沖縄の小学生がロボコン日本一に輝いたわけ【子どもの未来を拓くプログラミング教育@沖縄(9)】

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ロボットが大好きな全国の子どもたちが集うロボットコンテスト「World Robot Olympiad(WRO )Japan2017」(NPO法人WRO Japan主催)が9月17日、東京都で開かれました。

そこで沖縄県うるま市にある「沖縄アミークスインターナショナル小学校」に通う3人の小学生が「ミドル競技小学生部門」に出場し、

 沖縄初の優勝に輝きました!

WROは55カ国22,000チーム以上が参加する小学生~高校生対象の国際的なロボットコンテストで、世界各地で大会が行われています。

大会では、あらかじめ指定されたコースやルールに基づき競技が行われます。コース上にある黒い線をセンサーで読み取りながら自動で進むようにしたり、物をつかんで移動させたりするなど、ゴールまでに必要なさまざまな要素をプログラミングする必要があります。そのため、ロボット製作とプログラム開発の2つの技術で自律型ロボットを作成する力が求められる競技です。

驚いたことに、優勝を勝ち取った時点の3人のロボットプログラミング歴は約4カ月!!

なぜ、そんなにも短い期間で全国1位になるほど成長することができたのでしょうか?

彼らを突き動かした原動力をご紹介します。

 

PROFILE


山田黎音(ヤマダ ライト) 小学5年生 黎弥の兄

屋良柊斗(ヤラ シュウト) 小学4年生

山田黎弥(ヤマダ レイヤ) 小学3年生 黎音の弟


ロボットプログラミングとの出会い


3人が通っている沖縄アミークスインターナショナル小学校では、「自分で考え、学び、行動し、自分の将来を自分で切り開く『自立した子ども』を育てる」を教育理念に、子どもたちに多彩な学習環境を提供しています。その1つとして、タブレットなどデジタル機器の活用、コーディング入門でゲームプログラミングを授業で取り入れるなどICT教育の推進にも積極的に取り組んでいます。

2017年5月に創設されたロボットクラブでは、世界70カ国50,000以上の教育機関で導入されている、教育版レゴ® マインドストーム® EV3を用いて、ロボットプログラミングの学習が行われています。

クラブに入部したきっかけを、黎音さんに聞いてみました。


黎音さん

「3歳の時に、はじめて従兄弟が持っていたレゴで遊んだとき『楽しい!』と思ったんです。自分の物も買ってもらいましたが、クラブができると聞いて入部しました。家では6時間近くロボット製作をすることもよくありました」


自身の興味から入部することを決めた黎音さん。インタビュー中も常に目が輝いている姿からは、本当に楽しんで取り組んでいることが伝わってきます。自宅では、弟の黎弥さんと一緒にロボット製作やロボットプログラミングに打ち込むことが多いため、お父さんも学習意欲の高さには驚いているそうです。

チームメンバーの1人でもある柊斗さんは、私が運営する小学生のためのプログラミング入門ワークショップ「Tech Kids CAMP」に参加したことがきっかけでプログラミングに出会い、その後、学校の授業やプログラミングが学べるイベントなどがきっかけで入部を決めたそうです。

実はクラブが創設されたわずか3カ月後の8月にはWROの沖縄地区大会が控えていました。当時ロボットプログラミング経験ゼロだった3人は、それから短くも濃密な時間を過ごすことになったのです。

 



指導者の想い

ロボットクラブで子どもたちに指導する佐和田コーチに、クラブを運営することになった背景を聞いてみました。

 


佐和田コーチ「学校からロボットクラブ運営の誘いがあったことがきっかけです。もともと私自身がエンジニアをしていました。その経験もあり、自分の子どもがどういう仕事に就くかは分からないですが、これから先必要になる、ITの知識や論理的な考え方を学んで身につけてほしいと思っています。そのため、自分の子どもにはプログラミングを学んでもらいたいと思い、マインドストーム®を買いました。私の子どももWROに出場していますが、WROは沖縄大会だけではなく、勝つことで全国大会に出ることになります。そうなれば多くの人とコミュニケーションをとる機会が増え、ロボットプログラミングの新たな知識を身につけることもできます。そういう経験は子どもの教育にプラスになると思っています」

 

―始まったばかりのロボットクラブですが、授業で意識していることはありますか?

 

佐和田コーチ「夏まではWROに向けてドリルを用意して、ロボットの作り方やプログラミングをがっちり教えていました。それが終わった今は、その時々の課題に対してロボットの仕様はしっかり伝えるものの、プログラミングの仕方などは極力タッチせず、基本的に質問を受けるだけにしています。そのため子どもたちが作るロボットは、必要な規格を守りつつも、豊かなアイデアが形となった十人十色のロボットが出来ていると思います」

「WROはロボットの組み方やプログラミングが決まっているわけではなく、コースのラインなど目的に合わせてプログラミングしないといけないため、私が全て指導をしてしまうと、子どもの自由な発想は生まれてきません。そのため、今は子どもたちが自由に思うようにやってもらっています。子どもたちは大人にはないアイデアを持っていますから」

これから先、誰も経験したことがない未来がくるからこそ、自分で課題を見つけ、自分で解決策を考え、実践していく力が必要とされています。課題を解決するために、しっかり自分の頭で考えることが必要になるプログラミングは、そのような力を身につけるためには有効な習い事かもしれません

