つるり もちもち 笑顔咲く クズヌジームヌ

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 沖縄の伝統行事や祝いの席に欠かせない料理の一つが「中身汁」。豚の内臓をだしで煮込むシンプルな汁物だが、家庭ごとにこだわりの味がある。


タピオカ粉と芋クズ粉でできた「麺」をだしに加える来間トミさん。料理上手と多良間でも評判だったという

 菓子の材料やミルクティーに入っている粒々で知られるタピオカだが、多良間島出身の来間トミさん(92)=豊見城市与根=の手に掛かると立派な主食になる。

 クズヌジームヌ(くずの汁物)は、3時間以上煮込んだこくのあるだしに、タピオカ粉と芋くず粉でこしらえた「麺」がよく合う一品。つるりとしたのどごしから、孫に「どじょう汁」と名付けられたトミさんの得意料理だ。

 手製の三枚肉と揚げたかまぼこが添えられ、まるで沖縄そばのようだが、食感はまるで違う。麺を口に入れると、「つるっ」の後に続くのは、もちもちとした食感。少し遅れてほんのりとした甘さが口中に広がる。「太い方が食べ応えがある」とトミさんが途中で麺の切り方を変えたからか、長さや太さの異なる麺が、なんだかどじょうに見えてきた。絶妙なネーミングに、思わず笑みがこぼれる。

 「何とも言えない味わいでおいしいでしょう。子どもの頃はごちそう感覚でね、出された時は本当にうれしかった」と息子の玄次さん(65)が語る。傍らで、トミさんは「おばあの技さ」と笑い「母親が作るのを見よう見まねで覚えたさ。作ったのは夫が魚を釣った時だけ。いいだしが出たからね」と懐かしむ。

 タピオカは多良間にいた頃からなじみ深い食材で、終戦直後は、芋クズとタピオカでおにぎりを作ったのだという。トミさんは、タピオカ粉と芋くず粉を混ぜ合わせたクズパンビン(天ぷら)も作ってくれた。ジームヌの麺よりももっちり感が増し、これまたくせになるおいしさだった。


 トミさんは昨年、91歳で出場した宮古島の方言大会で最優秀賞に輝き、地元紙の1面を飾った。「島の人たちからはトロフィーが海を越えたのは初めてだよ、と言われた」。そう語る顔は少し誇らしげだ。

 子や孫も太鼓判を押すほどの快活なトミさんだが、40代半ばでは大きな苦難も経験した。日本復帰前の71年、約6カ月も干ばつが続き、島が干上がった。「子どもたちを食べさせるため」にと決断し、一家で沖縄本島に移り住んだ。

 多良間にいた頃は、養豚を営み、豆腐を作り、行商をして生計を立てたが「那覇では、トタン屋根にペンキを塗ったり、コンクリカチャーサー(コンクリートをかき混ぜる仕事)をしたり、男仕事も多かったさ」と振り返る。


 料理の後、粉で白くなった手のひらを触らせてもらった。「硬くなって皮だらけの手だよ」と照れ笑いするトミさんの両手は、子を懸命に守り、育ててきた働き者の手をしていた。

 「たまに疲れたと思って横になるんだけど、孫から『どじょう汁が食べたいから作って』って電話をもらうと元気になるわけ。来た時は何でも作ってあげたくなる」

 子が恋しがるジームヌは半世紀以上を経て、孫の好物になった。そのよく働く両手で、トミさんはこれからもマーサムン(おいしいもの)をこしらえ、家族の胃袋をやさしく満たすのだ。

文・新垣梨沙
写真・大城直也


タピオカと芋クズの粉末で作った「クズノジームヌ」(右)に手製の三枚肉と揚げたかまぼこ(中央)を添えて。もっちりもったりとした食感が癖になる「クズパンビン」(左)


タピオカ

 タピオカは、熱帯や亜熱帯地方で栽培されるキャッサバの根茎から取れるでんぷんのこと。

 もちもちとした食感が特徴で、粉末にして菓子の材料として使われることが多い。「ジーマーミ豆腐」を固める際にも、タピオカ粉が用いられている。

 乾物店などでも手に入れることができる。




(2017年9月26日 琉球新報掲載)



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