11歳が自作のiPhoneアプリに込めた願い 沖縄の小学生がアプリ開発(3)

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◇CA-Frogsキッズプログラマー特待生3期生インタビュー【子どもの未来を拓くプログラミング教育@沖縄(12)】



2020年から小学校で必修となるプログラミング教育の話題をTVや新聞でよく見かけるようになり、沖縄でもプログラミングを学ぶ子どもたちが増えてきました。前回(プロも驚きのスキルと発想! 沖縄の小学生がアプリ開発(2))に続き、オリジナルアプリの制作に挑む沖縄の小学生の取り組みを紹介します。

最後に登場するのは、沖縄本島中部の宜野湾市に住む小学6年生の新垣聖咲さん。プログラミング初体験からスタートし、わずか5カ月余でオリジナルiPhoneアプリの制作に挑むまでに。「聴覚障がいがある親子のコミュニケーションをサポートしたい」との思いを胸に、自身の〝殻〟を破りたいと新たな挑戦を始めています。


PROFILE
新垣 聖咲(アラカキ キサキ)
宜野湾市立普天間小学校6年生
得意教科:家庭科(料理、裁縫)
趣味:ネイル
好きな食べ物:寿司
写真:愛犬と遊んでいるところ


プログラミング経験〝ゼロ〟からのスタート


聖咲さんは、半年間で計100時間のプログラミング学習を無償で受けることができる「CA-Frogsキッズプログラマー特待生(※1)」に選ばれ、iPhoneアプリを開発しています。今期採択された小学生3人の中で、唯一「プログラミング未経験」の特待生でした。

低学年のころ、体育の授業で行われた縄跳びの二重跳びに必要性を感じられず真面目にやらなかったことで、今でも苦手な運動の一つとなってしまい、挑戦しなかったこと「後悔をしている」という聖咲さん。自身では「自慢できることが少ない」と思っていることから、何か1つでも取り柄を見つけたいと思っていたそうです。そんな時に小学校で「CA-Frogsキッズプログラマー特待生」のチラシが配られ、大きな転機を迎えることになりました。

聖咲さん

「最初は『プログラマー』の意味も分りませんでした。お母さんに『聖咲も使っているアプリを作る人のことだよ』と教えてもらって、その時に初めて子どもでもアプリが作れることにビックリしました。足を運んだ説明会で、去年の特待生のプレゼンテーションを聞いて、聞きやすい声でハキハキと話していることに驚きました。何より『自信』を持って発表している様子が一番印象に残ったんです。その帰り道、私も何か目標を作って必ず達成することを決めました

「人生の選択肢を広げたい」



とはいえ、プログラミング未経験だったこともあり、最初はとても不安だったそうです。一方で同年代の女の子ができるのなら、自分にもできるかもしれないと思う気持ちや、新しいことに挑戦し、さまざまな人と出会うことで「将来の選択肢を広げられるかもしれない」と思い、挑戦する意思を固めたそうです。

授業では、Apple社が提供する「Xcode」とういツールを用いてiPhoneアプリ開発を行っています。最初はパソコンに置く指の位置や英語もよく分らない状態からスタートした聖咲さん。Tech Kids Schoolのカリキュラムでアプリ開発の楽しさを感じながらも、難しくなっていく内容についていくことに必死だったそうです。

でも途中で辞めたらこれまでが無駄になるという気持ちや、オリジナルのアプリを作りたいという気持ちが強かったこと、分らないところはメンターが丁寧に解説してくれたことで、挫折することなく続けることができたようです。今ではバグが出てもコードを読んで原因を探すことができるまでになるなど、着実に成長を重ねています。

「使う人」を考えることの大切さ

7月から学習を始めて5カ月。聖咲さんは現在、12月17日(日)に開催される成果発表会「LEAP DAY」に向けて、オリジナルアプリの企画・開発を行っています。どのようなアプリを開発しているのか聞いてみました。

聖咲さん

「聴覚障がいがある親子のコミュニケーションをサポートするiPhoneアプリを開発しています。耳が不自由な大人は、手話や筆談で意思を伝えることができますが、小学校に入る前の小さい子どもは手話を上手にすることができない・分らない子が多いと聞きました。例えば、マナーや挨拶などを伝えたいときも、親に聴覚障がいがあって上手く発音ができない場合は、正確に物事を伝えられないこともあります。今回開発したアプリは、そういう時に使ってもらいたいと思っています」

アプリは、親と小さい子どものコミュニケーションをサポートすることを想定しているため、親が子どもに教えたいマナーをオリジナルのイラストで表現したり、親の声の代わりになるように音声をつけるなど、小さい子どもでも使いやすいように工夫されています。自身の声を吹き込んだ音声は、声の優しさや聞きやすさ、滑舌などを意識し、子どもに伝わるように工夫されています。

