島からアートをつくるラウンドトーク〈づめレポ 7〉


島からアートをつくるラウンドトーク〈づめレポ 7〉
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沖縄本島から南に400km、八重山諸島の玄関口・石垣島―。

大自然に囲まれたこの島で11月29日(水)~12月17日までの3週間

「文化庁メディア芸術祭石垣島展~ひかりきらめくイマジネーション~」が開催されます。

アートに包まれる島の様子を随時レポートします。

 

石垣市民会館特設会場で12月13日(水)、トークイベント【ラウンドトーク「島からアートをつくる」】が開催されました。島内外から集まった講師の方がそれぞれの視点で「島からアートをつくる」というテーマでお話をしてもらいました。

石垣市地域おこし協力隊 青木省悟さん
 

石垣市地域おこし協力隊として、今年から島へやってきた青木さん。文化庁メディア芸術祭石垣島展の伊原間会場である「崎山ハウス」の住人です。

市街地から車で30分ほどの石垣島北部に位置する伊原間会場は、地域住人の方の協力と熱い想いが特に詰まった会場です。青木さんは、伊原間という小さな地域で今回の芸術祭開催に至るまでにどれだけの方に協力してもらったのか。協力してもらう中での自分の想い、そして目の前で変化していく地域住民と外からの訪問者との関係性について話をしました。

ご自身が芸術祭に参加した経験があり、「地域の人と外から来たアーティストが協力することで地域活性につながるのでは」という想いがあり、いつか石垣島でもそのようなアートのイベントに関わりたいと思っていた矢先の話で「”いつか”がこんなに早く来るとは」と笑顔を見せました。

伊原間会場の提供と共に運営を担当することになった青木さんは、落合陽一さんの『コロイドディスプレイ』を島に迎え入れるために、伊原間公民館をはじめ多くの地域住民の方を巻き込んで展示会場を作り上げました。

石垣島に来て半年が過ぎた青木さん。「協力隊の任期を終えた時に、そのまま石垣島に居てくれ。と言われるように地域のために頑張りたいです」と今後も石垣島を盛り上げていく決意を述べました。
 

『nubot』作家 藤岡定さん

 

「初めて来る石垣島。イグアナが自生している島と聞いて、そんな島が日本にあるのかと驚きました」と会場を笑いに包んだのは、展示作品『nubot』の制作メンバーである藤岡定さん。

福岡を拠点に活動するクリエイティブ・ラボ「anno lab」の代表取締役として“世界一楽しい街を作りたい。”をテーマにクリエイティブ業界を盛り上げる第一人者です。

nubot 林智彦/千房けん輔/堀尾寛太/annolab/徳井綾 © 林智彦

藤岡さんは「地方のアートイベントは、その場所や枠組みが“いかに不完全か”ということが、関わるアーティストたちを盛り上げる」と述べ、これまでに関わった作品や福岡での活動を紹介しました。

クリエイティブなイベントや作品の数々を見ながら、会場からは「石垣島でもやりたいね」などの声も聞こえ、参加者の多くに強い刺激を与えたようです。

最後に藤岡さんは「例えば、東京のイベントをそのまま持って来る、ではなく、石垣島だからこそ、ここでしか成し得なかったものができ上がった時、島のアイデンティティはさらに強化されるはずだ」と今後の石垣島へ期待を寄せました。
 

現代美術家 椿昇さん

 

現代美術家であり、かつては中学・高校の教師、現在は京都造形美術大学の教授という教育者の一面を持つ椿さん。

「芸術祭は観光を盛り上げるためよりも、次が生まれるチャンス、人材育成という意味合いを強く持たせるべきだ」と述べ、「瀬戸内芸術祭」など、これまで手がけてきた芸術祭の経験を語り、「企画する者とサポートしてくれる地域の力、そしてそこから育つ若者の力が何よりも大事で、そこに感動が生まれる。その感動にさらなる人の協力が集まるのだ」と強く語りました。

ご自身が関わった生徒たちがアーティストとして次々に活躍することについて聞かれると、「自分は何かを教えたつもりはなく、“好きなことやっているバカ”である自分の姿が教え子たちに勇気を与えているのだろう。だから、今でも何かをしようとすると全国から教え子が手伝いに来てくれる。この人、どうやって生きているのだろう?と生き方の多様性を伝えるのが大人の役割だと思う。別次元の生き方を信じてほしい」と次世代へのメッセージを残しました。
 


いよいよ今週末17日までとなった文化庁メディア芸術祭石垣島展。

作品との出会いはもちろん、会期中多くの作家、専門家が県内初・離島初となる本イベントを見るためにこの島を訪れました。彼らが口をそろえて残していく言葉は「石垣島の未来は明るい」。

今回の開催をきっかけに、アートの力が今後どのようにして石垣島を盛り上げていくのかワクワクが止まりません!


文化庁メディア芸術祭石垣島展
~ひかりきらめくイマジネーション~

開催期間:11/29(水)~12/17(日)

展示時間:13:00~19:00(土日祝10:00~)入場無料

展示会場:石垣市民会館特設会場(インフォメーションセンター)

まちなか会場:まちなか交流会館ゆんたく家、石垣港離島ターミナル、ホテルエメラルドアイル石垣島、伊原間会場

公式webサイト:http://mediaarts-ishigaki-jima.okinawa
 

ライタープロフィル

橋爪 千花(はしづめ・ちか)1991年石垣市川平生まれ。

立命館アジア太平洋大学卒業後、東京でアイドルのマネージメントや地域活性の仕事に携わり、2017年夏より地元石垣島へ拠点を移す。

好きな食べ物はカシューナッツ。嫌いな食べ物はピータン。