市場に咲く、ゆんたくの花 カメラとお出かけ ほろほろ街(マーチ)vol.8 本部町営市場(本部町)

  • 北部
このエントリーをはてなブックマークに追加

 本部町の魅力は美ら海水族館だけじゃない。日ごろ町内を回っている記者たちの実感だ。そんな本部町の魅力の一つ、愉快なモトブンチュが集う本部町営市場をほろほろした。

 



 美ら海水族館から車で5分。到着した町営市場は親子連れでにぎわっていた。この日は第3日曜日。有志が市場を盛り上げるため2006年に始めた「もとぶ手作り市」が毎月市場の一角で開かれていた。

 出店の条件は「手作りのものを販売する」こと。机の上には革製品やパン、焼き菓子など、作り手の思いがこもった品々が並んでいる。商品について店主に尋ねるお客さんや、近所の人が散歩がてらのぞきに来たりとそこかしこにゆんたくの花が咲き、のんびりした雰囲気だ。
 


月1回の手作り市には多くの人が出店している

若手てるにも

 


 コーヒーの香りに誘われてたどり着いたのは、市場内の「自家焙煎珈琲 まちぐゎーみちくさ」。手作り市実行委員長でもある知念正作さん(38)と、手作り市の現場を仕切る妻の沙織さん(37)のお店だ。
 


いつも元気いっぱいの知念沙織さん。コーヒー豆に迷ったら遠慮なく聞こう

 カフェオレがおいしくて取材を忘れそうになるが、気を取り直して質問する。なぜ手作り市を始めたんですか?

 「おばあちゃんが市場でお店やってて、昔から来てたわけ。しばらく本部から離れてたんだけど、戻ってきたら市場が寂しくなっててさ。自分も市場内にお店を出そうとしたけど、新規開店はなかなか難しくて。それなら自分たちでやろうって知り合いの工芸作家に声を掛けたのが始まり」。いきさつを正作さんが話してくれた。

 手作り市で人気が出て実店舗を持った人もおり、今では市場が若手を育てる場にもなっている。沙織さんも「県内で一番敷居が低い市だはず(笑)。子どもたちがゴーヤージュースを売り歩いたりもしてたね。相対売りが基本の市場だからできる取り組みだ」と言葉をつなぐ。
 


味 アンダカ

 


精肉店を切り盛りし37年の古堅敏子さん。古堅さんとのおしゃべりを求めて来る客も多い

 店を出てしばし歩くと新鮮な豚肉が並んだショーケースが目に付いた。笑顔がすてきな古堅精肉店の古堅敏子さん(70)は「名護から中味を買いに来る人もいるよ」と品質に胸を張る。37年間店頭に立ち続けた。

 「こういう風にしたらおいしいよってアドバイスするし、スーパーと違って個人へのサービスもできる。何かあったら任しとけ! と思うね」と心強い一言。

 お薦めは那覇から買い求める人もいるというお手製アンダカシー。「みそ汁に入れたらおいしそうだね」とぐしけんカメラマンと盛り上がる。自宅に帰ってからのお楽しみができた。
 

 市場内をほろほろしていると、おしゃれなシルバーカー(手押し車)で散歩を楽しむ女性と出会った。

 1959年から市場向かいで化粧品などを扱う「志良堂商店」を営んできた志良堂初枝さん(85)。


志良堂商店の店主、志良堂初枝さん。散歩に出て親戚や地域の人たちとの会話を楽しむ

 「盆・正月忙しいから商売は絶対しないって両親を見て思ってたのに、自分でもやってるさ」と笑う。

 町内で資生堂化粧品を扱うのは志良堂商店だけだった時代も長く、子育てしながら毎月那覇までセミナーに通った。

 海洋博の活気も、市場が寂しくなった時も、そして今のにぎわいも見てきた。「スーパーではもの言わんでも買えるけど、市場はおしゃべりしながら買えるから1番のボケ防止よ」

 今でも志良堂さんを慕い、店に人が集まる。記者を気遣い、コーヒーやサーターアンダギーを差し出してくれる優しさに、その理由を垣間見た気がした。
 


うむがーき 復

 


 お土産に玉城商店で町営市場名物の「うむがー焼き」を買い求めた。
 


アズキと紅芋をあんにして、皮を塩味にするのがうむがー焼き。星の鋳型が特徴的だ

 今川焼きによく似た、あんを小麦粉でできた皮で包んだお菓子は素朴な味。昔は沖縄中で作られたそうだが、いつの間にか姿を消していった。「恐らく営業しているのはうちだけじゃないかな」と店主の玉城淳さん(60)は話す。

 リサイクルショップでたまたまうむがー焼きのプレートを見付け、子どもの頃食べた記憶を思い出しながら6年前に復活させた。「焼いてるとおじい、おばあたちが『うちはあずきあんだった』『もっと塩辛かった』とか言いに来るわけ。ハワイから里帰りしてきたおばあが食べて泣いたこともある」

 記者もカメラマンもうむがー焼きを食べるのは初めてだったが、おばあちゃんに焼いてもらったような懐かしく幸せな味がした。「いろんな地域の人の話が聞けるから面白い。来てくれる人がいる限り頑張るよ」と話す玉城さんに手を振り、町営市場を後にした。
 




光客に人気 大スポット


 市場には観光客が列を作る2大スポットがある。沖縄そばの「きしもと食堂」と「新垣ぜんざい」。せっかくだから今日ははしごしてみよう。きしもと食堂は10人ほどが並んでいたが、10分も待たずに入れた。


 メニューはそばとジューシーのみの直球勝負。味のしみた三枚肉をかみしめ、豚骨とかつおだしのスープをすすっていると、冬だというのに暑くなってきた。

 新垣ぜんざいは冬でもホットはなく、年間を通して氷ぜんざいのみ。ふんわりした氷が体をクールダウンしてくれる。看板娘の新垣智子さん(53)と遠藤初美さん(69)が、おいしさの秘密は「釜で豆を炊いている」からだと教えてくれた。
 




まちぐゎーみちくさ

みちくさ自慢のカフェオレは生乳か豆乳を選べる

市場の象徴「カツオベンチ」くん。見ると思わず座ってしまう不思議な魔力を持つ

きしもと食堂の沖縄そば(大)。

寒い季節も食べたくなる「新垣ぜんざい」。舌の上で溶けてしまうきめ細かな氷と甘くてもくどくないぜんざいが特徴だ

地域の人が気軽に集ってゆんたくを楽しむのも魅力の一つ

新垣ぜんざいの看板娘の新垣智子さん(左)と遠藤初美さん。いつでも笑顔で迎えてくれる

うむがー焼き店主の玉城淳さん。「懐かしくておいしいって食べてもらえるとうれしい」と目を細める

クリスマス限定のパンが売り切れたと喜ぶ大谷千明さん(中央)。もとぶ手作り市が開催されて2年目から出店している常連さん

(2018年1月7日 琉球新報掲載)



前の記事空中大車輪 決死の地上15メート...
次の記事福山雅治支える吹石一恵の決意「仕...