 

WRO Japan2017出場

ロボットクラブが創設されてから3カ月後、沖縄地区予選が開催されました。このときは2名のチームで挑んだそうです。この時点でのロボットプログラミング暦はたった3カ月。十分な学習時間や練習時間があったとはいえない状態でしたが、初出場ながら準優勝を獲得し、全国大会の切符を手にすることができました。

地区予選が終わってからは、チーム3人で練習に取り組む日が多くなったようです。

ロボットプログラミングは、プログラミングが完璧でもロボットに不具合があれば思い通りに動きません。もちろん逆も然りです。そのよう中、黎弥さんはどのように練習していたのでしょうか。


黎弥さん

「教えてもらったことを覚えるだけではなくて、クラブ以外でも練習していました。夏休みには毎週のようにWROの競技台がある高校の教室を借りて、みんなで1日8時間の練習をしていました。本番をイメージするために、それぞれの役割を確認しながら試合と同じように取り組みました」


自宅での練習は200以上あるパーツを使って一から作る練習もしていたという黎弥さん。間違えやすい組み立て方を繰り返し練習することで、ロボットの仕組みについて理解を深めたようです。

さらに、黎弥さんは「チェック担当」、黎音さんは「ロボットの土台作成やコース試走の順番待ち担当」、柊斗さんは「プログラミング担当」など、自分たちの力が発揮できる役割で練習に臨んでいました。

学習を進めて約4カ月。東京都内の会場には地区予選を勝ち抜いた22チームが集い、大会本番が開催されました。3人はこれまで勉強してきたことや、チームとして頑張ってきた自信から、当日は全く緊張せずに本番に挑めたと言います。

大会では、事前に指定された課題通りにロボットを動かす正確性やスピードを競います。当日に初めて発表される〝お題〟もあるため臨機応変にプログラムを作成する技術力も必要とされます。

大会当日、彼らのチームだけが、その〝お題〟に対応するプログラムが作成でき、無事完走することができ、何と100点満点で優勝することができたのです! 他のチームに大差をつけての優勝でした。

 


臨機応変に対応できたのはなぜ?

彼ら3人は当日発表されたお題に、なぜ臨機応変に対応することができたのでしょうか。


柊斗さん

「今までいろいろなプログラミングのイベントに参加してきたので、プログラミングのやり方は入部する前に分っていました。ロボットプログラミングは、タイヤやセンサーなどのプログラムの名前が分りやすいので、プログラムしやすいです。本番はプログラミングする時間を長くしたかったので、ロボット作成の時間を短くできるように意識しました。ロボット作成が早くできれば、プログラムを考える時間を増やせるからです」



柊斗さんは、自分の役割を完遂するために日ごろから練習の仕方も工夫し、本番を有利に進めることができていました。自身が行うべきことを理解し行動できたことで、しっかり力を発揮できたのかもしれません。

今回の経験を通して大きな成功体験を得ることができた彼らは、ロボットプログラミング学習を通して、目的を達成する上で必要な道筋を立てる設計力や、物事を論理的に考える思考力、そしてプログラミングスキルなどの技術力を身につけることもできたようです。

全国優勝を獲得した彼らが目指す次なる目標は「世界大会優勝!」

大きな成功体験を味わい、その経験を糧にさらなる挑戦を続ける彼らに今後も注目です。



あとがき

インタビューを通して、ロボットプログラミングがとても好きだという3人の思いが強く伝わってきました。昔からレゴが好きだった黎音さん。黎音さんが取り組む姿を見て自然とはじめた黎弥さん。プログラミングやモノづくりが好きな柊斗さん。きっかけは違っても、自分が興味を持ったことに本気で取り組んでいました。

そして、途中で投げ出すことなく最後まで頑張れたのは、「アイデアが形になる経験(ロボットが思い通りの動きをする)」「成功体験(練習や大会で上手くできたとき)」など、自らの手で実現できた喜びが子どもたちの「もっとやりたい」という原動力になったのではないでしょうか。

今回彼らをインタビューしてみると、これからの時代に必要とされる「課題を解決する力」や「主体的に物事に取り組む力」などを楽しみながら培っている姿が印象に残りました。プログラミング学習は自由なモノ作りの世界だからこそ夢中になれる環境があります。

子どもたちの可能性を拓くプログラミング教育。お子さまへも学ぶ機会を提供してみてはいかがでしょうか。

(随時掲載します)



― 執筆者プロフィール ―


Tech Kids School 沖縄エリア統括責任者 中山拓也(なかやまたくや)

沖縄県糸満市出身。自身も子どもを持つ2児の父親。沖縄の子どもたちを取巻く様々な格差からくる成長の機会損失が多い現状を変えたいと思っている。未来を担う子ども達に「無限の可能性と希望」を伝えるべく奮闘中。

小学生のためのプログラミングスクール「Tech Kids School」を運営しながら、未来を生き抜くために必要とされるプログラミング教育の提唱や、家庭環境に関係なく子どもたちへ学習の機会を創出するため、沖縄県内の企業や大学と連携した取組みも行っている。

▼Tech Kids Schoolの詳細はこちら
http://techkidscamp.jp/school/





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