昔ムーチー 今バーガー〝いのちの粒〟の正体は?【沖縄たべものがたり】(vol.3)

  • 沖縄県全体
このエントリーをはてなブックマークに追加

ムーチー(鬼餅)は昔、高キビで作られていた

旧暦12月8日に健康長寿を願って食べるカーサムーチー。
ムーチーは、たいてい餅粉を使って作られていますが、昔は高(たか)キビで作られていました。スーパーマーケットで時々「トーナチン」と書かれた紫色の粉が売られていますが、それが高キビ粉です。





高さが2〜3メートルにもなることから高キビと呼ばれるモロコシ。北部の農家さんで「ハイキビ」と呼んでいる方もいて、なんだか沖縄的で面白いと思いました。

カーサは月桃のことですが、もともとムーチーは月桃ではなく、サトウキビの葉っぱにくるんでいたんでいたんだそうです。


何年か前に昔のムーチーを作ってみようという企画を立て、高キビで餅を作り、無農薬のサトウキビの葉っぱをもらってトライしたことがあります。

サトウキビの葉っぱは意外にも良い香りがして、美味しかったなぁ。

さらに昔は霊力をアップさせるため、餅の上に沖縄で「オカノリ」とか「モーアーサー」と呼ばれるイシクラゲを載せていたんだそう。ずいぶん呪術的な意味合いのある食べものだったんですね。鬼餅伝説自体、強烈ですからね。


サトウキビの葉っぱに包んだムーチー。


イシクラゲ、ちょっと不気味です。

魅力いっぱいの高キビ 「ないなら作るしかない!」


八重山では餅にするだけでなく、高キビを入れたご飯を赤飯と呼び、粒のまま食べてもいたようです。
浮島ガーデンでも、高キビは粒のまま、挽き肉代わりにハンバーグやハンバーガー、ミートソースやラザニアなど様々なメニューで提供しています。




人気のハンバーグは間もなくレトルトパックでも販売されます。

昔は沖縄でも栽培されていた高キビですが、今では自家用以外、ほとんど栽培されていません。

誰も作っていないなら自分で作るしかない―。

7年前、仲間と共に高キビの栽培をスタートし、同時に島々をめぐり在来種探しをしてきました。そして去年、多くの方の力添えで伊良部島の司さんや雑穀研究者・木俣美樹男先生から沖縄の在来種を提供していただき、今年4月に立ち上げたのが「沖縄雑穀生産者組合」です。


長野から栽培指導者である雑穀レストラン「野のもの」吉田洋介さんを招いて勉強会も。


現在、雑穀生産者組合は、沖縄本島を中心に宮古、波照間まで20以上の農家さんや雑穀好きの方が加入し、高キビを中心に栽培をスタートさせています。

粟やキビの在来種の復活栽培、これまで栽培歴のないアマランサスやキヌアなどもトライしてみたい!そんな未来への夢がいっぱいの当組合には、なんと!10代の若者、陽明高等支援学校の生徒さんも参加しています。


沖縄の高校生と共に 苦労と喜びを共に


種蒔きの様子

4月後半に授業の一環として学校の農園で種蒔きをしました。丁寧に大切に蒔いてくれてうれしかったなぁ。
種蒔きから4カ月後、彼らの頑張りのおかげで高キビは立派な実りをつけました!上等!


高キビをはざかけして天日干し。見事な出来栄え!

この上等高キビはデパートリウボウの催事「世界のからだにいいモノマーケット」で飾らせてもらい、年配のお客さんからは懐かしいとの声も。

そして、先日、担当の千葉先生の呼びかけで、生徒さんが作った高キビを脱穀精白し、実際に高キビバーガーを作って食べてみよう!というホンモノの食育授業が行われることになり、組合の女性部3人で参加させてもらいました!


定規を使って高キビをしごきながら脱穀。

高キビを食べるには、まず脱穀、精白という過程を踏まなければいけません。
穂から実を外すのが脱穀。実からモミを取り除き、最後にヌカを取り除くのが精白です。玄米を白米にするようなイメージですね。

立派な最新型循環式精米機を買ったので簡単に精白できる気持ちでいました。ところがこの機械を使う前に、葉っぱやもみ殻などゴミを飛ばす作業をしなければならなかったのをうっかり忘れていました!

