菜レシピも地域を思う気持ちから生まれた。若い母親たちから寄せられる「島野菜をどう料理したらいいか分からない」との声を受け、食生活改善推進員の仲間と共にレシピを開発した。

 従来の調理法に加え、島野菜を現代の食事にも取り入れやすいように工夫。雲南百薬は卵焼き、カラシナはクリームスープに。ゆでたフーチバーやハンダマ、サクナはフライパンでからいりしてふりかけに変身させた。

 「生まれ育った場所で採れる野菜が体に合っている。農家さんが作った安心安全な野菜を肩肘張らずに食べてほしい」。その思いをレシピに込めた。

 そんな知名さん。人一倍健康に気を使っているのかと思いきや「全然そんなことない」と苦笑い。「昔のおばあたちの食生活に戻すのが健康長寿を取り戻す一番の方法だろうけど、たまにはハンバーガーも食べたくなる。野菜が足りないなぁと思った時にさっと料理して食べることができれば上等さ」とカカカと笑った。

 きっと今日も冷蔵庫をのぞき込みながら、心と体に優しいレシピ作りに頭をひねっていることだろう。

文・赤嶺玲子
写真・内原優士

トウガン

 ウチナーグチでは「シブイ」と呼ばれる。

 96%は水分だがビタミンCやカリウムが豊富で、沖縄では昔から夏場の食材として大切に食されてきた。

 種子や皮を乾燥させたものを煎じて服用すると、喉やおなかの調子を整えるといわれている。調理前の実は常温で長期保存することができる。

(2017年10月24日 琉球新報掲載)