#MeToo とウーマンラッシュアワーから考える師走in 2017年 来年はあなたも「沈黙を破る人」に?(下)


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アメリカから見た! 沖縄ZAHAHAレポート(6)

米NBCの人気コメディー番組「サタデー・ナイト・ライブ(SNL)」 アレック・ボールドウィン演じるトランプ大統領はじめトランプ政権の面々のパロディーが見事!

政治を、時事問題を風刺たっぷりの笑いに。
そして、沖縄。

 4月にワシントンD.C.に来て、トランプ大統領を巡る混乱やアメリカ社会の現状に一喜一憂している中で、私の2017年の楽しみは毎週土曜深夜、米NBCで放送される人気コメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ(SNL)」でした。

 1975年に始まった長寿番組で、もともと政治や時事問題を風刺したコントに定評がありますが、最近はトランプ大統領を巡るコントがとにかく最高! アレック・ボールドウィンが演じるトランプ大統領、スカーレット・ヨハンソンによるイバンカ・トランプ補佐官、ケイト・マッキノン演じるジェフ・セッションズ司法長官など、政治を巡る動きが毎週土曜、絶妙なものまねと風刺たっぷりのシチュエーションで繰り広げられる。細部の英語は理解できなくても、腹を抱えて笑い、「よし、すっきり!笑って頑張ろう」、と前向きな気持ちにもなれる時間です。風刺、笑いの力ってすごいなと思います。(You TubeのSNLのリンクを貼ろうと思いましたが、日本では公開制限がある模様)

'SNL' has a special Christmas message from Baldwin's Trump

日本では、安倍晋三首相をはじめ、政治家をネタにしたお笑いやパロディなど、すっかりお目にかかる機会がありませんが、そんな中、注目すべきニュースが。お笑いコンビの「ウーマンラッシュアワー」が12月17日、フジテレビ系の「THE MANZAI」で米軍基地問題や原発、震災、東京五輪、北朝鮮のミサイル問題など、政治ネタを笑いと風刺で披露しました。

◇HUFFPOSTでの掲載記事はコチラ
ウーマンラッシュアワー、THE MANZAIで沖縄米軍基地ネタ「面倒くさいことは見て見ぬふりをする」

 彼らのネタをきっかけに、いろんな反応が起こっているようですが、私は「よくぞやってくれた」という気持ちになりました。「難しくて分からない」「面倒くさい」「自分には関係ないこと」。そんな意識的、無意識的な「加害」がまん延している社会を、しっかり可視化してくれた気がするからです。

 沖縄だけを見ても、「癒やしの島」「青い海、青い空」といった「いいところ」だけを「消費(搾取)」して、基地や安全保障などの難しい、面倒くさい部分は見ない・考えないという風潮は、女性を「性」の対象と見るくせに、セクハラや性差別、性暴力の問題を訴える女性の声を非難したり、無視したりする風潮に似ているのかもと、私の中ですごく絡まり合って感じます。

 そんな時、彼女の言葉を思い出さずにはいられません。2016年、ウオーキングに出掛けた20歳の女性が元海兵隊員の男に乱暴目的で襲われ、殺害された事件が沖縄でありました。その米軍属女性暴行殺人事件に抗議する県民大会で、当時21歳の玉城愛さんが登壇して語ったあいさつです。

(以下、あいさつ)

 被害に遭われた女性へ。絶対に忘れないでください。あなたのことを思い、多くの県民が涙し、怒り、悲しみ、言葉にならない重くのしかかるものを抱いていることを絶対に忘れないでください。

 あなたと面識のない私が発言することによって、あなたやあなたがこれまで大切にされてきた人々を傷つけていないかと日々葛藤しながら、しかし黙りたくない。そういう思いを持っています。どうぞお許しください。あなたとあなたのご家族、あなたの大切な人々に平安と慰めが永遠にありますように、私も祈り続けます。

 安倍晋三さん。日本本土にお住まいのみなさん。今回の事件の「第二の加害者」は、あなたたちです。しっかり、沖縄に向き合っていただけませんか。いつまで私たち沖縄県民は、ばかにされるのでしょうか。パトカーを増やして護身術を学べば、私たちの命は安全になるのか。ばかにしないでください。

 軍隊の本質は人間の命を奪うことだと、大学で学びました。再発防止や綱紀粛正などという使い古された幼稚で安易な提案は意味を持たず、軍隊の本質から目をそらす貧相なもので、何の意味もありません。

 バラク・オバマさん。アメリカから日本を解放してください。そうでなければ、沖縄に自由とか民主主義が存在しないのです。私たちは奴隷ではない。あなたや米国市民と同じ人間です。オバマさん、米国に住む市民のみなさん、被害者とウチナーンチュ(沖縄の人)に真剣に向き合い、謝ってください。

 自分の国が一番と誇るということは結構なのですが、人間の命の価値が分からない国、人殺しの国と言われていることを、ご存じですか。軍隊や戦争に対する本質的な部分を、アメリカが自らアメリカに住む市民の一人として問い直すべきだと、私は思います。

 会場にお集まりのみなさん。幸せに生きるって何なのでしょうか。一人一人が大切にされる社会とは、どんな形をしているのでしょうか。大切な人が隣にいる幸せ、人間の命こそ宝なのだという沖縄の精神、私はウチナーンチュであることに誇りを持っています。

 私自身は、どんな沖縄で生きていきたいのか、私が守るべき、私が生きる意味を考えるということは何なのか、日々重くのしかかるものを抱えながら現在生きています。

 私の幸せな生活は、県民一人一人の幸せにつながる、県民みんなの幸せが私の幸せである沖縄の社会。私は、家族や私のことを大切にしてくれる方たちと一緒に今生きてはいるのですが、全く幸せではありません。

 同じ世代の女性の命が奪われる。もしかしたら、私だったかもしれない。私の友人だったかもしれない。信頼している社会に裏切られる。何かわからないものが私をつぶそうとしている感覚は、絶対に忘れません。

 生きる尊厳と生きる時間が、軍隊によって否定される。命を奪うことが正当化される。こんなばかばかしい社会を、誰が作ったの。このような問いをもって日々を過ごし、深く考えれば考えるほど、私に責任がある、私が当事者だという思いが、日に日に増していきます。

 彼女が奪われた生きる時間の分、私たちはウチナーンチュとして、一人の市民として、誇り高く責任を持って生きていきませんか。もう絶対に繰り返さない。沖縄から人間の生きる時間、人間の生きる時間の価値、命には深くて誇るべき価値があるのだという沖縄の精神を、声高々と上げていきましょう。
 

 

(以上、あいさつ)

 被害が繰り返されるのは、加害側が変わらない、問題を直視しようとしないから。自分自身が、被害者にも加害者にもなり得る社会の当事者として意識を持たなければ、政治も社会問題も何も変わらない。ならば、少しでも自分のできることから声を挙げて行動する、「おかしい」と声を挙げている人を支えていくことが大事なのかもしれません。2018年の「沈黙を破る人」は私たち、あなた自身かもしれません。
 

 座波幸代(ざは・ゆきよ)  政経部経済担当、社会部、教育に新聞を活用するNIE推進室、琉球新報Style編集部をへて、2017年4月からワシントン特派員。女性の視点から見る社会やダイバーシティーに興味があります。