唐箕(とうみ)というゴミを飛ばす機械がなく、仕方ないので下敷きなどあれやこれや役に立ちそうな道具を持ってきてはパタパタ仰いで風を起こしてみましたが、そう簡単にゴミだけ調子よく飛んでいってはくれません。

結局、ザルを振るいながらゴミと実を仕分け、3時間かけてなんとか精米機にかけられるところまで持ってゆきました。


脱穀した高キビからゴミを取り除くという気の遠くなるような手作業。



〝いのちの粒〟が育む「ゆいまーる」の心


「ああ、簡単じゃないね〜」「やってられない」「機械さえあれば」…。

いろんなネガティブなつぶやきを発しながら、雑穀が衰退していったワケを感じていました。

ひとりでこの作業をやるとなったら、とっても大変。でも仲間がいればやり遂げられる。わいわいゆんたくしながら、いのちの粒に触れていると、満たされ、穏やかな気持ちになってゆくのを感じます。
 


精米機の中の高キビを手動で循環させて精白。

生徒さんたちも、作業が始まる前まではワイワイおしゃべりしていたけれど、高キビと向き合いはじめると、不思議と文句ひとつ言わず黙々と集中しているのがとても印象的でした。集中力やゆいまーるの心を育む上でも農作業は子どもたちの教育にもってこいですね。

ところで機械もない時代、昔の人はどうやって脱穀精白していたかというと、大きなサンゴに高キビをこすりつけて脱穀し、石臼や木臼で精白していたそうです。

なんて気の遠くなるような作業工程でしょう。この手間と労力を体験した人は、一粒も無駄にできません。ましてや1カップの高キビはとんでもなく貴重なもの。私も今回、あらためて実感しました!

一粒も残しません。農家さん、本当にありがとうございます!



まるでお肉!高キビバーガー作りに挑戦


ルックスもまるでお肉!

そんな高キビを使って、生徒さんたちがはじめて作った高キビバーガー。






焼いている最中から「お肉そっくりだね」と次々に声が上がり、実際に食べて「すごい!お肉だ〜」「美味しい」と喜んでもらえました。良かった〜♡みんなで苦労した甲斐がありましたね。



販売される高キビには高キビ・ハンバーグのレシピ付き!

シンプルな高キビのハンバーガー。とっても美味しかった〜♡

ところで陽明高等支援学校の生徒さんが栽培から収穫、脱穀精白、そしてこの後、籾付きの食べられない高キビを取り出す「選別」という肩の凝る手作業まで行い、完璧な状態にした高キビを、11月17日(金)、浦添市民体育館にて行われる「沖縄県産業教育フェア」で販売するそうです。

フェア自体は2日間行われますが、販売は初日だけだそうですので、ぜひ生徒さんたちの成果を見に行って下さい。彼らがいのちをつないだ高キビの種の配布もあるそうですよ〜。
 



沖縄の〝雑穀文化〟復活を目指して

八十八の手間がかかることから八十八を組み合わせ「米」という文字ができたと言われるように、穀類を食べられるようにするにはこんなにも手間と時間がかかるんですね。

お金さえ払えば何でも手に入るという現代社会の中にあって、自力で食べものを得る大変さを実感する経験は、大人も子どもも一度は経験すべきいのちの学びなのではないかと思います。

雑穀生産者組合ではそういったいのちの食べ方、食育、ゆいまーるの心を育む活動もしてゆきたいなと考えています。

 




まだまだ始まったばかりの沖縄における雑穀の復活栽培。
いのちの粒・雑穀を栽培してみたい方、沖縄雑穀生産者組合okinawazakkoku@gmail.comまでご連絡下さい。
未来への種蒔き、共にいたしましょう〜!

次回は今回お伝えできなかった「鬼餅伝説」について、意外な食べものがたりをお届けしますね。

(次回は11月21日に公開予定。第1、3火曜日に公開します)



中曽根直子(なかそねなおこ) 穀菜食研究家/沖縄雑穀生産者組合 組合長

那覇に「浮島ガーデン」、2016年、京都に「浮島ガーデン京都」をオープン。沖縄の在来雑穀の復活と種の保存、生産拡大のため沖縄雑穀生産者組合を立ち上げる。農業イベントや料理教室、食の映画祭や加工食品のプロデュースなど様々な活動を通して、沖縄の長寿復活に全力投球中。
 




前の記事カテゴリー分けせず自由に 100...
次の記事離島に行ってみよう! 〜多良間島...