一番気を使ったという音声については「このアプリを使った子どもが、私の声を聞いて言葉を覚えるかもしれないと思うと中途半端にはしたくなかった」と何度も修正を繰り返してきた聖咲さんを見ていると、使う人のことをしっかり考えて開発していることが伝わってきました。

「伝える」「届ける」難しさを実感

―特待生になるとアプリ開発だけではなく、人前で発表することになります。現在の心境を聞いてみました。

聖咲さん

「教室で前に立って話をするときは、友だちと意見が違ったらどうしようと気になってしまうので、人前で意見を言うのは苦手です。でもここでは、当たっているとか間違っているとか関係なく話を聞いてくれるので、自信がもてるようになってきました。それに大人なって経験するようなプレゼンテーションを今できることは、大きな財産になると思っています」

プレゼンテーションの練習では、スライドの構成を学ぶだけではなく、来場者にサービスが伝わるように、言葉を選んで話す大切さや表現方法を工夫する必要性も学びます。プレゼンテーションのノウハウを1から学び、着実にスキルアップしている聖咲さんですが、本番をイメージした練習ではセリフが飛んでしまったり、緊張で早口になってしまったりするなど、なかなかイメージ通りにはいかず苦労しているようです。

どんなに素晴らしいサービスを開発しても、使ってもらいたい相手に届かないと使ってもらうことはできません。プレゼンテーションという手段で、世の中に発信する経験を通して、人へ物事を伝える苦労を知った聖咲さんは、大きな一歩を踏み出したと思います。 

コミュニケーションの時間が増えた

アプリ作成からプレゼンテーション研修まで、常に相手に「どうしたら上手く伝わるだろう?」と考え続けてきた聖咲さん。日常では何か変化があったのでしょうか。


聖咲さん

「もともと早口なので、友だちとの何気ない会話でも話す早さや滑舌などを意識して、相手に伝わるように気をつけて話をするようになっています。

 あと一番の変化は、家で家族と話をする時間をとるようになったことです。今までは、私はスマートフォンのアプリで遊んだり、お兄ちゃんはゲーム機で遊んだりしていていました。でも最近、よく使っていたアプリを消して、親と話をする時間を増やしました。そうしたら、私とお母さんたちの会話にお兄ちゃんも入ってくるようになったので、前より家族の会話が増えてきたと思います」


アプリ開発を通して、人と人とのコミュニケーションの大切さ、人へ何かを伝えることの難しさを体感した聖咲さん。新たな挑戦を通して、Tech Kids Schoolのメンターさんみたいに「人に何かを教える仕事もいいかもしれない」と思い始めているそうです。



親と子をつなぎたい

―最後にLEAP DAY当日に来場する人や友だちに向けて、意気込みを聞いてみました。

聖咲さん

「親子がもっとつながれるコミュニケーションアプリを作ったので、聴覚障がいを持っている親子以外にも、小さい子どもがいる方は是非見にきてください!プレゼンテーションも頑張るので、家族とか友だちにも来てほしいです」

 プログラミングに挑戦したことで、人生の選択肢を広げるきっかけを自ら開拓した聖咲さんなら、これからも多くの人を笑顔にしてくれるはずです。

聖咲さんが登壇する「LEAP DAY」は12月17日(日)です。

◇LEAP DAYの参加申し込みはコチラから



※(1)CA-Frogsキッズプログラマー特待生

学習意欲の高い沖縄県内の小学生を対象に、沖縄の未来を担うハイブリッド人財を育成・輩出することを目的とした特待生制度。選ばれた小学生はApple社の開発ツール「Xcode」を使ったiPhoneアプリ開発や、HTMLやJavaScriptを用いたWebアプリ開発を半年間計100時間のプログラミング学習を無償で受けることができる。Tech Kids School沖縄那覇校を運営するシーエー・アドバンスと、中学生~大学生を対象に米国シリコンバレー派遣研修などのプログラムを実施するRyukyufrogsが2015年に設立し、2015、16年度で計4人の小学生を育成している。



― 執筆者プロフィール ―


Tech Kids School 沖縄エリア統括責任者 中山拓也(なかやまたくや)

沖縄県糸満市出身。自身も子どもを持つ2児の父親。沖縄の子どもたちを取巻く様々な格差からくる成長の機会損失が多い現状を変えたいと思っている。未来を担う子ども達に「無限の可能性と希望」を伝えるべく奮闘中。

小学生のためのプログラミングスクール「Tech Kids School」を運営しながら、未来を生き抜くために必要とされるプログラミング教育の提唱や、家庭環境に関係なく子どもたちへ学習の機会を創出するため、沖縄県内の企業や大学と連携した取組みも行っている。

▼Tech Kids Schoolの詳細はこちら
http://techkidscamp.jp/school/





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